2014年アメリカ映画。
原題はBoule vard
パリのシャンゼリゼや原宿の表参道のような「街路樹の植わった広い大通り」を言う。
それを反転させた邦題「秘密の道」は、「人生の裏街道」といった意味合いだろう。テーマに沿った邦訳ではあるが、なんだかスパイミステリーと勘違いさせる。
パリのシャンゼリゼや原宿の表参道のような「街路樹の植わった広い大通り」を言う。
それを反転させた邦題「秘密の道」は、「人生の裏街道」といった意味合いだろう。テーマに沿った邦訳ではあるが、なんだかスパイミステリーと勘違いさせる。
主演のロビン・ウィリアムズは2014年8月11日に自死した。
この作品および同年に公開された『余命90分の男』(フィル・アルデン・ロビンソン監督)が彼の最後の主演作となった。ソルティ未見であるが、『余命90分の男』というタイトルそのものが彼の近い死を予告しているようで怖い気がするし、「限られた時間で今までの人生を少しでも挽回するために行動に出る(ウィキペディア参照)」という内容そのものも、この『シークレット・ロード』と重なるものがあり、ロビンはいったいどんな思いで撮影に臨んでいたのだろうと思い馳せざるを得ない。
ロビン・ウィリアムズと言えば、20代に観た『いまを生きる』(ピーター・ウィアー監督、1989年)の教師役がもっとも印象に残っている。それが彼を知った最初でもあった。
名門高校でエリートとしての将来を周囲から押し付けられ、規則だらけの息の詰まるような寮生活を送っている生徒たちに、型破りな英語教師キーティング(=ロビン・ウィリアムズ)は詩の素晴らしさを教え、自分らしく生きることの大切さを訴える。彼の感化を受けた生徒の一人は、役者になりたいという自らの本心に気づくが、父親に猛反対され、命を絶ってしまう。学校側は生徒たちを扇動した責任をなじり、キーティングは退職に追い込まれる。クライマックスとなる最後の授業のシーン。校長の制止も聞かず、生徒たちは一人また一人と机の上に立ち、「Oh,キャプテン、マイ・キャプテン」と去り行くキーティングに呼びかける。
ロビン・ウィリアムズは間違いなく成功した俳優の一人であるし、『いまを生きる』に限らず彼の出演作品は、前向きなエンディングで観る者の心に希望を灯すものか、あるいは彼の本領とも言えるコメディが多いので、自殺は意外であった。
数ヶ月前から鬱病だったとか、レビー小体型認知でパーキンソン病だったとか、いろいろと原因は推測されている。ウィキペディアのプロフィールを読むと、20代の頃にアルコール依存症で苦しんでいる。おそらく、依存症とのたたかいの半生だったのだろう。
『シークレット・ロード』は、クローゼットの初老のゲイの物語である。
真面目で平凡な銀行員のノーランは、学生時代に知り合った妻ジョイ(=キャシー・ベイカー)と二人、何不自由ない穏やかな生活を送っている。子供はいないが夫婦仲はよく、友人にも恵まれ、職場では上司や同僚からの信頼も厚い。順風満帆の人生、安定した老後、誰が見ても幸福な男である。しかし、ノーランには誰にもいえない秘密があった。12歳のときに家族と遊びに行ったビーチで自分の同性愛傾向を自覚し、それ以後、それを押し隠して「ストレート(異性愛者)」のふりをして生きてきたのである。ジョイへの愛情は決して偽りではないけれど、真実、心(と体)の満たされる関係ではなかった。職場である銀行に訪れた若いゲイのカップル――二人は一緒に住む家のためのローンの相談をする――の姿に心乱れるノーラン。そんな折、上司から別の土地での支店長昇格の話を切り出される。
職場から家に帰る途中、ノーランは‘裏通り’に寄り道し、男相手に売春している青年レオとふとしたきっかけで知り合いになる。たちまち真剣な恋に落ちてしまうノーラン(うぶい!) 繰り返しレオを買い(セックスはせず!)、携帯をプレゼントし、自らの連絡先を教え、友人に頼みレオにまともな仕事を斡旋しようとする。年齢違い、属する世界の違う二人のリスキーな関係は、破滅の予感十分である。でも、ノーランの開かれた感情の蓋はもはや閉ざすことができない。寝たきり状態で入院中の父親の枕元で、ついに彼はカミングアウトする。「自分の心はビーチにいた12歳のままなんだ」
最終的には、職場にも妻にも友人にも関係がばれて、ノーランはすべてを失う。妻も、仕事も、出世も、評判も、安定した老後も、愛するレオさえも・・・・・。
ロビン・ウィリアムズの演技は真に迫っている。
おそらく生涯一番の演技であろう。観ていると、実はこれは脚本でも演技でもなくて、ロビンの本当の姿なのではないか、本心の吐露ではないかと思えてくるほどだ。
むろん、3度結婚して3人の子供を持ったロビンはゲイではなかったと思う。撮影時のロビン、すなわち死の直前のロビンが抱えていた心の陰影が、こうした彫りの深い見事な演技を可能にしたのであろうか。
「やり直すのに遅すぎることはない」ノーランは新しい土地で新たな人生を生き始める。
ロビン・ウィリアムズの冥福を祈る。

評価:B-
A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」
A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!