2019年カナダ
120分、フランス語

 『Mommy/マミー』のグザヴィエ・ドラン脚本・監督・主演によるLGBT映画。
 仲の良い幼馴染のマティアスとマキシム。二人が、知り合いの制作する映画に出演するはめになって芝居でキスを交わしたことから互いを意識するようになり、困惑・葛藤・苦悩する様子を描く。

 マキシムを演じるドラン監督の芝居の上手さに驚いた。
 それもそのはず、ドランの父親も俳優で、ドラン自身子役として活動してきたという。
 『Mommy/マミー』でADHDの息子を持つ母親を演じたアンヌ・ドルヴァルが、今度はマキシムの母親で後見人を必要とする生活破綻者に扮している。
 これも見事な演技で恐れ入った。
 
 昨今、BL(ボーイズラブ)系の映画やTVドラマは日本でも珍しくなくなった(現在テレビ朝日で放映中の『消えた初恋』ではなんとジャニーズアイドル2人がカップリングしている)。
 観ていていささか鼻白むのは、主役の男たちが揃いも揃ってイケメンであるってことだ。
 それは男女の恋愛ドラマでも同じで、昔から主役は「愛されて当然」と思えるような美男美女と相場が決まっている。
 視聴者(主に女性)に夢を与えるフィクションの世界だから仕方ないと分かっているのだが、男の視点からすると「少女マンガじゃあるまいし・・・」と思ってしまうのもまた仕方ないところであろう。(『消えた初恋』はもろ少女マンガが原作らしい)

 一般に、ノンケ(ヘテロセクシュアル)の男たちはLGBTドラマはもちろん恋愛ドラマに関心を持たないから、そこは“女子の道楽”ってことで放っておけるのだろうが、恋愛体質の強いゲイの当事者からしてみれば、「自分たちが主役であるべきBLドラマが腐女子に乗っ取られている」みたいな疎外感に近い感覚を持たされがちである。(ソルティだけか?)
 腐女子を熱狂させるBLドラマと当事者が作るLGBTドラマは似て非なるもの、と考えるべきだろう。
 
 その意味で、本作はまさに当事者(ドラン監督はゲイ)の作るLGBTドラマであり、主役の二人は決して美男ではない。
 その象徴がマキシムの顔の痣である。
 普通なら、その痣は恋愛ドラマの主役たりえない瑕疵となるであろう。
 が、話が進むにつれて、「あばたもエクボ」で魅力的に見えてくる。
 それは観る者が、些細なきっかけからマキシムを恋するようになってしまったマティアスに感情移入し、マティアスの視点や気持ちからマキシムを見るようになるからである。
 
 人は、相手が「美しいから、カッコイイから」恋するのではない。
 恋した相手だから「美しいし、カッコイイ」。
 そんな原点をキュンキュン思い出させてくれた一本であった。
 
gay-4846094_1920
 

おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損