1953年アメリカ映画。

 聖衣とは、イエス・キリストが処刑されたときに着ていた衣のこと。
 古代ローマ帝国の護民官(官僚)であるマーセラス(=リチャード・バートン)は、時の帝王ティベリウスの後継ぎであるカリギュラの不興を買いエルサレムに飛ばされる。そこで出会ったのは、神の子として人民から崇められ慕われているイエス・キリスト。マーセラスは、ピラト総督の命によりイエスを磔刑に処する。そのときから彼の心の苦しみが始まる。

 マーセラスの回心とキリストへの帰依が主たるテーマであるが、『ベン・ハー』(ウィリアム・ワイラー、1959年)のように‘主’との感動的な遭遇シーンがあるわけでなし、手に汗握る戦車競争シーンが用意されているわけでなし、なんか中途半端な筋立てである。
 しかも、主役を務めるリチャード・バートンとジーン・シモンズに華がないのは致命的。二人とも容姿は整っているし、誰もが認める演技達者である。だが、少なくともこうした歴史超大作で主役を張れるほどの華がない。リチャードはやはりリズ・テーラーあってのアントニウスだし、ジーン・シモンズにいたっては代表作が思い浮かばない。

 CGを使わないセット撮影の贅沢とそれを可能にした50年代ハリウッド=アメリカの威信を実感する映画である。それ以上ではない。

 にしても、イエス・キリストとカリギュラ帝が同時代に生きていたとは知らなかった。
 カリギュラと言えば、自分の世代ではなんと言ってもティント・ブラスの映画『カリギュラ』(1980年)である。表は歴史超大作の顔をして、その実はまったくのハード・コア・ポルノ。ぼかしのないスクリーンを見ようと、日本から大勢の男達が「カリギュラ観賞ハワイツアー」に参加したのが記憶に残っている。
 その後しばらくしてから日本で再映された‘ぼかし入り’を某成人映画館で観たのだが、「別にどうってことはなかった。」(いつだってそうだ。「チャタレイ」も「エマニュエル」も「エーゲ海に捧ぐ」もなんであんなに騒いだのかよくわからん。)
 ‘猥褻’というのが「陰毛が見えた」とか「陰部がバッチリ見えた」とか「挿入場面のアップ」とか「乳首が見えなければ脱いだことにならない」いった即物的・肉体的レベルにおいて語られるのは、本当に小学生レベルだと自分は思うのだが・・・。
 世の男どもよ。『マドモアゼル』を観なさい。
  
 
評価:C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!