2020年日本
107分
セックスチェック 第二の性(増村保造、1968)
寝ても覚めても(濱口竜介、2018)
クロッシング(キム・テギュン、2008)
パッチギ(井筒和幸、2005)
ぐらんぶる(英勉、2020)
単純に一番面白かったのは、この『ぐらんぶる』であった。
原作は講談社『good!アフタヌーン』連載中の井上堅二作のギャグ漫画で、2018年にテレビアニメ化されたらしいが、ソルティはまったく知らなかった。
若い男二人が水中ではしゃいでいるDVDのパッケージを見て、高校の水泳部か水球部かシンクロ部のインターハイに向けての奮闘を描いた青春スポ根ギャクタッチドラマかと思った。
妻夫木聡主演『ウォ-ターボーイズ』(2001)や林遣都主演『DIVE』(2008)のような。
美しい南の島での楽しいキャンパスライフを期待してやって来た青年・北原伊織(竜星涼)。叔父さんが経営するお洒落なショップ「GRAND BLUE」兼下宿先に到着したら、そこで出会ったのは夢に見た美少女。
――とここまでは『めぞん一刻』型の青年コミックお決まりの出だし。
と、いきなり物語は異次元へワープする。
伊織の衆人環視の全裸シーンが延々と続き、そこにもう一人の主役・今村耕平(犬飼貴丈)の全裸も加わり、いったいこのイケメンヌード2乗の「ウホッ!」感はなに??
あっけにとられて見ていると、タイムスリップ物のSFドラマのような様相を帯びてくる。
このドラマはいったい???
ちなみに竜星涼は仮面ライダーシリーズの、犬飼貴丈はスーパー戦隊シリーズのヒーローを務めた人気沸騰中の俳優である。
結局、叔父さんはスキューバダイビング店を経営しており、タイムスリップ(タイム・ストリップ?)と思ったのは、地元のダイビングチーム Peek a Boo(ピーカブー)所属の屈強な男たちの歓迎の儀式(=悪戯)と分かるのだが、この奇想天外な激しいプロローグにすっかり掴まれた。
その後も、ボリウッド映画つまりインド映画のような「いきなりみんなで激しく踊り狂う」シーン(しかも裸の男どもがお立ち台に乗って!)が頻発したり、ふだん真面目な役の多い髙嶋政宏が紫のパンツ一つでとんでもない弾けっぷりを見せてくれたり、とにかくこちらの予想を超える奇抜なシーンの連続に度肝を抜かれた。
むろん面白い原作あってのことだが、英勉監督のギャグセンスの素晴らしさは紛うことなし。
本映画の最大の爆笑ポイントは、「VAMOS!」という謎の掛け声とともに始まる、郷ひろみ「GOLDFINGER '99」とオールブッラクスのハカ踊りを掛け合わせたようなダンス&ミュージックであるが、これは原作にはなく映画オリジナルの演出という。
この映画及び高嶋政宏の怪演ぶりは、おそらくカルト映画として熱狂的なファンの間で語り続けられることであろう。
畏れ入った。
P.S. 1 VAMOS!とはスペイン語で「行くぞ!」の意。
おすすめ度 :★★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損