2021年岩波新書

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 著者は、現代における最良の仏教入門書の一つであるワールポラ・ラーフラ著『ブッダが説いたこと』(1959年刊行、2016年初邦訳)の翻訳者であり、自らも『ブータン仏教から見た日本仏教』など多数の著書をもつチベット研究者にして生粋の仏教者である。

 「あとがき」に本書を記した理由として、①ラーフラ師への敬意を示すため、②「インド的でいささか煩わしい」文体で書かれた『ブッダが説いたこと』を日本人にとってより受け入れやすいものにしたいと思った、③「仏教にもともとあった、よりよく生きるための教えという側面」に光を当てたかった、の3つが挙げられている。
 まさに、その3点がしっかりと実現されている、読みやすくてわかりやすい書である。
 本書を読んだ後に『ブッダが説いたこと』を読めば、仏教の何たるかが一層深く理解できることであろう。
 
 いつもながら、今枝の歯に衣着せぬ率直な物言いに感心する。
 もとからの性格もあろうが、やはりフランスやブータンなど海外生活が長かったことが影響しているような気がする。
 つまり、一つには欧米の個人主義の感覚が身についているから、一つには日本のピラミッド型縦割り組織に属していないがゆえに、どこにも遠慮や忖度する必要がないのだ。
 テーラワーダ仏教(いわゆる小乗仏教)の名著が邦訳されるのに、今枝の登場まで半世紀以上待たなくてはならなかったのは、そのあたりの日本的事情を思わせるものであり、実にもったいないことであった。
 
 

おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損