ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

ジョン・フォード

● 映画:『戦火の馬』(スティーブン・スピルバーグ監督)

 2011年アメリカ。

 物語前半のなんとも美しい田舎の風景シーン、てっきりCGだと思っていたのである。スピルバーグもついにここまで来たか・・・とちょっとがっかりしながら観ていた。
 見終わったあとに撮影の模様を紹介した付録映像を見ると、イギリスでの屋外ロケなのであった。


 CG技術の進歩の弊害の一つは、圧倒的に素晴らしい実写シーンですら、いや素晴らしければ素晴らしいほど、「どうせCGだろ」と思わせてしまうところにある。CGかそうでないかを見抜ける目があればいいのだろうが、もはやそれを観る者に期待するのは困難なレベルまでCG技術は達している。映画の始まりで「この映画はCGを使っていません」とでも但し書きしてもらえばいいのか。
 CGだろうが実写だろうが、素晴らしいシーンは「素晴らしい」と素直に楽しめばいいのだろうけれど、どうも「CG=人工=ニセ物=手抜き」「実写=自然=本物=手間がかかっている」という固定観念から抜けられないでいるものだから、「CGだろ」と思った瞬間、映画そのものの価値を低く見てしまうのである。


 実際「CGだろ」と勘違いするほど、美しすぎる映像、できすぎる映像が続く。
 飽きさせないストーリーテーリングもキャラクターの魅力も申し分ない。スピルバーグはやっぱりジョン・フォードの正統な後継者である。
 ある意味、この映画は、かつて映画に出演したすべての馬に対するオマージュなのだろう。フォードの馬、黒澤の馬、西部劇の馬、時代劇の馬、戦争映画の馬、牧場の馬、農耕馬、競走馬、少年少女の友としての馬・・・・。


 スピルバーグは偉大である。
 だが、大人の映画は撮れない。
 どんなに重く暗く深いテーマを扱おうが、どんなに映画の中で人が殺されようが、子供に安心して観せられる。子供が面白がって観ることができる。
 意図的なのか、そのようにしか撮れないのか。
 たぶん、後者だろう。
 スピルバーグは、マイケル・ジャクソン同様、ピーターパン(=永遠の子供)なのだと思う。
 彼の映画はもう一つのディズニー映画である。
 



評価:C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 映画:『わが谷は緑なりき』(ジョン・フォード監督)

 1941年アメリカ映画。

 いい映画である。

 西部劇はあまり好きでないのでジョン・フォード作品は敬遠していたのだが、これは西部劇ではないので借りてみた。
 やはり、ジョン・フォードは偉大だ。素晴らしい。これぞまさしく映画だ、と最初から最後まで唸りながら観ていた。

 題材の扱いも上手い。
 ヒュー少年の成長物語を軸に、ヒューを取り巻くモーガン一家の物語、ヒューの姉であるアンハラド(モーリン・オハラ)と町の牧師グリフィードとの悲恋物語、そしてモーガン家の男達が働く炭坑とその盛衰に影響され変わってゆく町の物語。いくつもの物語を交差させ、緩急をつけて、感動を生み出していく手腕が見事である。これを観ていると、スピルバーグはジョン・フォードの正統の後継者なのだなあと納得する。
 とりわけ、炭坑町の光と影の描き方が秀逸である。
 町全体に活気のあった古き良き時代が、ストライキを決行せざるを得ないような労使問題を通過して次第に廃れていき、仕事を失った人々が町を離れていくに至る。それに合わせるように、モーガン一家も両親への愛と敬意により結ばれていた子供たちが、父親と衝突して家を出て行き、最後は故郷を離れ散り散りになってしまう。歌と信仰によって固い絆で結ばれていたかに見えた町の人々も、実は心の中には不寛容と噂話を簡単に信じる悪意を抱いていることが暴露される。かくして、最後は炭坑に爆発が起こり、モーガン家の大黒柱たる父親は亡くなっていく。
 あたかも古き良き時代の終焉を告げるように。
 ヒューの少年時代の終わりを告げるように。

 よく考えると、ヒュー少年の思い出はつらく悲しいことばかりである。「わが谷は緑なりき」とは美化しすぎではないか?

 炭坑のオーナーの息子と結婚したアンハラドが立派な車に乗って町を出て行くシーン。
 祝いの歌を歌う町の人々の背後で一人離れて物陰から姿を現すグリフィード牧師。二人は本当は愛し合っているのだ・・・。
 普通の凡庸な監督ならグリフィードのアップを撮るだろう。嫉妬とも後悔とも哀しみとも諦めとも悲痛ともつかない表情のグリフィードを、あるいは木の枝をつかんで震える手を撮るかもしれない。スピルバーグでさえそうするかもしれない。
 ジョン・フォードはそんなことしない。
 ただ、物陰から出てきて立ちすくむ姿を、大衆の背後にさらっと撮すのである。
 このもったいないと思えるほどの慎み深さ。抑制。
 この演出姿勢こそが、古き良き時代の良心であろう。大人になったヒューが「わが谷は緑なりき」と懐かしがるのも無理もないと観る者を納得させる魔法であろう。



評価: A-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


 

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