2015年新潮社
2020年文庫化
シャーロック・ホームズ物のパスティーシュ。
副題に「ジョン・H・ワトソンの冒険」とあるように、ワトソンが主役になっているところがミソである。
原作のキャラクター設定を踏襲しているため推理能力こそ欠落しているものの、我らがワトソンは、愛する女性を救うため、足の怪我をものともせずに馬を駆り、塔によじ登り、火の海をくぐり、見事な銃の腕前をみせる。
読む者は、胸躍り、心の中で声援を送り、喝采せざるをえない。
読む者は、胸躍り、心の中で声援を送り、喝采せざるをえない。
誠実で、友誼に篤く、女性や弱き者に優しく、危機に当たって冷静で、結構ロマンチストで、英国紳士の鏡のようなワトソンに、シャーロキアンは惚れなおすこと間違いなし。
一方、原作キャラにくらべてカッコ悪いのが、ホームズである。
見当違いな推理を連発するわ、コカイン中毒で野獣のごとく凶暴化するわ、精神病院でブラック患者になるわ、妄想であらぬこと口走るわ、肝心なときに麻薬入りのお茶を飲んで失神するわ、いいところがほとんどない。
ホームズ完璧主義の“推し”にしてみたら、ちょっと許せない設定かもしれない。
ソルティは、子供の頃からのシャーロキアンであるが、四十過ぎてからはホームズよりワトソンが好きになったので、本作はとても楽しめた。
タイトルの「新しい十五匹のネズミのフライ(NEW 15 FRIED RATS)という謎の言葉の解明を含む本格推理要素、ワトソン大立ち回りの冒険アクション要素、ワトソンとヴァイオレットをめぐるロマンス要素、『赤毛連盟』『這う人』『まだらの紐』といったホームズ短編の名作をうまく物語に組み込んだファンサービス要素、ハドソン夫人のフライパン攻撃などユーモア要素、趣向盛だくさんの上に構成も語り口も巧みで、島田荘司の小説家としての実力に感じ入った。
ソルティは島田のデビュー作『占星術殺人事件』しか読んでいなかった。
これから評判のいい作品をさらっていきたい。
ホームズ物の長編パスティーシュの中では、トップに位置する傑作と思う。
海外の作品にくらべてもまったく見劣りしない。
同郷のシャーロキアンとして誇らしい。
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損



























