ソルティはかた、かく語りき

首都圏に住まうオス猫ブロガー。 還暦まで生きて、もはやバケ猫化している。 本を読み、映画を観て、音楽を聴いて、神社仏閣に詣で、 旅に出て、山に登って、瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

クリストファー・ノーラン

● エルム街のレオ 映画:『インセプション』(クリストファー・ノーラン監督)

公開:2010年
製作:アメリカ、イギリス
出演:
  • レオナルド・ディカプリオ
  • 渡辺謙
  • ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
  • マリオン・コティヤール
  • エレン・ペイジ
  • トム・ハーディ
  • キリアン・マーフィー
  • トム・ベレンジャー
  • マイケル・ケイン

 『ダークナイト』(2008)や『インターステラー』(2014)のクリストファー・ノーラン監督作品である。ソルティはこれが3本目だが、基本的に‘好き’な監督と言える。単なる「勧善懲悪」あるいは「自己V.S.世界」といった二元性の物語を超えた領域に、最新のCG技術を用いてファンタスティック&リリカルな映像を紡ぎだすところに好感が持てる。欧米風より東洋風、キリスト教的より仏教的なのだ。
 この『インセプション』もかなり深い。
 主人公コブ(=レオナルド・ディカプリオ)は、他人の夢に侵入し、無意識領域にある情報(=本人の隠された欲望や目覚めているときには思い出せない記憶e.t.c)を読み取る能力を備えている。それを逆手にとって、「標的の無意識に新たな情報を埋め込んで(incept)くれ」という依頼を受ける。依頼主は日本人のサイトー(=渡辺謙)である。
 標的の無意識に、「自分は自分の意思によって父から譲り受けた企業をつぶす」という情報を植えつける。覚醒した本人は、まったくの自分の意思と思って「会社をつぶす」。それがライバル会社のトップであるサイトーの利益となる。
 このシチュエイションが、「人は自分の意思によって人生上・生活上のいろいろなことを選択・決定していると思っているが、ほんとうは無意識によってあらかじめ決定されたことを、あとから‘自己(=顕在意識)’によって、あたかも‘自分が決定したかのように’追認しているにすぎない」という前野隆司の「受動意識仮説」を想起させる。あるいは仏教の‘諸法無我’を――。
 
 それ以外は、大スターたちが縦横無尽に活躍する普通のSFアクションである。
 我らが渡辺謙の英語力がどの程度のものか、英語のセリフによる演技力がどの程度のものか、残念ながらソルティには判別つかない。ただ、存在感だけは主役のレオを食うものがある。
 さすがだ。

 夢に侵入し、現実に影響を及ぼす。
 このコンセプトの古典的傑作は『エルム街の悪夢』であろう。



評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!




● 人類愛・・・。 映画:『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督)

2014年アメリカ、イギリス。

 原題(Interstellar)は「星の間」の意。
 169分という長尺のSF映画であるが、最初から最後まで退屈することなく楽しめた。テンポが良いこと、トウモロコシ畑や宇宙空間や未知の惑星をはじめとするヴィジュアルの美しさ、そこで起こる不可思議な現象(相対性理論やブラックホールに由来する)への興味が、観る者を引っ張っていく。逆に言うと、ドラマそのものは貧弱である。その点で、すぐ前に見た『オン・ザ・ハイウェイ  その夜、86分』と真逆の位置にある。
 
 波打つトウモロコシ畑と中年に差しかかった男の捨てられない野望という点では『フィールド・オブ・ドリーム』を想起し、人類愛と父と娘の愛情という点では『アルマゲドン』『コンタクト』と重なり、宇宙空間の神秘と科学性という点では『2001年宇宙の旅』『コンタクト』に追随し、ドラマの貧弱さでは『サイン』と同列である。‘ごった煮’という印象は否めない。
 人類救出という大事件をテーマとする大作の割りには驚くほど登場人物が少ない。(ここがまた『サイン』と通じる) その中で光るのは、アメリア・ブランド博士を演じるアン・ハサウェイの理知的な美しさ、主人公ジョセフ・クーパー(マシュー・マコノヒー)の幼少の娘マーフを演じるマッケンジー・フォイのクールな美少女ぶりである。あと、後半でマット・デイモンがマッドキャラで登場するのは望外の喜び。

 この作品は、「ワームホールを描写し、相対性理論を可能な限り正確にするために理論物理学者のキップ・ソーンが科学コンサルタントを務めた」(byウィキペディア『インターステラー』)そうである。
 なので、科学音痴の自分が難癖つけるのはおこがましいのだが、やっぱり見終わった後に腑に落ちないものがある。タイムトラベルものに不可避について回るパラドックス(矛盾)がこの作品でも生じている。
(注意:ここからはネタバレです。)

1. 主人公クーパーの娘マーフの部屋で、ポルターガイストと思える「不可思議な現象」が起こる。
2. その謎の解明をきっかけに元空軍パイロットのクーパーはNASAと接触するようになり、人類を救う使命を受けて宇宙に旅立つことになる。
3. 宇宙旅行の様々な試練難関をくぐり抜けた挙句(その間に地球では数十年が過ぎていた)、クルーのブランド博士を助けるため、クーパーはブラックホールに一人飛び込む。
4. ブラックホールの行き先は4次元空間で、幼い頃の娘の部屋の本棚の裏側に通じていた。
5. クーパーは、ブラックホールで手に入れた人類を救うために必要なデーターを、なんとか娘に伝えようと苦心する。
6. それが、はじめの「不可思議な現象」の正体だった。

 かいつまんで言えば、上記のような構成なのだが、1と6とでつながって時間がループしている。
 ここで頭をひねるのは、
A.「不可思議な現象」が起こらなかったら、クーパーが宇宙に旅立つことはなかった。
B.クーパーが宇宙に旅立たなければ、「不可思議な現象」も生じない。 
C.結果として人類が救われることもない。
 このAとBとCは因果的に動かせないだろう。ここには矛盾はない。
 次に、こう仮定する。
A’ 「不可思議な現象」を目にしても、クーパーが宇宙に旅立つことを何らかの理由で拒否する。(幼い娘の懇願に負けてとか)
B’ その場合、クーパーはブラックホールを通じて4次元空間に入り込むことはないので、「不可思議な現象」を起こせない。
 この仮定A’と結論B’は明らかに矛盾する。
 クーパーが宇宙に旅立たなければ、「不可思議な現象」はそもそも起こらない。
 つまり、「不可思議な現象」が起こった時点で、すでに「クーパーが宇宙に旅立つ」ことは決定付けられている。それ以外の選択肢はあり得ない。
 「すべてはあらかじめ決まっていた」と結論付けるほかない。
 
 「すべてがあらかじめ決まっていた」を「アリ」とするなら、ドラマが介在する余地はなかろう。人類は、あらかじめ運命づけられているストーリーを神(だか高度生命体だか)の書いた脚本どおりに仕方なく生きているだけの話になる。人類が滅亡するも救出されるも「別に・・・」ってことになりかねない。
 それともこれは、あらかじめ決まっている運命の中で、それでも懸命に愛し合い、夢を見、運命に抗って生きようとする人類の気高さを謳っている作品なのか。

 それにつけても、この種のアメリカ映画を観るといつも思うのだが、人類ってそれほどまでに生き残らなければならない‘種’なのだろうか。
 自分が親でないからそう思うだけ? 
 自分が人類愛を欠いているだけ? 


評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 
  

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