ソルティはかた、かく語りき

首都圏に住まうオス猫ブロガー。 還暦まで生きて、もはやバケ猫化している。 本を読み、映画を観て、音楽を聴いて、神社仏閣に詣で、 旅に出て、山に登って、瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

ロベルト・ロッセリーニ

● 映画:『ドイツ零年』(ロベルト・ロッセリーニ監督)

1948年イタリア映画
78分


 敗戦直後(0年)のドイツに暮らす一家族を描く。
 瓦礫だらけのベルリン市街で、一家4人は数家族による肩身の狭い共同生活のなか、その日暮らしの生活を送っている。病気で寝たきりの父親は口癖のように「死にたい」と繰り返す。長男は元ナチ党員であることがばれるのを怖れ、定職につかず家に隠れている。長女は夜のキャバレーで戦勝国の兵士の相手をして煙草を貰い、それを売って小銭を稼いでいる。仲間からは売春をすすめられるもそれはできない。結果、次男で末っ子の12歳のエドモンドが一家の稼ぎ頭として責任を背負い、様々な賃仕事をしている。
 エドモンドは元ナチ党員である教師エニングと出会ったことから、だんだんと悪い影響を受けていく。「弱い者は強い者に滅ぼされるべき」と唱えるエニングに感化され、ある日、エドモンドは父親の毒殺を図る。そして・・・

 ホロコーストのような空前絶後の悪行を犯したドイツ人が、戦後どんなに苦しもうが自業自得、とつい思いがちなところであったが、物事は複眼で見る必要がある。心の中でナチに反対していた善意の庶民はもちろん沢山いたのである。ファシズム下では反対の声など上げられようもない。
 少なくとも子供には戦争責任はない。
 その子供が、廃墟と化した街と荒廃した人心と貧苦の中で、悪に染まっていく。ナチ政権下、反共・反ユダヤ主義に染められたキリスト教もいまや何の助けにもならない。

 第2次大戦中、日本と並びナチスドイツと同盟国だったイタリアの映画作家だったロッセリーニ。我が木下惠介同様、戦意高揚映画も撮っていて(撮らされていて?)、ファシスト党杯というのを受賞している。

 どんな思いでこの映画を撮ったのだろう?


お盆飾り







 
 
  
 
 
 
 

● 映画:『無防備都市』(ロベルト・ロッセリーニ監督)

イタリア3大巨匠 1945年イタリア映画。

 「映像と音の友社」(http://eizo-oto.jp)というところから出ている「イタリア映画3大巨匠名作集」(DVD10枚組)を購入した。
 3大巨匠の10作品とは、
 ヴィットリオ・デ・シーカ
  自転車泥棒
  靴みがき 
  終着駅
  ウンベルトD
 ルキノ・ヴィスコンティ
  郵便配達は二度ベルを鳴らす
  ベリッシマ
 ロベルト・ロッセリーニ
  無防備都市
  ドイツ零年 
  戦火のかなた
  神の道化師、フランチェスコ  
 
 パッケージの謳い文句のまま「戦後社会の現実を描いたネオレアリズモの傑作」ぞろいである。(『神の道化師』は異質だが・・・)
 この10本がなんと1,980円で観られるというのだから、お買い得である。
 万歳、著作権の消滅!

 名前と評判だけは知っていたがこれまで観る機会のなかった作品が結構ある。
 この『無防備都市』もそうであった。

 第二次大戦の末期、ドイツ軍によって占領されたローマでレジスタンスの活動に従事する人々の姿が、ドキュメンタリーフィルムを見るような緊迫感のうちに描き出される。実際にローマが解放されたのは、この映画が公開される前年(1944)の6月なのだから、なまなましい記憶がローマの街にも製作陣にも役者にも張り付いていたに違いない。

 数々のシーンが印象に残るが、自分が見ていて一番つらいのはドイツ軍による拷問シーンである。
 捕らえたイタリア人の指導者を、ゲシュタポがレジスタンス組織の詳細を吐かせようと拷問する。裸の上半身に鞭をふるい、眼を潰し、爪をはがし、ガスバーナーで火責めする・・・・。
 拷問を受けている当人の姿を、隣室から仲間である神父にも見せて、神父の口も割ろうと画策する。
 二人とも仲間を売るより死を選ぶ。

 こういう場に自分が置かれたらどうするだろう?
 自分は痛みに弱い。歯医者では、ちょっとした処置にも麻酔をお願いしてしまう。
 拷問道具を前にしたら、あることないことベラベラ喋ってしまいそうな気がする。(Mの人は拷問に強いのだろうか?)
 自分がレジスタンス組織に所属するようなことがあったら、「重要なことはいっさい知らせないでくれ」と仲間に頼むだろう。知らなければ、裏切ることもない。

 それにしても、拷問できる精神とはどういうものなのだろう?
 徹底したサディストか。
 
 SMだけは苦手である。




評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
      
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● アッシジ追想 映画:『神の道化師、フランチェスコ』(ロベルト・ロッセリーニ監督)

 1950年イタリア映画。

 聖フランチェスコと言えばアッシジ、アッシジと言えば聖フランチェスコである。

 かれこれ20年になるだろうか。数ヶ月のイタリア旅行の最中に訪れたアッシジの平和で美しい田園風景は今も折に触れて思い出す。
 ローマ(バチカン)、ナポリ(ボンベイ)、シチリア、レッジョ・カラブリア、バーリ、アンコーナと列車で回り、若さに恃んで毎日朝から晩まで重いリュックを背に街を歩き回っては、『地球の歩き方』に載っている観光名所を巡り、有名な教会や美術館や博物館をしらみつぶしに訪ねた。身体の疲れと見知らぬ土地を歩く緊張感とで、南イタリアを脱したときは身も心もクタクタであった。アッシジに向かう列車の中ではグロッキー状態、同じコンパートメントの地元の人に話しかけられても、もはや返事する気力も、イタリア旅行するには欠かせないsimpaticoな(親しみやすい)笑みをつくる余裕すら失われていた。
アッシジ アッシジ駅からオリーブ畑の彼方にこんもりと盛り上がって見えるアッシジの街は、他のイタリアの街とは違う不思議な穏やかさに包まれていた。

 一週間ほど滞在しただろうか。春の喜びをさえずる小鳥たちに囲まれて、城砦のてっぺんの丘に仰向けになり、柔らかな陽光を浴びながら、大理石の家々と教会の塔と周囲に広がるもやに霞む田野を眺めていると、旅の疲れが癒されていくのを実感した。

 この感覚ははじめてではなかった。
 同じような経験を数年前のインド旅行で、ある町に滞在していたときにも感じたのである。
 そう。アッシジはブッダガヤに似ていた。

 アッシジは聖フランチェスコが生まれ育ち、回心し、伝導をはじめた土地である。ブッダガヤは釈迦が菩提樹の下で悟りを開いた土地である。どちらも聖人が誕生した土地で、どちらも喧騒を離れた田舎であり、世界中から巡礼が訪れる信仰の地である。雰囲気が似てくるのは不思議ではないのかもしれない。
 しかし、アッシジの持つ雰囲気は、カトリックの中心たるバチカンや、ミラノの大聖堂をはじめとするイタリアの有名な教会で感じた雰囲気とは質が違っていた。そこには、旅の間、自分を精神的に疲れさせたキリスト教の持つ厳格で他罰的で父性的な空気がなかった。あらゆるものを優しく受け入れるような母性的雰囲気、あえて言うならば「慈悲」の気に満ちていたのである。
 伝記に見る聖フランチェスコもそのような人であったらしい。動物たちと会話するなど、キリストよりブッダに近いような気がする。

 もう一つ。聖フランチェスコと言えば、映画『ブラザーサン、シスタームーン』(フランコ・ゼフィレッリ監督、1972年)である。
 裕福な家に生まれ放蕩三昧の生活を送っていた青年フランチェスコは、戦争で負傷したのをきっかけに回心する。家も財産も家族も世間も捨てて乞食同然の修道生活に入る。理解者は少しずつ増えていくものの、既存の教会組織からの様々な妨害にあう。疑問を抱いたフランチェスコは自らの信仰の正しさを確かめるため、ローマ法王に会いに行く。
 バチカンでローマ法王に謁見する場面は最大のクライマックスである。インノケンティウス3世を演じるアレック・ギネス(『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービ)の抑えた演技が実に素晴らしい。
 ほぼ史実に沿った筋書きだと思うが、ゼフィレッリ監督の男色趣味横溢でフランチェスコ役のイケメン俳優を衆人環視のもと丸裸にしたり、あちこちで端役の美青年をショットで抜いたり、なにかと‘ルネサンス’チックである。
 また、映画が撮られた時代の香りが全編から漂っている。体制への反抗、伝統・権威の否定、腐った大人社会に対する嫌悪と怒り、自然回帰を目指す原始共同体・・・・すなわちヒッピー文化である。
 そういうカラーはあるが、『ブラザーサン、シスタームーン』は心が乾いたときに自分が見る映画の一つで、DVDを所有している数少ない映画である。


 ネオレアリズモの巨匠ロッセリーニは、ローマ法王との謁見によって正式に伝道を認可されたフランチェスコが、故郷に帰ってきたシーンから撮っている。
 つまり、凡人が聖人となるドラマチックな過程ではなく、すでに聖人となったフランチェスコとその仲間たちの貧しくも敬虔な信仰生活の様子をいくつかのエピソード仕立てで描いている。ゼフィレッリとくらべると、実に淡々と、あおらずに、誠実に、ときにユーモラスに。フランチェスコ自身よりも、むしろ弟子たち(「兄弟」というのだろうか)のほうが目立ってさえいる。
 アッシジの草原をみすぼらしい修道服姿で走り回る兄弟たちの姿は、はしゃいでいる子供のように無垢なる喜びに満ち溢れ、軽やかである。

 人が為しうるもっとも美しい生活とはこのようなものかもしれない・・・・と思う。



評価:B+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!



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