2009年フランス、カナダ、ドイツ、ベルギー。

 2092年、人類は科学技術の発展の末に、ついに永遠の生を手に入れた。
 その恩恵に浴することを拒否し、最後のモータル(死すべき人間)となった
118歳の老人ニモは、世界の注目を浴びる中、記者を前に自分の人生を振り返る。
 しかし、それは複数の人生からなるパラレルワールドであった。

 スタイリッシュな映像の美しさ。
 SFX技術の見事さと巧みな語り口。
 全体にセンスがよく、楽しめるものに仕上がっている。
 テーマそのもの「あのとき別の選択をしていたら、その後の人生はどうなっていただろう?」も、誰にとっても興味深いもので、選択の瞬間に戻っては何度もやり直されるニモの人生に「この選択の結果はどうなるんだろう?」という好奇心を持ってつきあってしまう。

 そう。ニモの語る複数の人生はどれも、「あのとき別の選択をしていたら」の「あのとき」から始まる枝のように分かれていくストーリーなのである。

 父と母が離婚した。どちらについていくべきか。父か母か。
 3人の女の子と恋をした。だれと結婚すべきか。エリスかアンナかジーンか。
 
 どの選択をしてもニモの人生は、あまり幸福にはつながらない。仕事に成功し、金持ちになり、プール付きの豪邸をもち、家族に囲まれても、虚しさに襲われて過去の選択を後悔している。

 さて、いったいどれが本当のニモの人生だったのか。ニモは記者をからかっているだけなのか。それとも、本当にパラレルワールドで複数の人生を送ってきた超能力者なのか。

 種明かしはここではしない。
 要は、どの選択にも、どの人生にも、意味がある。間違った選択、間違った人生なんかない。
 ということを伝えたいらしい。「らしい」というのは、そのあたりのテーマの収斂の仕方が曖昧というか散漫なのである。
 そこが惜しい。


 後悔とは「しなかった」ことに対する後悔である、という文句がある。
 名言であると思う。
 「した」ことであとで生じる後悔より、「しなかった」ことで生じる後悔の方がつらいかもしれない。まあ、何を「した」かにもよるが・・・。まさか人殺しを「しなかった」ことで後悔するとは思えない。
 おそらく後悔する人は、どんな人生を送っても、世間がうらやむどんなに良い境遇を手に入れても、そこで後悔するであろう。

 一番いい方法は、いっさい後悔をしないと決めることである。
 そのための一番いい方法は、「今に生きる」ことである。

 118歳までには、そうなりたいものである。



評価: B-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!