- 死刑囚はどのような日常を送っているのか。
- 外部とのやり取りはどの程度許されているのか。
- 日々なにを思って過ごしているのか。
- 誰がどう死刑執行日を決めるのか。
- どのように受刑者に伝えられるのか。
- 死刑がどのように行われ、誰と誰が立ち会っているのか。
- 担当する刑務官はどのような思いを抱えているのか。e.t.c.
死刑制度の是非はいったん別として、米国では情報を公開することで議論が起き、それだけ死刑制度について考えることができる。一方、日本では密行主義で情報はほとんどなく、死刑が行われながらも議論は深まらない。死刑は国家が合法的に命を奪える究極の権力行使であるのにもかかわらず、多くの人々は無関心という状態が日常化している。
我々国民は、死刑に関する十分な情報を与えられないまま、死刑制度の是非を議論する環境に置かれている。
が、時々、「こいつだけは死刑もやむを得ない」と思わざるをえないような、残虐極まりない卑劣な犯行、個人的に許しがたいと感じる犯罪者が出現し、そのたび心が揺れ動く。
びっくりしたことに、本書にはなんとこの「名古屋アベック殺人事件」の加害者、それも6人の加害者のうちの主犯格Nが登場する。
その後、二審での6年余りに及ぶ審議の結果、無期懲役が下り、判決が確定した。
驚くとともに、いまや40代になるNという男の変化に戸惑った。
韓国のドキュメンタリー『赦し――その遥かなる道』(チョウ・ウクフィ監督)を観たとき、妻と子供を殺された父親が、その殺人犯の減刑運動をしているエピソードを知って、ぶったまげた。
世界各国の約7割が死刑を廃止、または事実上廃止しているなかで、日本は少数派に属している。そうした中、米国が連邦レベルでの死刑執行を停止したことから、先進国主体の経済協力開発機構(OECD)加盟国(38ヵ国)で通常犯罪に対する死刑執行を続けているのは、日本だけと言うことができる。
日本には日本独自の文化や風習や価値観がある、外国の目を気にしてそれに合わせる必要はないと言うのは一見カッコよいけれど、意地を張って国際連盟脱退の二の舞のようなことにならなければよいのだが・・・・。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損