1960年大映
96分

 当時35歳の三島由紀夫がヤクザの若親分を演じ、その素人演技が酷評された一種の珍品。
 期待しないで観たのだが、まったく期待通りの学芸会レベルの芝居に、「やっぱり期待した通りの期待はずれだったな」と、よくわからない感想に追い込まれてしまった。

 名優として映画史にその名が刻まれる志村喬や若尾文子は別として、共演の船越英二や神山繁、根上淳や水谷良恵(現・八重子)、果ては役者よりテレビタレントとして水を得た川崎敬三でさえ、相当の芝居達者に見えてしまうほどの、主役とそれ以外の演技力の落差!
 もしかしたら、この三島の棒読みセリフと素人芝居の滑稽な味わいにアイデアを得て、増村監督はその後テレビで一大ブームを巻き起こした大映ドラマ――堀ちえみの『スチュワーデス物語』に代表される――のスタイルを思いついたのではなかろうか。
 としたら、この作品の意義も捨てたものではない。

 こき下ろしているばかりに見えるが、芝居の上手下手とは別の次元で、三島由紀夫の愛すべき魅力はとらえられている。
 無防備なまでの不器用さがそれである。
 三島由紀夫の運動能力の無さについては、どこかで石原慎太郎が暴露していたけれど、この作品はまさにそれを証明している。
 自らの肉体を思い通りコントロールする能力を欠いているように見えるのだ。
 本作中の三島の演技で唯一素晴らしいと思ったのが、ラストシーンにおいて神山繁演じる殺し屋に刺されたあとの死体(の演技)であるというのが、まさにその間の事情を物語っている。

 それを思うと、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地において三島由紀夫が自らの腹切りをちゃんと成し遂げたことが不思議な気がする。
 もっとも切腹だけではすぐには死ねない。
 介錯人が斬首することで自決は完成する。
 三島由紀夫はここでも森田必勝という共演者に助けられたのだった。


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若尾文子と三島由紀夫 



おすすめ度 :★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損