収録年 1988年
場所 ロココ劇場(シュヴェツィンゲン、ドイツ)
指揮 ガブリエル・フェルロ
演出 ミヒャエル・ハンペ
演奏 シュトゥットガルト放送交響楽団
合唱 ケルン歌劇合唱団
キャスト
- アルマヴィーヴァ伯爵: デイヴィッド・キュープラー(テノール)
- バルトロ: カルロス・フェラー(バス)
- ロジーナ: チェチーリア・バルトリ(メゾソプラノ)
- フィガロ: ジノ・キリコ(バリトン)
- バジーリオ: ロバート・ロイド(バス)
- ベルタ: エディト・ケルテス・ゲブリー(ソプラノ)
演奏時間 158分
オペラ名歌手列伝にすでに殿堂入りしている世紀の名歌手チェチーリア・バルトリ(1966- )の22歳時のライブ。
いまだスカラ座にもメトロポリタン歌劇場にもデビューしていない駆け出しの頃の記録という点で、貴重である。
観客もどちらかと言えば、フィガロを歌ったジノ・キリコにより多くの拍手を送っている感じがする。後年、これほどの大歌手になるとはさすがに想像できなかったろう。
とは言え、一回りも二回りも年上の先輩歌手たちをしのいで圧倒的な技巧とベルカントぶりを発揮しているのは、明らかにバルトリである。
コロラトゥーラに荒削りなところもあり後年の流れるような滑らかさは欠けるけれど、「20代初めでここまで完成していたのか!」と驚かざるを得ない。
声は美しいし演技も適確、なにより観客に対するアピール力と視線を集めてしまうオーラーは、すでに十分なプリマドンナの貫禄。
この舞台の成功はひとえにバルトリの歌唱に拠っている。
栴檀は双葉より芳し。
『セビリャの理髪師』の映像は、ジョイス・ディドナートがロジーナを歌った2002年パリ・オペラ座ライブもある。
こちらはロジーナはじめフィガロ、アルマヴィーヴァ伯爵、バルトロの主要キャラ4人の歌手が高レベルで拮抗して、聴きどころ満載だった。
ベルタ役のジャネット・フィッシャーの元気溌剌な演技も良かった。
パトリス・シェローの演出も楽しかった。
総合的なレベルではパリ・オペラ座版に軍配を上げたい気がする。
いずれにせよ、ロッシーニの音楽には人を中毒にさせる魔力がある。
遊園地で一番人気のアトラクションの秘密は、「スピード・回転・浮遊感」の3つを備えていることにあると言われるが、ロッシーニの音楽はまさにそれなのだ。
観客は劇場に居ながらにして、ジェットコースターに乗っている感覚を味わうことになる。