- レッジェーロ(あるいはスーブレット) = キャスリーン・バトル in 『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナ
- コロラトゥーラ = エディタ・グルベローヴァ in 『魔笛』の夜の女王
- リリコ = ミレッラ・フレーニ in 『ボエーム』のミミ
- リリコ・スピント = レナータ・テバルティ in 『アイーダ』のタイトルロール(主役)
- ドラマティコ = ビルギッド・ニルソン in 『トリスタンとイゾルデ』のイゾルデ
通常、ソプラノ・ドラマティコ・タジリタとよばれるこれらのソプラノの声には、18世紀ナポリ派オペラの伝統をひく華麗で軽快な装飾歌唱を可能にする軽やかな運動性(18世紀にはカストラート歌手が、19世紀初めの時期にはコロラトゥーラ・ソプラノがそれを担当した)と同時に、19世紀後半以後のイタリア・オペラでその音楽のよりドラマティックな表現力を担うことになる、もっと力強く分厚い響きをもったソプラノ・ドラマティコ、ないしはリリコ・スピントの特性とが同居していて、いいかえればこれらのオペラのプリマ・ドンナはスポーツカーの敏捷さとダンプカーの重量とを兼備することが要求されるのである。(ゴチックはソルティ付す)
まったく相反した2つの声質を兼ね備えた奇跡の声がソプラノ・ドラマティコ・タジリタなのである。
驚いたか!
p.s. マリア・カラス以降のソプラノ・ドラマティコ・タジリタの最大成功者は、現役のディミトラ・テオドッシュウらしい。(ソルティはまだ彼女のノルマを聴いていない) カラスやスリオティスと同じギリシャ出身というのが面白い。