尊厳死(安楽死)がテーマの‘重~い’作品である。
この答えのない難しい題材を、144分の長さにわたって真摯に、丁寧に、しっかりと、緊張感を持続させて描き切った周防監督の力量は、賞賛に値する。やはり、現代日本の最もすぐれた映画監督の一人である。
主演の草刈民代は、夫である監督の薫陶よろしく、「ここまで演れる人だったのか!」と目を見張るほどの熱演、好演。『Shall we ダンス?』(1996年)での女優デビューから16年、女優としてとても良い成長を遂げてきたのが証明されている。篠田正浩―岩下志麻、吉田喜重―岡田茉莉子に継ぐべき夫唱婦随のコンビネイションであろう。
安楽死とは、
①患者本人の自発的意思に基づく要求に応じて、患者の自殺を故意に幇助して死に至らせること(積極的安楽死)、および、②患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、または、患者本人が意思表示不可能な場合は患者本人の親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、治療を開始しない、または、治療を終了することにより、結果として死に至らせること(消極的安楽死)である。
積極的安楽死を認めている国は、スイス、アメリカ(オレゴン州、ワシントン州)、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクなど。日本では刑法上殺人罪の対象となる。一方、消極的安楽死は、日本を含め世界諸国で容認されている。
(ウィキペディア「安楽死」より引用抜粋)
先日、知り合いの看護師から聞いた話である。
彼女はALS(筋萎縮性脊索硬化症)患者のいる病棟で働いていた。体も口も動かせなくなったALS患者は、文字盤を使い、瞳の動きで意思表示する。それを解読し、家族や見舞客に通訳するのが彼女の特技だったそうである。
ALS患者は、病状が進行したある時点――自発的な呼吸ができなくなる時点――で、人工呼吸器をつけるかどうするか決定しなければならない。
つけなければ死ぬことになる(消極的安楽死)。
つければ数年生き延びることになるが、最終的には瞳すらも動かせないトータリー・ロックト・イン・ステイト(完全閉じ込め状態)が訪れ、周囲とのコミュニケーションがいっさい図れないまま、寝たきりで最期を迎えることになる。
いったん呼吸器をつけたらはずすことはできない。当然本人にははずすことが機能的にできないし、医者や家族など周囲の人間がそれをすると殺人になってしまう(積極的安楽死)。
彼女の担当していたあるALS患者は人工呼吸器をつけないことを望んだが、家族が反対し(決心することができずに時間切れとなって)、結局つけさせられてしまった。
その後しばらくして、病室で患者と家族の対話を通訳していた彼女は、次のセリフを患者の家族に伝えなければならなかった。
「ど・う・し・て・こ・ろ・し・て・く・れ・な・か・っ・た」
尊厳死(安楽死)をどう考えるべきか。
いまのところ自分でもよく分からない。
ただ、積極的安楽死の容認賛成派の主張のうち、次の一文は妙に納得する。
「生命の継続・延命を強要し、心身の耐え難い苦痛を継続させることは虐待や拷問であり、死生観の強要である」
仏教では、死ぬ間際の意識の状態が次の転生先を決めるとする。
苦痛に七転八倒し、周囲の人間を恨み、怒りに満ちた心の状態で死ぬのは、当然良いことではない。どんな酷いところに転生するか分かったもんじゃない。
そのような死に方をもたらした人たちもまた、計り知れない業(カルマ)を背負うことになろう。
最近思うのは、「命の大切さゆえに」生物としての生命を何としても長らえさせるべき、というのはかえって「命」に対する軽侮であり、「命が大切だからこそ」その終焉も尊厳あるものにすべきでないか――ということである。
ただし、その際の当事者の自己決定が、周囲の愛と理解と、最善の医療的・福祉的対応に保障されていることが前提であるが・・・。
All's Well That Ends Well
(終わりよければすべて良し)
―シェイクスピア―
評価:B-
A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」
A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
「スティング」「フライング・ハイ」
「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」
「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!