2020年フランス、ベルギー
105分、フランス語

 サスペンスミステリー。
 原題は Les traducteurs 「翻訳者たち」

 世界的大ヒットのミステリー『デダリュス』完結編を各国語に翻訳するために、出版元によって人里離れた豪邸の地下室に閉じ込められた9人の翻訳家。
 それは世界同時発売前の内容流出を未然に防ぐための措置であり、翻訳が完成するまでの2ヶ月間、各自の携帯電話など通信機器は取り上げられ、外部との連絡は一切できない。

 しかるに、出版元の計らいを嘲笑うかのように、ネットには原稿の一部が流出され、脅迫メールが出版エージェントのもとに届く。
「この先の流出を防ぎたいなら500万ユーロ払え」
 いったい、9人のうちの誰が、どんな手を使って、原稿を流しているのか?
 そして、その目的は何なのか?

著作権

 フォレスト出版の『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(宮崎伸治著)を読むと、出版翻訳家という職業がいかに身分不安定で、出版社によっていいようにこき使われ、理不尽な目に合わせられるか、なまなましく迫ってくる。
 とくに未熟な契約社会である日本は、フリーランスで仕事をしている人たちの立場が非常に弱い。
 いっとき欧米ミステリーの翻訳家に憧れたこともあるソルティだが、昨今の出版不況というか出版オワコンに言及するまでもなく、結局のところ、翻訳では食っていけなかっただろう。
 慢性的に人材不足である介護業界に目を向けて良かった。 
 いや、そもそもそんな英語力ないか・・・・・。

 宮崎伸治のような痛い体験を持つ翻訳家ならば、非人道的な仕打ちを受ける9人の翻訳家に共感至極だろうし、傲岸不遜で金の亡者のような出版エージェントが報復される結末に、喝采の叫びを上げ留飲を下げるだろう。
 ミステリーとしては強引な展開が目立つ。

 本映画の設定は実際にあったことで、『ダ・ヴィンチ・コード』で世界的ベストセラー作家となったダン・ブラウンの第4作『インフェルノ』出版に際して、出版元がダン・ブラウンの同意のもと、各国の翻訳家を地下室に隔離して翻訳を行なわせたという。
 ダン・ブラウンのイメージ爆落ち。





おすすめ度 :★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損