1977年TBS系列で放送
190分(全4回)
脚本 石松愛弘
監督 斎藤光正
金田一耕助=古谷一行シリーズの初期作。
古谷一行は2005年までテレビで断続的に金田一耕助を演じていたが、それはちょうど昭和から平成のTVドラマの質および視聴者のドラマ鑑賞力の低下を段階的に証明するような具合だった。
先ごろ亡くなった山本陽子主演の『悪霊島』(1999年放送)なんか、ほんとにひどい出来だった。
ドラマの質の低下という点では、やはり、映画畑でしっかり先輩について訓練を積んだあと、映画の斜陽と共にTV業界に入ってきたスタッフらが、だんだんと減っていったことによるものだろう。
70年代制作のものは、演出はもちろん、美術や照明なども非常に凝っていて、それだけでも見ごたえある。
一方、視聴者の鑑賞力の低下という点では、入場料を払って暗闇に閉じ込められる映画館とは違って、TVは「つまらない」と思ったらすぐにチャンネルを変えられる、席が立てる。
パソコンゲームの普及で、より多くの刺激とよりスピーディーな展開を求めるようになった視聴者は、昭和のドラマのスピードをかったるく思うようになった。
放送開始当時、横溝正史シリーズはおどろおどろしいストーリーとショッキングな映像とでお茶の間を凍らせ、次週が待ち遠しかったものだが、今観ると、「なんてのんびりした展開なんだ」と驚くばかりである。
孤島での連続殺人事件を描いたこの全4回の『獄門島』でも、最初の殺人が起こるのは、やっと1回目のラスト(開始40分)に至って。
令和のミステリードラマで、死体シーンが出るまで40分待つなんて、ありえないだろう。
のどかな時代、というか視聴者に忍耐力があった。
45年ぶりに本作を観て、いくつか再発見したことがあった。
1.映画とTVドラマとでは真犯人が違う。
横溝映画の犯人は、たいてい主演クラスの大女優と決まっている。
その伝にのっとり、市川崑監督の映画では司葉子が犯人役であった。
その印象が強いので、てっきり本作では浜木綿子が犯人かと思っていた。
が、違っていた。
犯人は女性ではなかった。
TVドラマのほうが原作に忠実なのであるが、ソルティは原作もTVの筋もすっかり忘れていた。
2.羽生結弦は若い頃の三善英史に似ている。
三善英史が、殺される3人の娘をかどわかす色男役で出演している。
ソルティ世代にとって、三善英史と言えば『雨』を歌った演歌歌手(森昌子と同期)、および化粧パフ「シルコット」のCMでの女装姿が印象に強い。〽化粧落として、熱いシャワーを浴びて
その後、バイセクシュアルであることを公表している。
羽生がバイセクシュアルだという意味合いではなく(そうであっても何ら問題ないが)、端正な和風の顔立ちや持っている雰囲気がよく似ている。
3.三つの俳句すべてが松尾芭蕉作ではなかった。
本作は、いわゆる「見立て殺人」物である。
次の三つの俳句に詠まれている内容にしたがって、殺人が行われていく。
1.映画とTVドラマとでは真犯人が違う。
横溝映画の犯人は、たいてい主演クラスの大女優と決まっている。
その伝にのっとり、市川崑監督の映画では司葉子が犯人役であった。
その印象が強いので、てっきり本作では浜木綿子が犯人かと思っていた。
が、違っていた。
犯人は女性ではなかった。
TVドラマのほうが原作に忠実なのであるが、ソルティは原作もTVの筋もすっかり忘れていた。
2.羽生結弦は若い頃の三善英史に似ている。
三善英史が、殺される3人の娘をかどわかす色男役で出演している。
ソルティ世代にとって、三善英史と言えば『雨』を歌った演歌歌手(森昌子と同期)、および化粧パフ「シルコット」のCMでの女装姿が印象に強い。〽化粧落として、熱いシャワーを浴びて
その後、バイセクシュアルであることを公表している。
羽生がバイセクシュアルだという意味合いではなく(そうであっても何ら問題ないが)、端正な和風の顔立ちや持っている雰囲気がよく似ている。
3.三つの俳句すべてが松尾芭蕉作ではなかった。
本作は、いわゆる「見立て殺人」物である。
次の三つの俳句に詠まれている内容にしたがって、殺人が行われていく。
鶯の 身をさかさまに 初音かな
むざんやな 冑の下の きりぎりす
一つ家に 遊女も寝たり 萩と月
最初の犠牲者は梅の木に逆さに吊られた状態で発見され、二番目はお寺の重い鐘の下に閉じ込められ、三番目の遺体の口には萩の花が差してあった。
最初の犠牲者は梅の木に逆さに吊られた状態で発見され、二番目はお寺の重い鐘の下に閉じ込められ、三番目の遺体の口には萩の花が差してあった。
この俳句の作者を、ソルティは松尾芭蕉と思い込んでいた。
が、二番目と三番目の作者はたしかに芭蕉であるが、一番目は芭蕉の弟子の宝井其角(たからいきかく)であった。
三つの見立て殺人を完成させるまで、金田一耕助が犯人を泳がせておくのはいつものことである(笑)
きちがいじゃが、仕方ない
出演者では、磯川警部役に有島一郎、島一番の権力者・嘉右衛門役に滝沢修、巡査役に河原崎長一郎、気狂いの与三松役に仲谷昇など、舞台出身の実力派が揃っている。
このあたりも、昭和ドラマの質の担保に大いに寄与していた部分。
狂言回し的な女性を演じる着物姿の浜木綿子が、艶やかにして、色っぽい。
薄幸のヒロイン早苗を演じているのは、島村佳江という女優。
あまり聞かない名であるが、TVドラマ中心に活動した後、藤間紫の息子と結婚し、現在3代目藤間紫の母である。
藤間紫と言えば、一時、浜木綿子から市川猿之助(香川照之の父親)を奪った女性として世間を騒がせたことが記憶によみがえる。
ここで、浜木綿子と共演しているのは何かの因縁だろうか。
藤間紫と言えば、一時、浜木綿子から市川猿之助(香川照之の父親)を奪った女性として世間を騒がせたことが記憶によみがえる。
ここで、浜木綿子と共演しているのは何かの因縁だろうか。
リアルタイムで観ていた中学生の頃は全然思わなかったが、今観ると、若い日の古谷一行って、すごく色気がある。
浜木綿子と古谷一行
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損