1947年フランス
87分、白黒

 舞台はナチスドイツ占領下のフランスの田舎町。

 足の悪い老人と美しい姪が穏やかに暮らしている家に、ドイツ軍将校イーブルナックが数ヶ月居候することになる。
 敵の滞在を拒むことのできない叔父と姪は、せめてもの抵抗として沈黙を貫き、イーブルナックとの会話を拒む。
 イーブルナックは二人の祖国愛と強い意志を称賛するとともに、姪の美しさに惹かれていく。
 毎晩のように自室から居間に降りてきては、祖国ドイツへの愛、若い頃からのフランス文化や芸術への憧れ、自らの恋愛経験、そして仏と独の理想的な“結婚(融和)”について独り語りするイーブルナック。
 その礼儀正しさと魅力的な振る舞いに、叔父と姪の心はいつしか和らいでいく。 

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左から叔父役ジャン=マリ・ロバン、将校役ハワード・ヴェルノン、姪役ニコル・ステファーヌ
 
 これが「ヌーヴェルヴァーグの父」と言われるジャン=ピエール・メルヴィル(1917-1973)の長編処女作というから驚く。
 全編に行きわたる品格と無駄のないカットの連鎖は、作家としてすでに完成の域に達しているかのよう。
 しかも30歳のときの作品と来ては・・・・!
 戦時下のような危機は、人を否が応でも大人にするのだろう。

 ロシアのウクライナ侵攻をめぐる各国さまざまな人の発言をテレビやネットで見聞きするに、祖国愛というものについて思う昨今である。
 「国のために闘う」「国のために死ぬ」「国を誇りに思う」等々――日本人の多くが77年前にはあたりまえに思い口にしていた言葉、そして帝国主義への反省と資本主義的ミーイズムから戦後希薄化した言葉――が盛んに飛びかっている現実に、戦前にタイムスリップした感さえする。
 少なくとも、祖国愛を強調しなければいけない情況ってのはあまり幸福でないのは確かである。
 
 74年前に作られたこの映画が今とっても新しく思えるのは、いいことなのか、どうなのか。
 
 世間知らずのイーブルナックの仏独“結婚”の幻想は、ナチスのユダヤ人虐殺を知るに及んで見事に打ち砕かれてしまう。
 絶望から自ら前線を志願し出立するイーブルナックに、叔父と姪は初めて口を開く。 



おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損