ソルティはかた、かく語りき

首都圏に住まうオス猫ブロガー。 還暦まで生きて、もはやバケ猫化している。 本を読み、映画を観て、音楽を聴いて、寺社仏閣に詣で、 旅に出て、山に登って、瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

市川昆

● 映画:『ぼんち』(市川昆監督)

1960年大映作品。

 市川昆監督作品は『犬神家の一族』を中学生のときに観て以来、結構観ているのであるが、なんだか評価が難しいのである。
 大監督、世界的名匠の一人であるのは間違いない。『細雪』や『ビルマの竪琴』や一世を風靡した大原麗子のサントリーレッドCMなどのヒットメイカーでもある。
 作品ジャンルは幅広く、語り口もうまく、美しくスタイリッシュな映像はまぎれもなく「市川昆印」と言えるものを確立している。頂点はやはり『細雪』だろうか。
 観れば素直に楽しめるし、観たあとに不快感が残ることがない。適度なカタルシスを約束してくれる監督である。
 実際、有能な監督である。
 が、「映画らしさ」という点から見たときに、小津安二郎や黒澤明や大島渚はむろんのこと、たとえば天願大介や黒沢清や原恵一や周防正行などの市川を先達と仰ぐべき現役監督とくらべても‘映画的’でない気がする。
 一つには、娯楽映画のプロというイメージが強いせいかもしれない。大衆の好みを無視してまで貫くような映画人としての過剰や偏屈や心意気があまり感じられないのである。
 一つには市川昆印のついたスタイリッシュな映像が、スタイリッシュのためのスタイリッシュ、斬新のための斬新、という粋で収斂してしまっているからなのだと思う。その昔のハイカラ好きの日本人みたいなもので、当人の本質とスタイルが深いところでマッチしていないのである。
 市川昆監督には本当に撮りたいもの、撮らざるをえないものが無かったのではないだろうか。だから、あれだけ幅広いジャンルの作品を、常に安定した質の高いレベルで産み出せたのではないだろうか。

 そんなことを思いながら、先ごろ亡くなった山崎豊子原作、市川雷蔵主演の『ぼんち』を観た。
 話の面白さもさることながら、出演俳優の豪華絢爛たること!
 大阪は船場の足袋問屋の旦那・喜久治(=市川雷蔵)を取り巻く女達の競演が最大の見所である。
  喜久治の母親役=山田五十鈴
  喜久治の妾役=若尾文子、京マチ子、越路吹雪、草笛光子
  喜久治の最初の妻役=中村玉緒
 なんとも豪華で艶やか。
 とりわけ、若尾文子と京マチ子の色香は画面をフェロモンで充溢させ、こぼれんばかり。
 色気の観点からは脱落するけれど、喜久治の祖母役である毛利菊枝の演技は実に達者で貫禄がある。助演女優賞間違いなしの揺るぎのない好演。
 美しく、したたかな女たちの競演を目の前にして、はじめて市川昆監督の真髄を悟った。なぜ自分がどこかに引っかかりを感じつつも市川作品に惹かれるかが分かった。

 女の映画なのである。
 一人の男を軸として、その周囲を衛星のように回る様々な色とりどりの女達の奔放さ=業を描き出す。それが市川作品の真骨頂なのである。
 その視点からすれば、金田一耕介シリーズも『細雪』も『鹿鳴館』(浅丘ルリ子主演、1986年)も同一線上に来る。
 だから、市川昆の文学的なルーツをたどるなら『源氏物語』であろう。
 映画では撮らなかったが、テレビドラマでは『源氏物語』を撮っているらしい。(1965-66年、毎日放送、全26回)
 DVD発売されないものかな。


評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
    
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● 理想の四姉妹は? 映画:『細雪』(市川昆監督)

 1983年東宝。

 日本を代表する美しい女優達が目もあやな美しい着物を着て、日本の四季折々の美しい風景や家屋の中を歩く。観ているだけで幸福になれる映画である。この作品のために一着一着デザインし白地から染め上げたという着物の見事さに、日本の伝統技術のクオリティの高さをまざまざと知る。

 谷崎潤一郎のこの小説は、過去に3回映画化されているが、いつもその時々の最も人気のある、もっとも美しい女優達が四姉妹に選ばれ、妍を競ってきた。
 谷崎の夫人松子とその姉妹をモデルにしていると言われるが、姉妹それぞれの性格の違いが面白い。

長女、鶴子(30後半):強情でまっすぐな性格。激しやすいところがある。本家の格式を重んじる。 
次女、幸子(30過ぎ):姉妹思いで何かと気苦労が多い。姉妹の調整役を任じている。 
三女、雪子(30):奥ゆかしく引っ込み思案だが、自分の意志を貫き通す強さを持っている。
四女、妙子(25):現代風で、好きな男に惚れると飛び込んでしまう奔放な性格。

 この3回目の映画化では、次のような配役(当時の年齢)であった。
 長女:岸恵子(51)
 次女:佐久間良子(44)
 三女:吉永小百合(38)
 四女:古手川祐子(24)

 イメージ的にも性格的にもこのキャスティングは原作ピッタリだと思うけれど、四女役の古手川祐子をのぞくと年齢の点でちとみな年を取りすぎている。女優は実年齢より10歳は若く見えるから映像的には何ら問題はないのだが、年齢なりの落ち着きという部分はなかなか隠せないものがある。舞台は大阪であることだし、もっとキャピキャピした四姉妹なのではないかと想像する。

 さて、こういう作品を見ると、頭の中で自分なりにキャスティングを考えてしまうものである。
 私的「理想の細雪四姉妹」を発表する。もちろん、年齢はその女優がそれぞれの役と同じ年齢の時である。
 
 長女:京マチコ

 次女:小川真由美
 
 三女:原節子


 四女:浅丘ルリ子


 どうだろう?
 この四人が同じ画面に並ぶだけでくらくらしてきそうではないか。
 この四女優(姉妹)の中でいい思いをする男優(次女の夫・貞之助)は誰が適当だろう?
 石坂浩二はもう十分だ。
 三国連太郎あたりはどうだろう?

 
 ところで、映画の中で姉妹が交わすセリフにこんなのがあった。
 「音楽会の帰りに船場の吉兆でご飯食べましょう」


 時代は遠くなりにけり。




評価:B+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● 日本映画最良の布陣 映画:『破戒』(市川昆監督)

 1962年、大映制作。

 キャスト・スタッフの顔ぶれがすごい。
 主演の市川雷蔵は、生真面目な暗い眼差しが被差別部落出身の負い目を持つ瀬川丑松に過不足なくはまっている。正義感あふれる友人の土屋銀之助役に若き長門裕之。なるほどサザンの桑田そっくりだ。解放運動家・猪子蓮太郎役に三國連太郎。白黒の画面に映える洋風な凛々しい風貌が印象的。後年、三國は自らの出自(養父が非人であった)をカミングアウトしたが、抑制されたうちにも思いの籠もった品格ある演技である。中村鴈治郎、岸田今日子、杉村春子、『砂の器』ではハンセン病患者を名演した加藤嘉、落ちぶれた士族になりきった船越英二、この映画が女優デビューとなった初々しい藤村志保(原作者の島崎「藤村」+役名「志保」が芸名の由来だそうだ)。錚々たる役者たちの素晴らしい演技合戦が堪能できる。
 脚本(和田夏十)も素晴らしい。音楽はやはり『砂の器』の芥川也寸志。
 そして、そして、なんと言ってもこの映画を傑作に仕立て上げた最大の立役者は、撮影
の宮川一夫である。

 市川昆の映画というより、宮川一夫の映画と言ってもいいんじゃないかと思うほど、カメラが圧倒的に素晴らしい。この撮影手腕を見るだけでも、この映画は観る価値がある。
 下手に映像が良すぎると物語や演技を食ってしまい、全体としてバランスを欠いた残念なものになってしまうケースがおいおいにしてある。が、この作品の場合、もともとのストーリが強烈である上に、役者達の演技も素晴らしいので、見事に映像と物語が釣り合っている。丑松が生徒たちに自らの出自を告白するシーンなど、白黒のくっきり際立つ教室空間で丑松の背後に見える窓の格子が、まるで十字架のようにせりあがって見え、象徴的表現の深みにまで達しているかのようだ。
 市川昆監督が狙った以上のものを、宮川カメラマンが到達して表現してしまったのではないかという気さえする。


 「丑松思想」の悪名高き原作の結末を、いったいどう処理するのだろうと懸念していたら、やはり大きく変えていた。
 原作では、丑松は自分の教え子の前で出自を隠していたことを土下座し、アメリカに発つ。いわば日本から避げるのである。悪いことをしたわけでもないのに習俗ゆえに厳しい差別を受けてきた人間が、なぜ謝らなければならないのか。なぜ逃げなくてはならないのか。藤村の書いた結末は、当時としては現実的なものだったのかもしれないが、当事者にとってみれば希望の持てるものではない。

 時代は変わった。生徒の前で土下座するシーンこそ残されているが、友人である土屋が自らの偏見を反省し丑松への変わらぬ友情を表明するシーン、東京へ去っていく丑松を生徒たちが変わらぬ敬慕の眼差しで見送るシーン、丑松が猪子蓮太郎の遺志を継ぎ部落開放運動に飛び込む決心をするシーンなど、新たに作られた場面は感動的であると同時に、希望を感じさせる。

 差別する人々、無理解な人々がいかに沢山いようとも、理解し励まし一緒に声を上げてくれる一握りの仲間がいれば、人はどん底からでも這い上がり、前に向かって歩くことができる。
 そのメッセージが心を打つ。 
 



評価: A-

参考: 

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 

「東京物語」 「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。

「風と共に去りぬ」 「未来世紀ブラジル」 「シャイニング」 「未知との遭遇」 「父、帰る」 「フィールド・オブ・ドリームス」 「ベニスに死す」 「ザ・セル」 「スティング」 「フライング・ハイ」 「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」 「フィアレス」 ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。

「アザーズ」 「ポルターガイスト」 「コンタクト」 「ギャラクシークエスト」 「白いカラス」 「アメリカン・ビューティー」 「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。

「グラディエーター」 「ハムナプトラ」 「マトリックス」 「アウトブレイク」 「タイタニック」 「アイデンティティ」 「CUBU」 「ボーイズ・ドント・クライ」 チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)

「アルマゲドン」 「ニューシネマパラダイス」 「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ~。不満が残る。

「お葬式」 「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった

「レオン」 「パッション」 「マディソン郡の橋」 「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


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