2002年国書刊行会
歌人にして作家の須永朝彦が、あまたの史書や古記録を紐解いて、日本史を彩る美少年たちを時代を追って紹介したもの。
神代の昔から語り起こして、在原業平や世阿弥や森蘭丸といった有名どころから、はじめてその名を聞く稚児や喝食(かつじき)やお小姓や若衆、しまいは銀幕の美男スターやジャニーズ事務所のタレントに至るまで、何十人もの美少年が登場する。
ちなみに、密教寺院にいた美少年を稚児、禅宗寺院にいた美少年を喝食と呼んだそうな。
あとがきで著者が書いているように、
かつての日本では、性愛の在り方が西洋などとは相当に異なり、男性の同性愛に対するタブーが殆ど無かったので、美少年の迹を追う事は、取りも直さず男色の歴史を辿るに等しく、必然的に本書も〈衆道史〉の色を帯びるものになった。
まったくのところ、全編これ、日本男色史と言っていい。
どこそこの偉い僧侶が稚児に執着したとか、どこそこのお武家様がお気に入りの小姓を取り立てたとか、どこそこの念者が嫉妬に駆られて若衆を斬り殺したとか、そんな話のオンパレード。
しまいには飽きて、面白そうなところだけ拾い読みした。
それにしても、男色は日本のお家芸とは知っていたが、こうまで広く深く浸透しているとは!
世界史を見ても、ここまで大っぴらな男色の伝統を(近代まで)有しているのは、日本以外にはなかろう。
日本って、日本の男って、ほんとフシギ。
とりわけ、武家社会になってからの男色の横行には唖然とするものがある。
戦国大名は、隣接するライバルと良好な関係を築くため、自らの娘はむろんのこと、最も美しい息子を贈り物として差し出した。
戦国大名は、隣接するライバルと良好な関係を築くため、自らの娘はむろんのこと、最も美しい息子を贈り物として差し出した。
足利義満、伊達政宗、武田信玄、織田信長、豊臣秀次、徳川家康、徳川家光、徳川綱吉・・・・。
これら権力者は揃って美少年を好み、側近に引き立てた。
つまり、男色文化が日本の政治に大きな影響を与えたということである。
つまり、男色文化が日本の政治に大きな影響を与えたということである。
男色というテーマを抜きにして日本の歴史を考えることは、たいへんな片手落ちなのではあるまいか?
さて、最後にソルティが選ぶ「日本美少年ベスト10」を発表したい。
歴史に登場する順で。
- ヤマトタケル・・・実在人物かは不明。熊襲征伐の際に女装して酒席に乗り込み、その美貌で敵をメロメロにして打ち取った英雄。
- 厩戸皇子・・・山岸涼子の人気コミック『日出処の天子』の印象が強い。厩戸皇子は女嫌いのゲイで、ノンケの蘇我毛人に恋慕するという設定。
- 在原業平・・・『伊勢物語』に出てくるプレイボーイ。かつて、美男子のことを「今業平」と言ったとか。
- 平敦盛・・・平清盛の甥っ子。17歳の若さで討ち死にした。「一の谷のいくさ破れ 討たれし平家の 公達あわれ」で知られる唱歌『青葉の笛』は敦盛を歌ったものである。
- 源義経・・・「京の五条の橋の上」で軽やかに宙を舞う牛若丸のイメージが強い。『鎌倉殿の13人』では令和の美青年・菅田将暉が演じていた。
- 世阿弥・・・その美貌ゆえ足利義満にいたく寵愛された。能が世界に誇る伝統芸能となったのも世阿弥の美貌と義満の男色趣味あってのこと。
- 森蘭丸・・・織田信長の秘蔵っ子。本能寺の変に際しては槍をとって防戦に当たり、最後は信長に殉じた。その死に様も誉れ高い。
- 天草四郎時貞・・・島原の乱でクリスチャンらが担ぎ上げたカリスマリーダー。不思議な力を持っていたところもポイント高い。昭和の世に生まれ変わって美輪サマになった話は有名。
- 長谷川一夫・・・銀幕一の美男スターと言えば、必ず名前が上がる。林長二郎という芸名だった昭和12年、暴漢に襲われて顔を傷つけられ、日本中を騒然とさせた。
- 美輪明宏・・・「神武以来の美少年」と讃えられ、江戸川乱歩や三島由紀夫に可愛がられたのはもはや伝説。この人の素晴らしいのは外見のみならず、心や生き方も美しいところ。
長谷川一夫
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
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