ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

美術館・博物館・ギャラリー

● インカ帝国展(上野・国立科学博物館)

インカ帝国展 001 久しぶりに行く上野公園はきれいになっていた。
 とりわけ、国立博物館前の噴水広場は、ログハウスのようなスターバックスができて、噴水を取り巻くベンチも新たに作り直され、木々の間を抜ける風も爽やかに、居心地の良い癒しの空間になっていた。
 なんと言っても、ブルーシートの家々が見あたらない。
 東京都や台東区のホームレス対策が効を奏しているのか、NPOなど民間支援団体の尽力なのか。
「彼等はいったいどこに行ったのだろう?」
 単に上野公園から追い出されて、別の人目につかない場所に居所を移しただけでなければよいが・・・。

 展示物はどれも興味深い。
 チュニックと呼ばれる、アルパカなどの毛を染色した糸で編まれた色とりどりの貫頭衣が実に見事で、色合いもデザインもクール。インカの男衆は伊達っぷりを競っていたらしい。
 もっとも人がたかっていたのはミイラであった。日本人のミイラ好きは大英博物館でも有名である。
 一番感動したのは、最後に観ることができるマチュ・ピチュの3D映像である。コンドルの目線になってマチュ・ピチュを天空からまた地を這うようなアングルから探検することができる。まるで、実際にマチュ・ピチュに行き街の中を移動している錯覚が起きるほど、臨場感あふれる映像。素晴らしい技術である。
 目の前の手の届くところをハチドリがぶんぶん音を立てて飛んでいく。
 隣のおばさんが体をよけながら呟いた。
 「映画で良かった。刺されるかと思った。」
 (ハチドリは刺さないって・・・)

 平日(木曜日)の午前中という、もっとも人出が少なそうな時間を狙って行ったにもかかわらず、終始人垣の後ろから展示ケースをのぞかなければならなかった。
 一日の来場者数は4000人~5000人位、大盛況である。
 順路の最後に開始日からの日ごとの来場者数が標してあって、少ない日でも3000人を超え、一番多い日(5/6だったと思う)は8000人を超えていた。
 面白いのは、この来場者数を表すのにインカ帝国の数の表記方法であるキープという結び縄を用いているところ。結び目の数や結び方によって、数を記録するのである。(十進法)
 このことが何を意味するかというと、インカ帝国には文字文化がなかったのである。
 15世紀に栄えた文明としては不思議なことである。
 それだけではない。
 貨幣文化も持っていなかった。物々交換である。

 マチュ・ピチュに代表される高度な石積みの技術からすると、文化度の高さはかなりのものである。他国との交流がまったくなかったわけでもない。
 これはもう意図的に文字と貨幣を持たなかったとしか思われない。
 合わせて、土地の私有も認められていなかったというから、「財産」という概念がなかったのではないだろうか。

 もちろん、ホームレスなどいるわけがない。

 
国立科学博物館




  


 


● 世界よ、驚け!浮世絵:『歌川国芳展』(六本木、森アーツセンター)

120126_2328~01 国芳の没後150年にあたって開催された記念展。
 
 とにかく「凄い!」
 「凄い!」の一言に尽きる。

 ゴーギャンもびっくりの色彩感覚。
 ミケランジェロものけぞる大胆な構図。
 ジョットーも嫉妬する愛敬のある表情や仕草の数々。
 ダ・ヴィンチもおののく緻密で正確なデッサン力。
 レンブラントも真っ青の多作ぶり。

 江戸時代にこれほどの画家が本邦にいたことを誇りに思う。
 西洋絵画に伍して遜色ない。どころか、迫力(生命力)ではキリスト教圏の画家を凌駕している。

 魚や動物の絵がどれも見事なのだが、国芳が好きだったという猫の絵が実によく生態を観察していて、猫のとぼけた感じを描き出していて微笑ましい。

 1500円払って、絶対に損はない。

 

● いのちのダンス、色彩の舞踏 ギャラリー:AKI新作絵画展

aki 001 銀座ギャラリー・ノアで開催中のAKI新作絵画展に行った。

 AKIさんは1987年東京生まれの24歳の青年。軽度の知的障害を持ちながら、自由な感性でアートに挑戦している。海外にも作品を出展し、高い評価を受けているほか、日本全国で個展も開いている。サンマーク出版から絵本も出している。

 AKIさんのおとうさんである木下昭さんは、若者へのエイズ啓発にも関心が高く、オカモトと交渉してAKIさんのイラスト入りコンドームを数万個制作したほど。おとうさんは仲間たちと一緒に、あちこちの行政を訪問してコンドームを配布してくれるよう依頼したが、引き受けてくれたところは本当にわずかだったと言う。
 エイズ教育・性教育に対する行政や学校のおよび腰は今に始まったことではないが、東京では一日4人を超えるペースでHIV感染は広がっているというのに、大人たちは若者を見捨てるのか・・・。
 木下さんとAKI親子とは、このエイズの啓発活動が縁で知り合ったのである。


 AKIさんの絵は、見るたびにビックリする。
 なんといっても色遣いが凄い。こどものお絵かきみたいな可愛いらしい動物や植物や昆虫などが仲良く共生しているキャンバスから、プリズムで分割された色のすべてが放射されているかのように、あらゆる色がひしめきあって、踊っている。100色のクレヨン箱にあるすべてのクレヨンを使おうと楽しんでいる子供のようである。
 でありながら、どの色も決して自己主張していない。どの色も形態を破壊していない。過剰でありながらうるさくない。豊穣というべきか。

 お父さんの話では、AKIさんは3月の震災以後、しばらくパニックに陥っていたのだそうだ。家の中にいられずに、しばらく車の中で生活していたという。いのちに対する共感力、周りの人々の感情に対する共振力が強いのであろう。

 今回の個展では、震災後に描き始めたAKIさんの絵が中心に出ている。震災前に見たときより、色も動きも爆発している、踊っている、と思った。
 いのちのダンス。

 それにしても、どうやってこの色遣いが可能なんだろう? 
 色彩のバランスをどう意識しているのだろう?
 もしかして・・・。
 
 会場にいたAKIさんに訊いてみた。
 「AKIさんの目には、こんなふうに色が見えているんですか?」
 間髪も入れずにAKIさんは答えた。
 「そうです。」

 やっぱり。

 色遣いを考えているのではなく、ただ自分の目に見えた通りを描いているのだ。


aki 002

 AKIさんの作品はホームページでも見ることができる。
 
 http://www.life-aki.com/index.html


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