2009年~2019年青林堂
久松文雄は1943年名古屋生まれの漫画家。
『スーパージェッター』『冒険ガボテン島』が代表作らしいが、ソルティは読んだことがない。
癖のない見やすい揺るぎないデッサンとシンプルなコマ割りは、こうした歴史物の漫画化にはもってこいである。
最終巻に収録されているインタビューにおいて「できるだけ原本に忠実に漫画化」したと言っているように、いたずらに脚色したり誇張したりしていないので、『古事記』のあらすじは知りたいけれど原典を読むのはちょっと億劫、という人にはおススメである。
ソルティは通りがかりの古本屋で見つけて全巻1400円で購入した。(amazonでは1冊1,026円で販売されている)
古事記現存する日本最古の歴史書。712年成立。3巻。天武天皇の命により稗田阿礼 (ひえだのあれ) が暗誦。これを元明天皇の詔により太安万侶 (おおのやすまろ) が撰録したもの。『帝紀』『旧辞』を検討し、その正説を定めるという編集の根本方針により、神代から推古天皇までを内容とし、天皇の支配による国家の建設という意図により構成されている。(旺文社『日本史事典』三訂版より)
書かれていることのどこまでがフィクションでどこからが史実か――という詮索は措いといて、ソルティがもっとも好きな話はヤマトタケル(日本武尊)伝説である。
父王(景行天皇)に忠儀を尽くすもそのあまりの武勇によりかえって遠ざけられ、父の命令に従って西に東に平定のため駆け回り、いつの日か故郷に戻って父に誉められることを願いながら若くして客死し、白鳥になった英雄。
ちょうど、『鎌倉殿の13人』の源頼朝(大泉洋)と弟の義経(菅田将暉)の関係を思わせる。
悲劇の英雄こそ日本人の心の琴線をかき鳴らす。
東宝映画『日本誕生』では、かの三船敏郎がヤマトタケルに扮し、強さのうちにも賢さと優しさを秘めた真っ直ぐな日本男児像をつくりあげている。まさにはまり役。

三峰神社にあるヤマトタケル像(埼玉県秩父市)
『古事記』はつまるところ、古代天皇家の系図と事績を記したものである。
その意味で考えさせられるのは、第25代武烈天皇と第26代継体天皇の間の隔絶である。
系図によるとこの二人――天皇は神の子孫なので「二柱」と呼ぶのが適切らしい――は、なんと十親等も離れているのである。
今の皇室に置き換えるならば、令和天皇のあとを明治天皇の弟の孫の孫が継いだ見当になる。(実際に明治天皇の兄弟は早世しているので、その系統は存在しない。ちなみに評論家の竹田恒泰は明治天皇の娘のひ孫、すなわち女系の子孫である)
これは第25代武烈天皇の周辺に男系資格者がいなかったからということらしいが、「そんな遠いところからわざわざ持ってきたのか!」とビックリする。
いったい、自分の十親等にあたる親戚をたどれる人がいるだろうか?
まさに国体を継続させるために選ばれし帝だったのだ!
いったい、自分の十親等にあたる親戚をたどれる人がいるだろうか?
まさに国体を継続させるために選ばれし帝だったのだ!
ソルティが本コミックを購入した一番の理由は、旅行や山登りに行ってその土地の神社を詣でたときに「祀られている神様のことを知りたい」、すなわち「土地の古くからの信仰を知りたい」と思ったからである。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
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