会場 埼玉会館大ホール(さいたま市)
指揮 小林雄太
曲目
- ジョン・ウィリアムズ:『ジュラシック・パークからメインテーマ』
- 芥川也寸志:交響管弦楽のための音楽
- セルゲイ・ラフマニノフ:交響曲第2番
90年代に『ボキャブラ天国』(フジテレビ系列)というバラエティ番組があった。
ソルティが観ていたのは、司会がタモリ、サブがヒロミで、小島奈津子アナがアシスタントをつとめた最初の頃だけだった。
視聴者投稿のダジャレ作品(格言・物や人の名前・歌詞などのダジャレや替え歌)を番組スタッフがタレントなどを使ってVTR化したものを、スタジオ出演者らが品評して賞を与えるスタイルであった。
今思えばほんとに下手なダジャレばかりで、「いったいどこが面白かったんだろう?」と不思議な気がする。時代のムードってやつだろう。
が、その中でソルティがいまだに忘れられない傑作がある。
山本リンダのヒット曲『狙い撃ち』を替え歌にしたもので、だいたい次のような歌詞だった。
ひがしうらわ にしうらわ みなみうらわ きたうらわ
むさしうらわ なかうらわ
うらわにゃ7つの駅がある。
リンダ(本人だったか確かでない)の歌うアップテンポな調べに乗って、次々と実際の駅名表示が画面に現れる。
埼玉県民であるソルティ、これには爆笑した。
今回、数十年ぶりにJR浦和駅で降りたところ、構内にこんなオブジェを見かけた。
「うらわ」駅は8つに増えていた!
浦和美園駅は埼玉高速鉄道の終点で、埼玉県さいたま市緑区美園にある。
2001年に開業したそうだが、ソルティはまったく知らなかった。
別名「埼玉スタジアム線」というように、浦和美園から徒歩15分のところにあるサッカー競技場が沿線一番の呼び水。
サッカーに興味ない人間の脳内鉄道路線図には載っていなかった。
確かに、浦和と言えば浦和レッズ。
サッカーの街なのであった。
浦和レッズのお店
埼玉会館は浦和駅西口から徒歩5分。
思ったよりゴージャスなホールであった。
約1300名収容の大ホールに500名ほどの来場は立派。
目白フィルハーモニー管弦楽団は2018年3月結成の若いアマオケ。
見たところ20~30代が多い。
自然、オケの音も迫力と鮮度あふれるエネルギーに満ちたものであった。
恐竜映画のサントラはもってこいだ。
『ジュラシック・パーク』を再度観たくなった。
2曲目の芥川也寸志(龍之介の三男)の管弦楽曲ははじめて聴いた。
どことなくアラビアンナイト風。
リズミカルで、神秘的で、媚態風なところもあり、情熱的なところもあり、ラストに向かってどんどん高まっていく興奮刺激性もある。
この曲、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』の「七つのヴェールの踊り」の伴奏にピッタリではないか。
一枚一枚薄いヴェールを脱ぎながら、鳩のような白い足で踊るサロメ王女を想像した。
指揮者の小林雄太は表情のつけ方が上手い。
ラフマニノフを聴いていると、「やはりロシアは偉大だ」「やはりロシア人は熱い」と思わざるを得ない。
プーチンのせいで世界の敵みたいに思われているロシアであるが、トルストイやドストエフスキー、チャイコフスキーやショスタコーヴィチ、エイゼンシュテインやタルコフスキーといった偉大な芸術家を生んだロシアはやっぱり偉大な国である。
これらの作品によって浮かび上がるロシアの民は、一見、取っつきにくそうに見える態度のうちに熱いハートを持ち、人の世の苦しみや悲しみをよく知る哲学者。
決して悪い人たちではない。
決して悪い人たちではない。
独裁を許してしまったのが間違いなのだ。
若いオケならではのパワーと若干の稚拙さを、あふれる情熱と未完の夢というテーマに変貌させた指揮者の手腕が光った。
第3楽章、第4楽章では泣かされた。
拍手喝采。