2012年フランス映画。
渋谷のイメージフォーラムにて観賞。
現代最高のソプラノ歌手と言われるナタリー・デセイと、気鋭の演出家ジャン・フランソワ・シヴァディエとが、がっぷり四つに組んだオペラ『椿姫』(byヴェルディ)の稽古風景を、ほぼ時間軸に沿って、つまりドラマの流れの順序で撮影し編集したドキュメンタリー。本番の舞台は、2011年のエクサン・プロヴァンス音楽祭で上演された。
文学と演劇と美術と音楽と映像とデザインとの総合芸術であるところのオペラの作られていく舞台裏を覗く面白さ、そして各々の分野で才能豊かなプロたちが、共同して一つのものを作り上げていく過程で当然のごとく起こる心理的緊張。「メイキングもの」の醍醐味を存分に味わうことができる。
とりわけ、現代のオペラでは、本番に至るまではやはり演出家こそが王様なのだと分かる。一家言ある個性的なプロたちの集団をまとめるコーディネート力、そして何世紀も前に書かれた脚本の古臭さを、現代人の感性と心理とでふるいにかけてもなお深い感動を呼び起こすことを可能にする演出(=解釈)のマジック。時代が経るごとに演出家が重要視されていくのも無理ない。
メイキングとしてのみ見てもこの映画はよく出来ていると思うが、それ以上の益がある。
あたかもオペラ『椿姫』の舞台を丸々観賞したような気持ちにさせてくれるのである。
一つには、最初に書いたようにドラマの流れに沿って『椿姫』の序曲から幕切れまでの主要な場面と主要な歌(アリア、デュエット、合唱)を見せて聴かせてくれるからである。『椿姫』を読んだことも観たこともない人がこの映画を見ても、どんなストーリーかを言い当てることができるだろう。
より大きな理由は、タイトルロール(主役)を演じるナタリー・デセイの圧巻の演技と歌にある。稽古でありながら本番さながらの迫真の演技を披露している。
まさか、『椿姫』のメイキングフィルムを観て涙を流すことになるとは思わなかった。
考えてみれば、本当に凄いことである。
正しい発声・発音、正確な音程で、譜面どおりに歌うだけでも大変な努力と才能が要る。そこに持って生まれた美しくよく響く声と端麗な容姿とがあれば、地方の劇場でデビューくらいはできるかもしれない。
頭角を現すためには、声で演技できなければならない。そのためのテクニックを身につけなければならない。それができて、ようやく世界の檜舞台へのパスポートを手に入れたってところだろう。
歌手(=音楽家)としての本分で言えば、そこまで辿り着けば合格といえるかもしれない。あとは運と経験を積むだけだ。実際、多くの歌手はこのレベルで安定飛行に入る。
ナタリー・デセイはしかしそこで止まらない。
女優としても一流なのだ。オスカーを貰ってもおかしくないほどの演技力である。
抜群の美声と驚異のテクニックと入神の演技。
世界最高と言われるのも当然であろう。
評価:B+
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!