「初詣は秩父神社だ」と思い、年末から元日まで4泊5日の秩父リトリートを行った。
 中3日はいつものように外界との接触をできるだけ断って、瞑想&ウォーキング&読書をしてストイックに過ごした。

 寒さは覚悟していた。
 が、秩父は盆地のため朝夕は確かに冷え込むけれど、風は強くなく、日中は陽が射すと意外と暖かい。
 2時間もウォーキングすると、厚い上着を脱ぎたくなるくらいだった。

 今回は、秩父市街の盆地を形成する二つの丘――西側の長尾根丘陵と東側の羊山丘陵――に登った。

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秩父市いいかげんマップ

 長尾根丘陵は秩父中心街から荒川を渡って急斜面を登る(標高300~450m)。
 尾根沿いに、秩父巡礼23番札所・音楽寺や市民憩いの秩父ミューズパークがある。
 2021年春のリトリート時にソルティがはじめて足を運んだ船をイメージした展望塔からは、武甲山に見守られた秩父盆地の素晴らしい光景を眺めることができる。
 この丘陵のふもとを流れる荒川に沿うようにして、秩父札所20番岩之上堂・21番観音寺・22番童子堂・24番法泉寺が並んでいて、秩父巡礼路の中でも最も眺めがよく、歩きやすく(車道である)、気持ちのいいルートとなっている。(23番音楽寺への登りはなかなかコタえるが)
 2018年にソルティが初の秩父巡礼した時もこの道を辿ったし、その後の秩父リトリートの際も恰好の散歩コースとして利用してきた。

 今回思わぬ発見をした。
 札所21番から22番に向かう車道の途中、右手に「江戸巡礼古道」という標識と矢印があり、住宅地に入っていく細い道がある。
 興味を惹かれてこの道を進んでいったら、道は宅地の奥で行き止まり・・・・と思ったら、雑草生い茂る道ならぬ道があって、「こちらでいいのかな?」という不安を抱きつつ進んだら、すっぽり山の中に入ってしまった。
 あとは踏み跡もさだかでないような竹林や雑木林のもの寂しい登りが続く。
 「蛇が出る季節だったら絶対に進めないな」

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 ところどころ木に結わえ付けられた「巡礼道」と書かれた札だけが頼り。
 傾斜はどんどん険しくなってゆく。
 長尾根丘陵に登るルートであるのは間違いない。
 ようやく平地らしきところに飛び出たら、古い看板があった。

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 なんと、22番・童子堂はもともとここに、長尾根丘陵の山腹にあったのだ。
 かつて、21番を打ち終わった巡礼者は、さきほど標識のあったところから右に進路を取って山道に入り、薄暗い森の中の急斜面を登り、息を整えながら22番を拝んで、さらに山道を登って尾根に達し、尾根沿いに23番・音楽寺に向かったのである。 
 その後(明治末期)、童子堂が今あるところ(丘のふもと)に移ったので、21番から平坦な道をずっと苦労なく行けるようになった。
 もちろん今でも22番を打ち終わったら、23番・音楽堂への登りを避けることはできないけれど、ここは尾根までの車道や舗道がしっかりついているので、山登りという感じはない。
 巡礼は段違いに楽になったのである。

 長尾根丘陵の尾根からは、秩父市街とは丘陵をはさんだ反対側にある小鹿野町や旧吉田村(現・秩父市)、その背後に聳える両神山を見ることができた。
 考えてみると、秩父事件の主役たちは旧吉田村の椋神社にて決起集会を行い、そこから長尾根丘陵を登って尾根上にある音楽寺で鐘を打ち鳴らし、鬨の声を上げ、一気に山を駆け下りて荒川を渡り、秩父神社周辺にあった役所を襲ったわけである。
 その計り知れない脚力と体力と胆力に感嘆する。
 若いって・・・・・。 

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尾根道

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長尾根から望む両神山(1723m)

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23番・音楽寺観音堂と武甲山

長尾根から見た秩父盆地
長尾根丘陵から見た秩父盆地


 今一つの羊山丘陵は、武甲山の山麓を成している高台(標高250~300m)で、西武秩父駅を降りたらすぐ目の前に見える。
 尾根上には芝桜で有名な羊山公園がある。
 丘陵の向こう側は、アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』の舞台として有名になった横瀬町があり、ここもまた秩父札所5番から10番が点在している。
 羊山丘陵からは、秩父市街地の全景とともに、向かいの長尾根丘陵および頭一つ抜けた両神山のノコギリ状の特異な山型を見ることができる。
 他の山と見間違いっこない独特の存在感である。

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羊山公園から武甲山(1304m)を望む

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羊山公園から見た秩父市街(北方面)
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羊山公園から見た秩父市街(南方面)

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長尾根丘陵の上に顔出す両神山

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 両神山は、盆地の底にある秩父市街地からは到底望めないものと思っていたのだが、丘陵を下りながら確認していったら、なんと西武秩父駅の駅前広場からもその山頂を拝むことができた。
 つまり西武秩父駅からは、秩父の両雄たる武甲山と両神山の二つを見てとることができるのだ!
 これは思わぬ発見であった。

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西武秩父駅の左手にほんのちょっと両神山が覗いている


 今年の目標の一つは、武甲山と両神山、この二つの山に登ること。
 「呼ばれている」という実感があった。