1966年日活
86分、白黒

 ソルティ世代で高橋英樹と言えば、鬼面をかぶっての「ひとつ、人の世の生き血をすすり・・・」の決めゼリフが格好良かった『桃太郎侍』と、「正解は越後製菓!」のCM、最近では高橋真麻の子煩悩な父親としてのイメージが強い。
 時代劇のヒーローで、渋いオッサンだ。
 が、本作では昭和初期の旧制中学校(いまの高校)のバンカラ学生を演じる、青春真っ盛りの英樹がここにいる。
 若い! カッコイイ!

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高橋英樹と浅野順子

 当時22歳。
 顔立ちも体型も大人びているので、高校生というにはとうが立っているが、それはご愛嬌。
 なんと言っても、桃太郎侍が勃起したペ×スで障子破りならぬピアノの鍵盤を叩いたり、下宿先の美しいお嬢さん(浅野順子←なんと大橋巨泉の妻だった!)の前でモジモジしたり、取っ組み合いの勢いで畑の肥溜めに頭を突っ込んだり・・・と、いままでソルティが抱いていた渋い英樹イメージを覆すようなやんちゃシーンの連続に興奮した。
 タイトル通り――と言ってもエレジー(哀歌)でなくてラプソディ(狂詩曲)がふさわしいが――最初から最後まで、エネルギーを持てあました若い男たちが、たいした主義も主張も理由もなく四六時中喧嘩しているだけの話で、「昔の日本の青年はよく喧嘩したんだなあ~」と変に感心する。
 この本来なら外に向かって発散されるべきエネルギーが内に向かったことで、現代の若者のひきこもりや鬱の多さにつながっているのだろうか。

 話の単純さと相対的に凝っているのは、画面である。
 ここでも『東京流れ者』や『ツィゴイネルワイゼン』同様、スタイリッシュな舞台装置と構図と演出による清順美学が貫かれている。
 それによって、単純バカたちの喧嘩と初恋と無為の青春が一篇の詩に昇華するのである。



おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損