5日目(3/16)バスで島巡り(南部)
 8:40宮之浦港入口 ~ 10:18大川の滝(屋久島交通バス)
    ・大川の滝
 11:00大川の滝 ~ 11:37尾之間中央(同)
2012年3月屋久島&九州旅行 054    ・パン工房「ペイタ」
    ・尾之間の町と海岸巡り
    ・尾之間温泉 
 14:41尾之間中央 ~ 14:55中の橋(同)
    ・猿川のガジュマル
 16:05焼酎川 ~ 16:47Aコープ前(同)
    ・宮之浦地区散策(益救神社)
 宮之浦の民宿「屋久島89」泊


 今日は曇り時々雨。山の上には灰色の雲が憩っている。登山組は冷たかろう。
 しかし、こちらはバスで島巡りなので問題ない。

 宮之浦から時計回りに島をめぐり、終点が大川の滝。

 日本の滝百選に選ばれるだけあって、予想を越えた壮大さ。実に見ごたえあった。
 雄滝と雌滝が仲良く並んで80メートルを駆け下りる様は、麗しくも優美。パワフルな「気」を山間にはなっていた。
 屋久島に来たら、この滝を見なければ損。
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 バスで戻る途中にある尾之間地区に下車。
 この集落のどこにいても見えるのがモッチョム岳(940メートル)。花崗岩がむき出しになったゴツゴツとした山頂は、決して他の山と見間違うことのない特異な格好をしている。まるで、生クリームを空に向かって絞っているかのような格好。いやいや、はっきり言おう。モッチョムとは「女性の性器」を表す言葉らしい。
 この集落の人々は、モッチョムに見守られながら生活を送っているのである。

2012年3月屋久島&九州旅行 042 「ペイタ」という名前の手作りパン屋さんで、噛むほどにおいしさ広がる本物のパンとカフェオレで一服。この店は落ち着けていい。
 このあたりの海岸は鋭く切り立った崖が入り組んでいて、高台から見ると壮観である。JRホテルの裏のテラスは、絶景ポイント。また、ホテルの脇にある小道を行くと、崖を降りていく階段にたどりつく。崖の上から覗き込むと、はるか下の岩棚で釣り糸を垂れている男の豆粒のような姿が確認できた。釣りキチ、恐るべし。

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 観光ポイントだけでなく、その土地の匂いを肌で感じることも旅の楽しみである。尾之間地区をぶらぶらと路地裏探訪。まるで、チイさん。
 路地を抜けるとギョッとするような光景が飛び込んできた。
「なんじゃ、これは?」
 岡本太郎作、屋久島版「太陽の塔」か。
 ちょっと、こわい。

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 が、角度を変えて横から見上げてみたら、ユーモラスなものになった。
 モッチョムに吼えるゴジラ。

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 廃港となった尾之間港へと続く道は、うっそうとした森に囲まれて、森の精か魔法使いが棲んでいるようなムードであった。

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2012年3月屋久島&九州旅行 053 歩き回って汗をかいたので、尾之間温泉に行く。
 ここは集落の人々のオアシス。素朴な、ざっかけない、こじんまりした感じが嬉しいではないか。いつまでもこのままであってほしいものだ。
 お湯ははじめ熱く感じるが、浸かっているうちに肌に馴染んできて、ちょうど良い案配になる。ちょっと硫黄の匂いがする、力強い、実にいいお湯である。地元のおじいさんが石けんを貸してくれた。

 尾之間から猿川のガジュマルに。
 ガジュマルだらけの志戸子のガジュマル園とは違って、ここは照葉樹の森の中の一角に大きなガジュマルが数本かたまって、からみあい、もつれあいながら生えている。お化け屋敷みたいな異様な雰囲気である。ガジュマルにはキジムナーという名の妖怪(座敷わらしみたいな子供)が棲んでいるという。
 富士の樹海のような森の中に一人っきりでいるのに、なぜか恐ろしくも淋しくもない。むしろ、とても心が落ち着く。なんでだろう?
 俺がもしかしてキジムナー? 

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 宮之浦に戻って、夕食前にあたりを散策。
 海の近くにある益救(やく)神社にお参り。
 祭神は、天津日高日子穂穂手見命(アマツヒコヒコホホデミノミコト)、神武天皇の祖父にあたる神話上の人物である。
 この境内にあるガジュマルもすてきだ。フランスのアーティスト、ニキ・ド・サンファルの作品のように過激で、自由奔放で、生命力にあふれている。

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 夕暮れ時の宮之浦川の情景は、筆舌に尽くしがたい。
 満々と清らかな水を湛えた川と、青い山々と、澄んだ空と、緑の中に点々とある川岸の家々とが作り出す一瞬の幻のような光景。それは平和という名前の繊細な美である。泰西の名画と言う言葉が頭に浮かんだが、いやいやこれは、れっきとしたアジア特有の美である。
 江戸時代、長崎に初めて着いたオランダの人々は、その美しさに陶然となったと言う。海と山と自然と人々のつつましい暮らしとが織りなす交響曲を耳にしたのであろう。
 それに近いものがあるとしたら、この宮之浦の景色なのではないだろうか。
 実際、今回の旅で一番感動し心に残ったのは、この景色であった。


6に続く。

 
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