2005年韓国映画。
16世紀の李氏朝鮮の宮廷が舞台のいわゆるコスチュームプレイ(歴史劇)。
壮麗にして広壮な宮殿、豪華絢爛な調度の数々、目もあやなる衣裳。
そこにうずまく嫉妬と陰謀と秘密。
しかも、なにやらボーイズラブ的な、ジュネ的な、薔薇族的な、「組合」的な匂いが立ち込めて・・・。
と来たら、おのずから期待せざるを得ない。
一刻も早く観たいと思いながら、こんなにも見逃し続けたのは、昨今の韓流ブームのせいである。ドラマも歌もフィギアスケートも「韓国、かんこく、カンコク」の嵐なので、正直辟易しているのである。昨年の紅白の出場歌手もやたら韓国グループが目立っていた。在日出身の日本人歌手を含めたら、相当数の出場者が朝鮮系だったのではないだろうか。
芸は韓国なのか?
さて、この映画、韓国で大ヒットという評判を裏切らず、非常に面白かった。
役者の魅力、キャラクターの魅力、舞台背景の魅力、映像の魅力、ストーリーの魅力があいまって、物語世界にすっかり入り込むことができた。
映画というのは、莫大な金のかかる、無くてもいいような娯楽の最たるものだから、それにこれだけの人的・物的・精神的投資ができる現在の韓国のパワー、勢いを感じざるを得ない。
この映画の最大の魅力は、コンギル(イ・ジュンギ)というキャラクター設定にある。
美しく、やさしく、芸達者で、一見弱々しく、周囲の、とりわけ男達の庇護欲をそそる女形芸人。若かりし美輪明宏か玉三郎か。マツコデラックスってことは間違ってもない。
コンギルをめぐる二人の男、幼馴染で芸の相方のチャンセン(カム・ウソン)と、第10代朝鮮王朝国王のヨンサングン(チョン・ジニョン)の「恋のさやあて」こそが見ものである。
と言っても、そこに肉体上の同性愛はない。コンギルは、食べるためか、快楽のためかは問わず、男と寝ることができる男である。真性の同性愛者と言っていいだろう。(性同一性障害かもしれんが・・・・)
しかるに、チャンセンもヨンサングンも同性愛者ではない。二人の男ともコンギルと添い寝こそするけれど、男と女のようにして愛し合うシーンはない。これは何も韓国の映倫コードのためではないだろう。二人がコンギルに求めているものは、男が「女」に求めているものとは違うのである。
肉体的な関係を介在しない、プラトニック(文字通りプラトン的)なものだからこそ、それぞれの男のコンギルへの恋慕は、それぞれにとって他と代えがたい貴重なものとなり、互いの嫉妬は大っぴらに口に出せない性質のものであるがゆえに厄介なものとなる。
この複雑な様相は、コンギルの位置に普通の「女」を持ってくると明白になる。
コンギル(役の設定)がチャンセンの妻だったら、妹だったら、恋人だったら、物語はもっと単純に理解され、二人の男の心理も手に取るように観る者に読み取られるだろう。
ただ、その場合、映画自体は感動的かもしれないが、ありきたりなものとして、たいした印象は残さないであろう。夫婦愛、兄妹愛、男女の愛、そこには何も新しいものがない。男は「男」としてふるまい、女は「女」としてふるまい、一人の女をめぐる二人の男の攻防があるだけ。
コンギルが「男」であることによって、この物語は「恋愛もの」から「男を問う物語」へと変貌している。
狂うほど慕う相手が「女」だったら、「男」はあたりまえに伝統的な「男」のままである。相手が女形とは言え、まぎれない「男」であるがゆえに、チャンセンとヨンサングンのそれぞれの「男」が問いかけられ、揺さぶられ、あばかれる。コンギルは、「男」という固い砦に投げ込まれた時限爆弾みたいなものなのである。
その結果、ヨンサングンは自らの孤独と悲しみと内に押し殺した怒りとに向き合い、それを発散せざるを得なくなった。暴君の誕生である。
一方、チャンセンはコンギルとの間に長年育みつづけ、王によって引き裂かれたことで初めて認識が迫られることになった名状しがたい感情を、「芸」という共通する生きがいによって昇華させる。
クライマックスシーンで「生まれ変わっても芸人になりたい」と絶叫する二人の真意は、「生まれ変わってもお前と一緒になりたい」にほかならない。
三人の「男」が微妙なバランスを保ちながら、ぎりぎりのところで「男」を演じていく。その緊迫感と怖いもの見たさとが、強烈な磁力を生んで観る者を呪縛する。あたかも、映画の最初と最後に出てくる綱渡りのシーンのように。
評価: B-
参考:
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」 「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」 「未来世紀ブラジル」 「シャイニング」 「未知との遭遇」 「父、帰る」 「フィールド・オブ・ドリームス」 「ベニスに死す」 「ザ・セル」 「スティング」 「フライング・ハイ」 「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」 「フィアレス」 ヒッチコックの作品たち
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」 「ポルターガイスト」 「コンタクト」 「ギャラクシークエスト」 「白いカラス」 「アメリカン・ビューティー」 「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」 「ハムナプトラ」 「マトリックス」 「アウトブレイク」 「タイタニック」 「アイデンティティ」 「CUBU」 「ボーイズ・ドント・クライ」 チャップリンの作品たち
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」 「ニューシネマパラダイス」 「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ~。不満が残る。
「お葬式」 「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」 「パッション」 「マディソン郡の橋」 「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!