2010年公開。
平成の世も20年以上過ぎた今になって、これほど‘純’な、これほど‘ストイックな’これほど面白い映画が出るとは思わなかった。
この数年の日本映画の中のピカイチである。
加えて言えば、主役を演じる峯田和伸にどんなものであれ主演男優賞を、脇を演じるYOUに助演女優賞を与えることのできなかった日本映画界の鈍感さ、不甲斐なさは、日本映画の歴史に泥を塗る破廉恥である。
峯田和伸という俳優(兼ミュージシャン)については何も知らなかったが、役者としての才能はデビュー当時の窪塚洋介や松山ケンイチを凌駕していると思う。これからメキメキと頭角を現してくることだろう。
原作は花沢健吾が「ビッグコミック・スピリッツ」に連載した青年マンガなので、物語そのものは「単純で紋切り型でご都合主義でたわいない」。一言で言うと「馬鹿」ということになる。
だが、その性質は「男」そのものを表す。男とは、「単純で紋切り型でご都合主義でたわいない」馬鹿な生き物だから。
昨今の男は病んでいて、さまざまな関係のしがらみの中で、あるいは「上手く」生きようと立ち回るうちに、原始的な気質を見失ってしまう。いったい、彼女に見せる「標準的な(マニアックでない)」アダルトビデオを友人に借りに行くため、夜中に3時間も自転車をこぐ馬鹿(=男)がいまどこにいようか。しかも、借りたビデオの中味は違っていて「獣姦もの」だったというオチ。
主人公タニシは、29歳にして「男」の純粋な核を体現する存在である。
だから、周囲の男達は、仕事もできない、職場の女ともロクに話せない、ダメ男の典型のような彼を好きにならずにおれない。片思いの女をもてあそんだ男の会社に殴り込みをかけるタニシのために一肌脱がずにはいない。たとえその助力が失敗に終わろうとも。(ビートたけしを思い出すなあ。でも、たけしは独りでなく軍団で行ったところがイヤだ。)
こういう男を「キュート」だと思ってくれる唯一の女が、母親をのぞけばYOU演じるソープランド嬢‘しほ’のような、優性遺伝子(精子)争奪戦から退いた女であるという皮肉も効いている。
生きるとはぶざまに生きることである。
青春とはかっこ悪いものである。
男とは不器用な生き物である。
そんなベタな原点を直球勝負で描き切ったところ、演じきったところに惜しみない喝采を送りたい。
評価:B+
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
ヒッチコックの作品たち
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
「ボーイズ・ドント・クライ」
チャップリンの作品たち
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!