1987年アメリカ
トミー・リー・ジョーンズと言っても、ピンとこない人は多いと思う。
BOSSコーヒーのCMに出てくる宇宙人ジョーンズである。
彼が39歳のときの作品である。
トミーの役はカトリックの神父ジョセフ。
治安のあまり良くない下町の教会に配属されて12年、その誠実さと奉仕の精神(とルックスの良さ)とで町民から信頼され慕われている。
もちろん、独身である。
そのジョセフに「死者のメッセージ」が寄せられ、「背徳の罠」が迫るというのだから、期待せずにはいられない。
「メッセージ」とは何か?
地獄に落ちた信徒からのHELPか?
亡くなった師匠からの警告か?
あるいは、悪魔に憑りつかれた少女からの脅しか?
「背徳の罠」とは何か?
敵対する組織が仕組んだセクシー美女たちの酒池肉林か?
新月の夜に行われる魔女たちのサバトか?
それとも、美少年の誘惑から始まる男色ワールドへの誘いか?
オカルトとエロスがほどよくミックスされたドミニク・モル監督の『マンク~破戒僧』(2011)のようなものを想像していたのだが、1987年のハリウッドではそこまで冒涜的なものは作れなかった。
題名倒れ、というか、思わせぶりなタイトルにつられ視聴するソルティのような助平を当て込んだ、誇大広告的邦題なのだった。
原題は、BROKEN BOWS 「折れた弓」である。
同じ類いに、クリント・イーストウッド主演の『白い肌の異常な夜』がある。原題は The Beguiled 「だまされし者」。
ふたを開ければ、オカルトもエロスもまったく関係ない真面目な映画で、一人の神父の信仰の危機を描いた作品であった。
教区内で起きた画家殺人事件の謎を追うジョセフ神父が、被害者と付きあっていた美女と知り合い、ふつうに恋に陥り、自らの信仰に疑問を覚え、還俗するという話。
これを「背徳」とは大げさ過ぎる。
ポール・シュレイダー監督の『魂のゆくえ』(2017)のトラー牧師の懊悩と比べると、単純で、哲学性・社会性も浅い。
況んや、2024年公開の『教皇選挙 Conclave』(エドワード・ベルガー監督)においてをや。
宗教に対する西洋人の意識や態度もここ数十年で大きく変わった。
とりわけ時代を感じさせたのは、カトリック教会と同性愛との距離感である。
殺人事件の容疑者は、妻帯しているクローゼットのゲイの男なのだが、彼が少年の頃から抱えてきたセクシュアリティの悩みを、ジョセフ神父すなわちカトリック教会が受け止めることができなかったことが、事件の遠因となった。
カトリックの教義を内面化し、自らを「邪悪」と決めつけ、「神から見放された」と思い込み、極刑を望む同性愛者の存在は、87年のアメリカでは珍しくなかったであろう。
よもや、カトリック内部でこれほど神父による少年たちへの性的虐待がはびこっているとは、当時、知られていなかった。
若きトミー・リー・ジョーンズは、セクシーで暗い眼差しが魅力的。
還俗後の日本で、これほど長く宇宙人を演じることになるとは思いもよらなかったであろう。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損


















































