月日 2017年5月3日(水)14:10~
会場 八王子市芸術文化会館いちょうホール
曲目
  • ベートーヴェン/劇音楽「エグモント」序曲 作品84
  • ベートーヴェン/交響曲第8番ヘ長調 作品93
  • ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調 作品58
アンコール
  • ショパン/ノクターン嬰ハ短調 
指揮 岡田 真
ピアノ独奏 梯剛之 

 アンサンブル・バウムは2度目。今回の目玉は八王子出身の世界的ピアニストである梯剛之(1977年生まれ)の出演である。テレビにもよく出ているから、名前は知らなくても盲目のピアニストと言えば「ああ」と分かる人は多いだろう。はじめて生で聴く。  
 30分前に会場に着いたら長蛇の列。さすが連休、さすが有名人である。客席は9割がた埋まった。車椅子の人や盲導犬を連れた人が多かった。盲導犬は演奏中まったく吼えずイビキもかかないのだから、幼児や親爺よりよっぽどマナーがいい。

 最初の2曲は睡魔に身を任せる始末になった。昨晩は良く寝たし今日の午前中は家でのんびりしていたので、よもや眠くなることはあるまいと思っていたのだが・・・。
 休憩を挟んでいよいよ梯の登場。
 背が高く、がっしりしている。180cm以上あるだろう。ピアニストなのだから大柄は不思議でもなんでもないが、テレビでも音楽関係の印刷物でも座っている梯の姿を見ることが多いから、あんなに大きいとは思わなかった。
 ピアノ協奏曲が始まり、オケが繰り返し奏でる主題に応答するように梯の指が鍵盤を自在に敲きはじめた途端、眠気が吹っ飛んだ。空気の質が変わった。あとは演奏が終わるまで、ピアノの音から一時も耳が離せなかった。やはりプロは凄い。
 その音色は、骨格がしっかりして十分力強いのにごつごつした粗野な感はまったくなく、重層にして彫が深いのに繊細さと軽みに欠けてはいない。そのうえ大理石のような輝きがある。20歳のときに見たインドのアグラにあるタージ・マハルが頭に浮かんだ。
 むろん、ソルティのチャクラは喉と胸と丹田において喜んでいるかのように疼き通しであった。


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