2012年メキシコ・フランス・ドイツ・オランダ制作。

 第65回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞している。
 元弁護士で国連でも働いたという新進気鋭のメキシコ人監督(1971年生まれ)の問題作である。
 『チョコレート・ドーナツ』を銀座で見たときに、ロビーでチラシを手にして、なんだか非常に気になったものだから、渋谷ユーロスペースに足を運んだ。


 なんとも不思議な映画である。
 一応、一つの家族――攻撃性を内に秘めた父親、きれいな母親、小さな可愛い娘、まだ指しゃぶりを卒業していない無邪気な息子――をめぐる日常を描いた、悲劇に通じる物語なのだが、物語はあちこちに飛ぶし、脈絡も説明もないし、登場人物同士の関係が分かりにくいし、SFやホラーを思わせる不条理なシーンが突如出てくるし、雷鳴とどろく牧場の長回しにイライラさせられたかと思えばポルノ映画ばりの過激な乱交シーンが出てきてバッチリ覚醒させられる。
 変な映画。
 そのうえ、カメラはまるで視覚異常を起こしたように、スクリーンの中心から一定距離の円の中ははっきりと映されているが、その外側はぼやけている。観ている自分の目が悪くなったんじゃないかと、まばたきを繰り返した。こんな技巧は観たことがない。 
 
 レイガダス監督は既存の映画文法を壊そうとしている。
 新しい表現の可能性を探っているのは間違いない。
 その意味で、本邦の天願大介『魔王』と通じるところがある。
 「物語の筋なんかもうどうでもいい。この魅力的な映像をずっと見させてくれ」
 そう思える瞬間があったのは事実だが・・・。

 

評価:C-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!