2014年アメリカ、カナダ、ドイツ
105分

 東京国立博物館の『ポンペイ特別展』を鑑賞したら、当然、この映画が観たくなった。

 ポール・アンダーソン監督は『イベント・ホライゾン』、『バイオハザード』などSFパニック映画やアクション映画を得意とする人。
 本作も紀元79年のヴェスヴィオ山の噴火によってポンペイの人々が被った未曽有の災害を、大量のエキストラとCGを巧みに使いながら、迫力ある映像で描ききっている。

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CGで再現されたポンペイとヴェスヴィオ
 
 地震大国、火山大国、海洋国家である日本人にとって、まったくのところ他人事でない。
 観ればどうしたって、1995年1月の阪神淡路大震災や2011年3月の東北大震災&津波被害の記憶がよみがえり、人によってはつらい思いを持たざるを得ないけれど、「今ここにある危機」から目を背けるのは決して得策とは言えまい。

 ここには火山の噴火によって起こりうる災害のすべてが描きつくされている。
 大地震、地割れ、家屋の倒壊、ミサイルの如く降り注ぐ火山弾、広がる火の手、空を真っ黒に染める火山灰、煮えたぎる海と街を飲み込む津波、時速100キロを超えるスピードで押し寄せる数百度の火砕流、そして逃げ惑う群衆を襲うパニックと圧死・・・・。
 これはフィクションではなく、史実であり、ドキュメンタリーである。

 この映画に描かれるような地獄がまさに現実に出現して、ポンペイの人々を恐怖と苦痛のどん底に突き落としたと思うと、『ポンペイ展』の意味が180度変わってくる。
 あれは単なる博物展、美術展ではなくて、広島原爆資料館のような“断ち切られ破壊された日常生活の記録”なのだった。
 富豪の邸宅にモザイクで描かれたアレキサンダー大王は、彼が在位中に経験したいかなる戦場にもまして凄惨な、世界の終わりのごとき光景をその目に焼き付けていたのである。

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 物語的には、皇帝のいるローマと地方都市ポンペイの権力格差であるとか、市民の娯楽として供される競技場での奴隷(グラデュエーター)同士の闘いであるとか、自由を求める黒人奴隷の叫びであるとか、ローマ軍に惨殺された辺境民族の生き残りの復讐であるとか、男同士の友情や憎悪であるとか、身分を超えた恋であるとか、ローマの悪代官から愛する女を奪回するイケメン戦士であるとか(あたかも『ギリシア神話』に出てくる冥界の王ハデスに略奪された美女ペルセポネを救い出すヘルメスのよう)、定石どおり『ベン・ハー』や『クォ・ヴァディス』同様に往年のハリウッド古代ローマ時代ものらしい要素が詰まっている。

 ただし、結末はハリウッド式ハッピーエンドとは程遠い。
 ポンペイで生き残ることは事実上、不可能であった。
 迫りくるマグマを背景についに結ばれたヒーローとヒロイン含め、映画に登場するすべての人物が最後には死んでしまう。
 すべての人間の営為が無に帰し、100分近く紡いできた物語が終焉するという、『そして誰もいなくなった』を何万倍にもした究極のリアリティが待っている。

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おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損