2005年カナダ映画。

 原題はLUCID
 「わかりやすい、明快な」という意味であるが、諧謔か冗談のつもりなのだろうか。内容的には最後の最後まで「わかり」にくく、「明快」ではない。
 邦題のスティクスとはギリシャ神話に出てくる冥界を流れる川のことである。「明快」と「冥界」とをかけたのか(笑)。
 この邦題からオカルト&ホラー映画を期待すると肩透かしを食らう。が、結末に至って、あながち見当違いなタイトルでもないな、と納得する。

 昨今流行の「ディック感覚」すなわち主人公のアイデンティティ(=現実感)の揺らぎと崩壊を物語の根幹の仕掛けとした「虚実転覆型ミステリー」である。
 「虚実転覆型ミステリー」という言葉は今自分が作ったものであるが、思いつく限りに挙げてみると、
 マトリックス、アザーズ、ネクスト、オープン・ユア・アイズ、バニラスカイ、ダークシティ、アヴァロン、13階段、ニルヴァーナ、アイデンティティ、シックスセンス、ナイン、そして本作『スティクス』と制作年が同じでなければどちらかがどちらかを剽窃したのではないかと言ってもいいくらい設定がよく似ているアメリカ映画『ステイ』(ユアン・マクレガー出演)・・・。

 先鞭をつけたのはなんだろう?
 『未来世紀ブラジル』あたりだろうか。
 自分はこの種の映画が結構好きなのであるが、それは「自我の崩壊」というテーマに「諸法無我」の仏教的世界観を見る思いがするからであろう。西洋映画にこういったテーマが頻繁に扱われるようになってきたのは、キリスト教的デカルト的世界観に対する懐疑が西洋社会および西洋人に蔓延してきていることの徴のような気がする。

 この手の映画の最たる特徴の一つとして、すべてを観終わったあとでもう一度始めから観たくなる、細部を確かめたくなる、というのがある。
 この映画もその通りで、ラストクレジットが出てから「メニュー」に戻って、再び最初から2倍速で全編を観るハメになった。そして、「なるほど、よくできているなあ」と感心した。

 考えてみたら、映画館でこれはできない話である。
 もちろん、映画館で同じ映画を二度観ることはできるが、一回目と同じだけの時間がかかってしまう。倍速はDVDだからこそ可能な操作なのだ。
 一粒で二度おいしい「虚実転覆型ミステリー」の流行は、ビデオデッキやDVDプレイヤーの普及と深い連関を持っているのだろう。日本発の映像機器が、西洋人の伝統的世界観を変えつつあると考えたら痛快である。
 
 この映画の教訓。
 「浮気はするな。居眠り運転はするな。」
 

 
評価:C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」       

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
   
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃいが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!