ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

 ★介護の仕事

● 本:『非正規介護職員ヨボヨボ日記』(真山剛著)

2020年三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売

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 この介護職員編こそは、ソルティが実態を良く知る、共感の高い一編である。
 ここに書かれていることのほとんどは、五十歳近くなってからヘルパー2級を取得し高齢者施設の介護職員となったソルティも、現場で体験し、感じ、戸惑い、考えたことであった。
 1960年生まれの著者の場合、56歳から介護の世界に足を踏み入れたというから、慣れるまでは心身共に、ソルティ以上にきつい日々であったことだろう。

 年下の同僚になめられ叱られ、職場のお局様のご機嫌を伺い、仕事がなかなか覚えられず何もできない自分に苛立ち、利用者からの罵倒や暴力に耐え、認知症患者の突拍子もない言動に振り回され、利用者家族の理不尽な要求に辟易し、利用者と会話する暇さえない寸刻みの業務に追われ、腰や肩の故障におびえ、夜勤で狂った体内時計に頭が朦朧とし、転倒事故や誤薬や物品破壊の始末書をため込み、安月給に甘んじ・・・・。
 こうやってエッセイを書けるまで余裕ができたことを祝福したい。

 ――と書くと、「いいことなんか一つもないじゃん」と思われそうだけど、それでも介護職を続けることができるのは、著者が「あとがき」でも書いているように、「人と関わること」の面白さなのだろう。
 それも、家族やパートナーのように“深く長く”関わるのではなく、施設という閉鎖空間で、利用者が死ぬまであるいは退所するまでの短期間だけ、“濃く短く”関わるところにポイントがある。
 通常の人間関係なら長いつきあいののちに初めて見せてくれるようなありのままの姿を、死期の近い老人たちは年若い介護職員たちにさらけ出してくれる。
 人間の良い面も醜い面もすべて――。
 それを役得と感じられるような人が、介護職を続けられるのだと思う。

 心身の故障で現場を退いてしまったソルティであるが、たまにあの修羅場のような、コールが鳴り響くフロアを懐かしく思うことがある。
 数秒で正確にオムツを当てる神業のようなテクニックが、今やすっかり錆びついているのを、もったいなく思う。
 認知症の人たちとの不思議なコミュニケーション空間を貴重なものに思う。 
 それにあの頃はいくら食べても太らなかった。
 


おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損



● 福祉住環境コーディネーター試験に向けて

 高齢者や障害者の介護を考えるにあたって欠かせないものに、福祉用具と住宅改修がある。

 福祉用具は、よく知られている車いすや杖や補聴器にはじまって、装具・義肢、歩行器、手すり、スロープ、介護ベッド、ポータブルトイレ、入浴用のいす、認知症老人徘徊感知器など、ごまんとある。
 「福祉用具法」(1993年制定)では、「老人または心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具、およびこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具」と定義されている。
 介護保険を使って、お手頃価格でレンタルや購入できるものも多い。

 住宅改修は、階段や廊下に手すりをつける、扉を開き戸から引き戸に替える、段差を解消する、滑りにくい床材に替える、便器を和式から洋式に取り換えるなど、当事者がより安全で快適な生活が送れるように住宅の一部を改修工事する。
 介護保険では20万円までの補助が出る(一人原則一回限り)。

 介護の仕事をしていると、当事者や家族から福祉用具や住宅改修について相談を受けることが多い。
 また、こちらから本人のADL(日常生活動作)や家屋の様子をみて適切なアドバイスを与えられなければ、とても「プロってる」とは言えまい。
 たとえば、
  • 膝や腰が悪くて低い位置から立ち上がるのが難しい人に、高さの調節できる介護ベッドや、通常(ケロヨンタイプ)より高さのある入浴用のいすをすすめる。
  • 歩行がおぼつかなくて転倒しやすい人に、家の要所に手すりの設置、段差解消のためのスロープや踏み台の設置をすすめる。
  • 夜間、介助者なしにトイレまで行くのが難しい人に、ベッドの脇におけるポータブルトイレの購入をすすめる。
といった具合に。

ポータブルトイレ
ソルティが足の骨折時に使っていたポータブルトイレ

 しかし、専門業者や理学療法士ならいざ知らず、ソルティが保有している介護福祉士とか介護支援専門員(ケアマネ)では、資格取得の過程において福祉用具や住宅改修に関する具体的な知識や技術を学ぶ機会は少ない。
 車いすの扱い、装具のつけ方、ポータブルトイレ設置の要不要の判断など、介護施設の現場において見よう見まねで覚えていったことも多いけれど、住宅改修などはほぼ未知の世界である。
 当事者や家族に相談されてもその場では答えられず、「業者の人に確認してみます」、「リハビリの先生(理学療法士)に聞いてみてください」などと答えざるを得ないこともしばしば・・・。

 そのへん情けなさを感じていたところ、「福祉住環境コーディネーター」という資格があることを知った。
 高齢者や障害者に住みやすい住環境を提案するアドバイザーを養成することを目的に、東京商工会議所が検定試験(1~3級)を実施している。
 福祉用具と住宅改修について体系的に一から学ぶことができる。
「よし、これを受けてみよう!」

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 いまのところ、この資格を持っていなければできないことは特にない(ケアマネの資格で包括できる)ので、資格を取ることが目的ではないけれど、受験料を払って期限を設けないとなかなか学習する気にならないのが、長年身についた悲しい受験生体質である。
 12月の2級検定試験を目指して、公式テキストなるものを購読、現在は過去問をやっている。
 ちょっとでも、利用者へのアドバイスに自信がつけば御の字。
 
 学習意欲を高めるためというわけではないが、先日、以前から気になっていた埼玉県さいたま市にある介護すまいる館に足を運んでみた。
 JR京浜東北線・与野駅西口から歩いて10分、福祉関連の事業所が集まっている「彩の国すこやかプラザ」の1階にある。

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与野駅西口

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彩の国すこやかプラザ

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介護すまいる館入口
福祉用具の情報提供・相談・展示・販売を行っている
埼玉県社会福祉協議会が運営


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食事に使われる福祉用具

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ずらっと並ぶ車いす(試乗もできる)

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介護ベッドや手すりのコーナー

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男性のソレを直接さしこむタイプのオムツ

 ソルティが介護施設で働いていた時に目にしたもの、手にしたもの、扱ったものが多く、その福祉用具と共にそれを使っていた利用者の顔や体の一部(!)が浮かんできて、懐かしい思いにかられた。
 一方、初めて見る福祉用具も多く、医療や工学の進歩とともに新しくより快適に使える福祉用具が、次々と生まれていることを実感した。
 とくに、今後現場での活用が期待されている介護ロボットのコーナーが一角に設けてあるのを見て、「介護スタッフの重労働が少しでも軽減され、肩や腰の痛みで仕事を辞めなくても済むようになればなあ~」と、離職経験者の一人として思った。
 現在50代のソルティが介護を必要とする頃には、イケメン介護ロボットまもる君のケアが期待できるかしらん?

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与野駅の近くの洋食店でランチ

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昼から優雅で贅沢でしょ(運動しなければ!)

 

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