2007年日本
121分

 『マイ・バック・ページ』が良かったので、山下監督の過去作を借りてみた。
 やはり、ソルティのキネマ・アイに狂いはなかった。
 素晴らしい映像作家である。
 連鎖するカットの見事さに、「ああ、これはスクリーンの大画面で観て埋没したかった」と心の中で叫んだ。
 撮影も『マイ・バック・ページ』の近藤龍人。
 光線の撮り方が実に繊細かつ印象的で、フランス映画界の巨匠フランソワ・トリュフォーやエリック・ロメールの作品を想起した。
 ということは、彼らとたびたび組んだキャメラマン、ネストール・アルメンドロスか(褒めすぎ?)

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このシーンが好き(鉄オタ)

 出演者では主役の少女・右田そよを演じる夏帆が光っている。
 そよの父親役の佐藤浩市は、存在感といい、芝居の上手さといい、歳を重ねるごとに親父(三國連太郎)との血のつながりを思わざるを得ない。
 この世代(60年生まれ)では、他の追随を許さない名優と言っていいだろう。
 脇役も魅力的。村の郵便局員役の廣末哲万やそよの学校の先生たちがなんとも素朴でゆるい味わいを出して、タイトル通りの“天然ぶり”を発揮している。
 天然を演じることくらい難しいものはなかろうに。
 
 島根のド田舎の町に暮らす少年少女の初恋ストーリーという、なんてことない平凡な物語。
 なんてことない平凡な物語がじゅうぶん映画になり得るということを、大先輩・小津安二郎のごとく、山下監督も証明している。




おすすめ度 :★★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損