2020年日本
91分

 最近、気になっている俳優は仲野太賀である。
 ソルティ世代の代表的な男優の一人で、TVドラマ『愛という名のもとに』(1992年フジ)のチョロ役で人気爆発した中野英雄の次男である。
 中野英雄は三枚目でありながら、主役を喰うほどの熱のある演技が魅力であった。ゲイ人気も高かった。
 その血を引く仲野太賀はどうなんだろう?
 確かめるべくレンタルした。

厚久(仲野太賀)と武田(若葉竜也)と奈津美(大島優子)は子供の頃からの遊び仲間。
長じて厚久と奈津美は結婚し、女児が生まれる。が、奈津美の浮気の発覚によって、二人は別れることに・・・。
厚久は奈津美に怒りをぶつけることも、浮気相手を懲らしめることもなく、自らの至らなさを責め、奈津美の言われるがまま離婚届に判を押す。浮気相手と再婚した奈津美に仕送りさえする。
武田は言いたいことが言えない不器用な厚久を見守るが・・・・。

IMG_20211028_225656
左から、仲野太賀、大島優子、若葉竜也

 仲野太賀、感性がすばらしい。
 本作では自らの感情に蓋をしてきた挙句、何も感じなくなってしまった男を演じているのだが、それが作ったふうでなく、とても自然である。まるで仲野太賀自身の気質であるかのように。
 父親同様、決して二枚目ではないが、人好きのする顔立ちでカメラ映りもいい。
 親父以上に幅の広い芝居のできる俳優になりそうな気配濃厚。

 ビックリしたのは大島優子。
 ソルティはAKBにほとんど興味ないので、彼女の魅力や才能を良く知らなかった。
 ルックスはさておいても、これほど本格的な芝居ができるとは意外であった。
 濡れ場やデリヘル嬢に扮しての客へのフェラシーンなど、体当たりで挑戦しているのは立派。
 こちらもいい女優になる気配濃厚。

 作品的には、プロットの激しさとテーマのナイーブさに均衡がとれていない気がした。
 厚久のもっとも近しい身内二人が残酷な殺人事件に巻き込まれる――うち一件は奈津美が変質者に殺され、一件は厚久の実兄が奈津美の再婚相手を殺す――という強烈なプロットを用意しながら、主要テーマ自体は不器用な男の内面描写というアンバランスが、どうにも収まりのつかない印象を作品に与えている。プロット倒れというか。
 主人公の親友武田の位置づけも曖昧で、厚久と奈津美それぞれに対してどういう感情を抱いているのか、彼がどういう人間なのか、最後までよくわからなかった。

 役者たちの芝居、そして映像自体は悪くないので、もったいない気がした。



おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損