1950年アメリカ映画。

 この年のオスカーの作品賞、監督賞、脚色賞、助演男優賞を受賞している名作である。
 面白いことに主演女優賞は獲っていない。
 これは、この作品の中で新人女優イブ・ハリントンを演じたアン・バクスターと、ベテラン女優マーゴ・チャニングを演じたベティ・デイヴィスの二人ともが主演女優賞にノミネートされたため、票が割れた結果だと言う。オスカーは『ボン・イエスタディ』という日本未公開の作品で主演したジュディ・ホリデーという日本ではほとんど無名な女優に持って行かれた。舞台裏でも作品の中同様、女優同士の火花を散らす闘いが繰り広げられたのだ。いや、違う。舞台裏を写したのがこの作品であった。

 しかし、これは誰がどう見てもベティ・デイヴィスに軍配は上がる。
 今では伝説の域に達した大女優そのものの風格に加え、役作りが素晴らしい。
 わがままで情が強くてプライドが高い、一見イヤ~な女だけれど、好きな男の前では素直になれない、どこか可愛い気があって憎めない、魅力的な女優像を造り上げるのに成功している。
 対するアン・バクスターも、野心を隠した計算高い若い女優の卵を見事に演じている。この役が弱いと、この作品はベティの印象が強すぎて物語が成り立たなくなってしまうから、その意味で先輩役者と「堂々と渡り合った」演技と言える。ノミネートは不思議ではない。
 両者がっぷり四つに組んで見ごたえのある作品に仕上がっている。140分近い上映時間なのだが、長さをまったく感じさせなかった。脚色賞もむべなるかな。
 ただ、このアン・バクスターという女優は顔で損している。きれいだけれど特徴がなくて、まったく印象に残らないのだ。次に別の作品で見ても彼女と気がつかないだろう。デートリッヒ風のバンプ(妖婦)顔を持ったベティ・デイヴィスに並んだら、貫禄負けする前に、顔で負けている。これが舞台ならばまた違った競り合いになるのかも知れないが、アップの多い映画は「顔が命」である。

 ところで、タイトルのイブとはもちろん、瞬く間にスターダムにのし上がったイブ・ハリントンの隠れた素顔をあばくという意味ではあるが、今ひとつの意味は、イブ=女性である。
 スターになるために「女」を捨てたけれど、やっぱり「女」であることに生き甲斐を求めるマーゴ、スターになるためには「女」も利用するイブ、主婦として幸福に暮らしながらもどこか満たされずスター性にあこがれ続けるカレン。3人のイブ達の姿を通して、「女」を描いた作品と言える。
 そこで語られる「女」とはなにか。

 演出家の恋人とのこじれた関係に悩むマーゴ(ベティ・デイヴィス)が、親友であるカレンにしみじみと漏らすセリフが「総て」である。

 私たちって、遅かれ早かれ「女」に戻るしかないのよ。どんな仕事をしていても、国際的なVIPになってもどんなに有名になっても、結局、食事する時や寝る時に夫が一緒じゃないと「女」になれないのよ。




評価: B+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!