2017年アメリカ
117分

 『シックス・センス』『サイン』『ヴィレッジ』など、どんでん返し型サスペンスミステリーの作り手として有名なナイト・シャマラン監督。
 多重人格(医学用語では解離性同一性障害)の男に囚われた3人の女子高生の血も凍るような地獄の体験が描かれる。
 原題の Split は「分裂する」の意だろう。

多重人格

 23の人格を持つ多重人格者を演じるジェームズ・マカヴォイの演技が見物である。
 幼少の頃に親から虐待を受けた本来の人格ケビン、ファッションデザイナーのオネエさんバリー、9歳の無邪気な男の子ヘドウィグ、強迫障害をもつ潔癖症の男デニス、歴史オタクの中年オーウェル、ヒステリー気質の女パトリシア、インスリン注射の欠かせない糖尿病患者ジェイド、そして他のほとんどの人格にも主治医の精神科医にも隠されていた24番目の人格ビースト。
 作中、マカヴォイは少なくとも8つの人格を演じ分けている。
 しかも、ある人格(デニス)が別の人格(バリー)のフリをして精神科医をたぶらかすなんて、複雑で難しい演技も求められている。
 役者冥利に尽きるような役であるが、なかなか見事な演技である。

 精神科医役のベティ・バックリーも、ユーモアと人情味ある経験豊富な女医を演じていて良い。
 拉致される女子高生の一人でやはり被虐待経験をもつ少女ケイシーを演じるのは、アニャ・テイラー=ジョイという名の女優兼モデル。冴え冴えした美貌が光っている。
 借りてきたDVDにはメイキングがついているが、それを観ると、完成版(公開版)ではまったく出てこないサブキャラ(演ずるのは黒人俳優)が登場している。
 つまり、彼の出るシーンはすべて切られてしまったのだ。
 シビアな世界だなあと、切られた人格(キャラ)にちょっと同情した。

 決してつまらない作品ではないけれど、児童虐待や多重人格をテーマにしたサスペンス映画は履いて捨てるほどあるので、目新しさはない。
 演出にもこれといった斬新さもなく、結末も凡庸。
 この監督、なかなか『シックス・センス』を超えられないのがつらいところだ。





おすすめ度 :★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損