1965年日活
115分、白黒

 『サンダカン八番娼館 望郷』、『地の群れ』、『黒部の太陽』、『深い河』、『海と毒薬』など、骨太の社会派ドラマや遠藤周作小説の映画化で知られる熊井監督の『帝銀事件 死刑囚』に続くデビュー2作目。
 宇野重吉、芦川いづみ、二谷英明はじめ、大滝秀治、加藤嘉、北林谷栄、下元勉など錚々たる役者を用いながら、これほど重厚でシリアスで政治色の強い作品を35歳で撮った力量に感嘆する。
 原作は1963年に発表された吉原公一郎『小説日本列島』。
 吉原は反体制系のジャーナリストで、本年8月6日(!)に93歳で亡くなった。


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左から二谷英明、宇野重吉、芦川いづみ、熊井啓監督


 戦後の日本にはGHQがらみの不可解な事件が多発した。
 有名なものに、松川事件、下山事件、三鷹事件、帝銀事件などがある。
 いずれもGHQの圧力により真相が闇の中に葬られてしまった、と言われている。
 GHQおよびアメリカにとって都合の悪いものは、日本の警察の捜査やマスメディアの追及の前にいつも厚い壁が立ちはだかり、どこからか妨害が入り、真実が有耶無耶にさせられた。
 それを理不尽と怒るも、無念の涙を流すも自由だが、8月15日無条件降伏という事実の前にはどうあらがいてもしようがなかった。
 もし日本がソ連に占領されていたら、もっと理不尽なこと、さらに残酷なことが起きていたのは間違いあるまい。
 
 本作は、上記の日米の圧倒的に不平等な関係を背景に、昭和34年に発生した在日アメリカ中尉殺害事件の顛末を描くミステリー仕立てのフィクションである。
 吉原公一郎も熊井監督も、明らかに1960年に発表された松本清張『日本の黒い霧』に強い衝撃をくらったのであろう。
 ソルティは実は同作を読んでいないのだが、思うに清張の説いた(本作で描かれているような)アメリカ(GHQ)謀略説は 2/3 は当たっており、あとの 1/3 は日本人ならではの時の権威に忖度する習癖がなせる日本の上層部による自作自演だったのではなかろうか。

 『黒い霧』、正月休みに読もうかな? 




おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損