ソルティはかた、かく語りき

首都圏に住まうオス猫ブロガー。 還暦まで生きて、もはやバケ猫化している。 本を読み、映画を観て、音楽を聴いて、寺社仏閣に詣で、 旅に出て、山に登って、瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

マイケル・ファスベンダー

● 映画:『それでも夜は明ける』(スティーヴ・マックイーン監督)

2013年アメリカ・イギリス映画。

 『SHAME シェイム』の監督によるアメリカの奴隷制をテーマにした歴史ドラマ。
 第83回アカデミー賞の作品賞を受賞している。 

1841年、ニューヨーク州サラトガで‘自由黒人’として妻子と共に平和に暮らしていたヴァイオリン奏者であるソロモン・ノーサップ(=キウェテル・イジフォー)は、奴隷斡旋者の甘言に乗せられて故郷を離れワシントンに出向く。その晩、薬漬けにされたソロモンは、気がつくと手枷足枷はめられ監禁され、そのまま南部の綿農園に奴隷として売られてしまう。それから身元が保証され解放されるまでの12年間、彼を待ってたいたのは過酷な奴隷生活であった。

 まず、‘自由黒人’というのにちょっと驚いた。
 が、奴隷制度に対して異を唱える北部の州では、自由な身分の黒人たちが存在していたのである。この映画の時代背景である1840年時点、合衆国における黒人の人口比率は17%、そのうち13.4%が自由黒人であった。(逆に言うと、黒人の9割近くが奴隷だった)

 この映画は、愛する家族と共に幸福な生を送っていた男が、一夜にして地獄へと突き落とされた衝撃のストーリーである。
 なにが衝撃的と言って、この話が実話であるという点に尽きる。
 これは、1853年に発表されたソロモン・ノーサップによる奴隷体験記『Twelve Years a Slave(12年間の奴隷生活)』をもとに制作された映画なのである。
 ソロモンは、あらゆる権利を剥奪され、他の黒人たちと共に南部ルイジアナ州の農園で酷使される。オーナー家族や支配人への絶対服従、日の出から日没までの過酷な労働、容赦ない暴力と罵倒、不衛生な住居、性的虐待、プラットという名前に変えさせられてオーナーの都合で物品のように左から右へと売られる。それは家畜同然いや家畜以下の生であった。

 アメリカ独立宣言(1776年)?
 全ての人間は平等に造られている?
 生命、自由、幸福の追求の権利?
 関係ない。
 人権はあくまでも「人」の「権利」であって、黒人は「人」ではなくて「物」だったのである。

 キリスト教?
 隣人愛?
 神の前の平等?
 関係ない。
 そもそも奴隷制を肯定する根拠として持ち出されたのはほかならぬ「聖書」であった。
 映画の中でも、最初にソロモンを買ったバプティスト派の聖職者ウィリアム・フォード(=ベネディクト・カンバーバッチ←イギリスBBC製作のテレビドラマ「シャーロック」でホームズを演じて人気沸騰)が奴隷たちを庭に集めて聖書を読み、説教するシーンが出てくる。
 なんたる滑稽! なんたる倒錯!
 
 ソロモンが解放され手記を発表したのは1853年。
 その前年にストー夫人が『アンクル・トムの小屋』を著した。
 南北戦争が始まったのが1861年。
 リンカーンによる奴隷解放宣言が1863年。
 合衆国憲法修正第十三条の成立により公式に奴隷制度を終わったのは1865年。今からちょうど150年前である。
 このような野蛮な文化がほんの150年前まで存在していたのである。
 アメリカには、日本を含む他国の過去の歴史における人権侵害や虐待をとやかくいう権利も資格もまったくないはずである。
 一方で、黒人大統領誕生をわずか150年で実現させてしまう--オバマは奴隷の子孫ではないらしいが――ところは、変化(Change)の許容に対するアメリカ人のすごいところである。30年前、自分は日本で女性総理大臣が誕生するより、アメリカで黒人大統領が誕生するほうが100年は遅いと踏んでいたのだが・・・。

 製作者および出演者として、ブラピが関わっている。




評価:B-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」       

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● 映画:『プロメテウス』(リドリー・スコット監督)

 2012年アメリカ映画。

 人類の起源の謎に迫る、という煽り文句に惹かれ結構楽しみに観始めたのであるが、凡庸な結末でがっかりであった。これなら『フォース・カインド』(オラントゥンデ・オスサンミ監督、2009年)のほうが気が利いている。

 人類がある目的のために「何者か」によって創られた、というテーマを題材とする作品に惹かれるのはなんでだろう?
 人類の存在理由、換言すれば「生きる意味」について思考することの意味(の無さ)を自分に悟らせるからだろうか。
 だから、崇高にして遠大な目的で人類が創られたとするストーリー(たとえば、宇宙が自分自身を見るために惑星と生物の進化の果てに人間を創造した)なんかより、人間の発する気を食料とする宇宙人がいて人間牧場として地球は存在している、というブラックジョーク的なストーリーのほうが自分は好きである。変に自分たち人類のみを高等生物として持ち上げるスピリチュアル的傲慢さに一矢報いたいという偏屈なところがある。
 実際、人間は地球の主役でも勝者でもない。ごきぶりや細菌の方が長く広く地上に存在しているし、仮に人類を現在の地上の支配者と考えたとしても、生存年数で言えばかつての王者である恐竜の百分の一にも達していない。今、地球が滅びたとしたら、どこかの惑星の宇宙史研究家はこう記すだろう。
 「この地球という惑星でもっとも勢力を奮った生物はウイルスと恐竜であった」
 
 読んだばかりの『銀河ヒッチハイクガイド』も実は隠れたテーマとして地球創造の謎を扱っている。この謎の答えはあっと驚くような奇抜なもので、著者のセンスの高さは尋常でない。この本では地上の真の支配者も登場するが、その正体もあっけに取られる。天才性では、リドリー・スコットはダグラス・アダムズの足元に及ばない。
 

 映画自体は凡庸でつまらないが、ロボット役のマイケル・ファスベンダーは見物である。『SHAME シェイム』を観たときは感じなかったが、この人、イアン・マクレガーに似ている。ともに巧い役者である。

 最後まで観ると、これは人類の起源の謎というよりも「エイリアン」の誕生秘話だったのだということが分かる。



評価:D+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」      

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 

● 映画:『SHAME シェイム』(スティーヴ・マックイーン監督)

 2011年イギリス映画。

 主人公ブランドン(マイケル・ファスベンダー)は、仕事と睡眠の時以外はセックスのことばかり考えているか、行きずりの女とのセックスを繰り返している30代のハンサムエリート。精力絶倫、エネルギッシュ、スケコマシ、プレイボーイ、ドン・ファンと形容すれば羨ましいような気もするが、正味のところは強度のセックス依存に捕まっている孤独な中年男である。
 彼が求めるのは単純にエロティックな経験であり、肉体的な快感であり、よりアブノーマルな刺激である。相手との親睦やあたたかい触れ合いや結婚・家庭を視野に入れた関係の構築・持続ではない。それを求めるには彼には何かが足りない。あるいは何かが過剰だ。
 そんなブランドンのもとに可愛い妹シシー(キャリー・マリガン)が飛び込んでくる。
 シシーもまたどこか病んでいる。誘われれば簡単に男と寝てしまい、すぐに相手に惚れてしまう。相手に遊ばれていることにも気づかず、幻想の愛情関係にはまってしまう。裏切られ、捨てられて、自傷行為を繰り返す。

 シシーの登場によってブランドンの生活が振幅し始める。

 ブランドンが妹の存在を煙たがるには理由がある。
 二人は、性愛について一見正反対の態度をとっているように見える。ブランドンは一時的で肉体だけの表面的な関係を求め、シシーは長期的な深く濃い関係を求めている。ブランドンから見れば妹は男にだまされやすい愚かな女(マリリン・モンロータイプ)で、自分の生活もコントロールできないダメ女である。
 だが、ブランドンとシシーは「同じ穴の貉」なのである。「依存」という一言で二人はつながっている。
 ブランドンがシシーを敬遠するのは、妹の中に見たくない自分の姿を見るからである。受け入れたくない(二人に共通する)悲惨な過去を見るからなのだ。
 シシーは鏡なのである。

 そういった視点からこの映画を観た時に、ポルノ映画ばりに出てくるあまたのセックスのどれ一つも、エッチでもエロチックでも扇情的でもいやらしくも美しくもないことに観る者は気づく。
 ブランドンがどこかのホテルのベッドの上で行きずりの女二人と汗みどろになっている姿は、あたかも苦行僧のようなのだ。エクスタシーに達する彼の表情は快感のそれよりも苦痛のそれである。ブランドンにとってセックスとは自分を痛めつけるため、自分を罰するための手段にほかならない。
 彼の自虐傾向はとどまるところがない。バーで彼氏のいる女にちょっかいを出し卑猥な言葉を投げかけ、挙げ句の果てに彼氏から殴られる。ゲイでもないのにゲイ達の集うハッテンバに行き、暗がりのなか獣のように互いの体を貪り合う男達に混じって、見知らぬ男にヌいてもらう。
 その姿はまるで小さな男の子が「やっぱり僕ってこんなに悪い子だから、パパとママに嫌われるのも仕方ないんだ」と自分自身に証明しているかのようである。


 シシーもブランドンも容易にはこの筋書きから抜け出すことができない。ブランドンの変容なり癒しなりをそんなに簡単に描く監督など信用できようか。
 その点で、スティーヴ・マックイーン監督は信用できる。(次回作はブラッド・ピットとマイケル・ファスベンダー共演らしい。楽しみだ。)
 この映画の最初と最後のシーンにおいて、ブランドンは同じ地下鉄駅のプラットホームで電車を待っている。それは地下の世界のループから抜け出すことのできない彼の心の軌跡を暗示しているかのようである。



評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
       
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


 

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