2012年アメリカ映画。

 ダニエルズ監督は1959年生まれの54歳。
 ニューヨーク市在住のアフリカ系アメリカ人。
 2009年に公開された『プレシャス』で日本では知られるようになった。(ソルティ未見)
 カミングアウトしている同性愛者でもある。(この映画でもゲイセクシュアリティが物語の一つの鍵となっている。)

 お気に入りのニコール・キッドマンが出演しているのでレンタルしたのだが、まあ、ニコールの女優魂に感嘆した。
 衆人(囚人)環視の場でマスターベーションするわ、恋愛感情を向けてくれる少年(ザック・エフロン)の体にオシッコをかけるわ、台所のシンクに手をついて激しくバックを責められるわ、ニコールには「美人女優としてのイメージを大切にしたい」なんてポリシーはまったくないのである。
 ほんと、素敵!
 むろん、「美人女優」であることより、どんな役でもこなせられる「演技派」であることを重視しているのだろうが、日本の女優でこの役をやれる人がいるだろうか?

 マスターべーションとオシッコ。
 この二大恥辱をスクリーンで披露した女優として、なんと意外なことに、吉永小百合がいる。
 吉永小百合は『天国の駅』(1984)で死刑囚を演じたときにオナニーをしてみせ、『映画女優』(1987)で田中絹代を演じたときに畳の上で着物を捲り上げて放尿してみせた。「清純派脱皮」を目指して役者根性を見せたものの、やっぱりイメージからの脱皮はかなわなかった。
 同じ美人女優で実力派。
 なのに、ニコールと小百合の差はどこにあるのだろう?
 ニコールは脱いだけれども小百合はついにヌードにはならなかった――ってところにあるのか。根強いサユリストらの作る結界が小百合の脱皮を阻むのか。
 思うに、ニコールは映画の中の登場人物になりきることができるけれど、小百合は何を演じても「小百合」になってしまうところに要因があるような気がする。演じる役柄(たとえば死刑囚、田中絹代、『鶴』のつう)よりも、演じている小百合のほうが前に出てしまうのである。
 親の反対を押し切って15歳年上の岡田太郎と結婚したことが示すように、平和運動や脱原発運動に力を入れ積極的な発言をしていることが示すように、吉永小百合は非常に強い「個」と自意識を持っているのだろう。
 清純派というのはお門違いで、実は無頼派なのじゃないだろうか。
 
 つい話が小百合に持っていかれたが、ニコールの熱演とザック・エフロンの白いパンツ一丁姿が印象に残る良質なサスペンスである。


評価:C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!