3日目(3/14)縄文杉登山
  5:12春田 ~ 5:18屋久杉自然館(まつばんだ交通バス)
  6:00屋久杉自然館 ~ 6:40荒川登山口(まつばんだ交通バス)
   7:00登山開始
    ・トロッコ道
    ・ウィルソン株
    ・大王杉
 11:10縄文杉到着、昼食
 12:00縄文杉出発
 16:50登山終了
 17:00荒川登山口 ~ 17:40屋久杉自然館(まつばんだ交通バス)
 17:42屋久杉自然館 ~ 17:48安房(屋久島交通バス)
 安房の民宿「杉の里」泊

 暗いうちに宿を出る。縄文杉が俺を待ってるぜ。(お前は裕次郎か)
 屋久杉自然館から先は登山バスでしか行けない。ここまで乗用車で来た人々と合流してバスに乗る。2台で150名くらいか。春休みのせいだろう、学生らしきが多い。
 荒川登山口でバスを降りると、寒いこと寒いこと。0度だと言う。ノースフェイスのレインウェア(24000円)を奮発して良かった。防水だけでなく防寒効果も高いすぐれものなのだ。ちょっと、そこの学生さん。ジャージ上下に100円ショップのレインコートとは山をなめてはいませんか。

 往復10時間、道のり22キロ、最終のバスの時刻に間に合うよう登山口に戻ってこなければならないという時間制限ありのウォーキング。苦労話はこれまでいろいろなところで聞いていた。痛む足を引きずりながら土砂降りの中、走ったとか。せっかく来たのに、帰りのバスに間に合いそうになくて縄文杉まで行かず途中で泣く泣く引き返したとか。
 結論から言うと、思ったより楽であった。
 もちろん、自分が普段山登りをしているせいもあるが、4分の3はトロッコ道、つまり傾斜に気づかぬほどゆるやかな坂道なのである。息も切れない。山登りと呼べるのは残り4分の1。せいぜい2時間弱、標高差400メートル分だけなのだ。これ、東京の高尾山レベルである。特別、技術は必要ない。歩道もしっかりしている。長い距離が歩ける体力があれば子供でもぜんぜん大丈夫なのである。 
 心配していた時間制限も普通の早さで歩ける人ならば、往復8時間で行って帰って来られる。自分のように、途中何度も休憩を取り、帰りのバス待ちの時間を最短にしようと、ゆっくりと景色を楽しみながら歩いて9時間50分である。(うち休憩が1時間30分)
 朝方の寒さはどこへやら、日中は快晴、途中ヒートテックを脱いだくらい汗ばむ陽気となり、最高のトレッキング日和であった。

 渓谷沿いのトロッコ道、沢沿いの照葉樹林の道、目も眩むような高みから渓流を見下ろしながら渡る橋、大きな杉が立ち並ぶ山道、と変化があって面白いのだが、それほど特別にパワフルな「気」は感じられなかった。やはり、人がたくさん来るようになったためだろうか。同じ杉木立ならば、長野県の戸隠神社のほうが数段パワフルで、崇高なまでに清らかであった。
 ゴールである縄文杉も「ここまで歩いて来た」という達成感もあって、ありがたく感じはしたけれど、予想していたほどのパワーや偉容や神秘は感じられなかった。
 しかし、これは自分の見方が影響しているのかもしれない。

 というのも、前の夜の「杉の里」での夕食時、食堂でかかっていたビデオを観たのである。
 それは、屋久島が世界遺産に登録されて観光客がどっと押し寄せてから、いかに自然が破壊されてしまったかを描いたドキュメンタリーであった。制作されたのは7年前くらいと宿のご主人は言っていた。
 そこで知った驚愕の事実。
 なんと縄文杉の余命は、樹木の専門家の鑑定によれば、あと十数年だというのだ!
 嵐にも雷にも豪雨にも山火事にも伐採にも負けずに何千年(一説によると7千年)も生き抜いてきた縄文杉が、世界遺産に登録されてたった数年で命が尽きようとするところまでダメージを受けてしまったのだ。(登頂記念に樹皮を剥いで持って帰るヤツがいるそうだ)
 なんたることか!
 もちろん、なんとか縄文杉をよみがえらせようと専門家たちは努力を続けているわけであるが、宿のご主人が言うように「数十年単位でないと結果は分からない」。

 ・・・・・・。

 この事実を知ったために、トレッキングの意味合いがすっかり変わってしまったのである。次々と山道に現れる杉の巨木達も瀕死のうめき声を発しているように感じられる。崩壊した杉の残骸がいやでも目に入る。これでは「気」もパワースポットもあったもんじゃない。
 そんなわけで縄文杉も、包帯姿の綾波レイのように痛々しく見えたのであった。

 しかし、縄文杉を越えて宮之浦岳に続く山道を少し入ると、空気がまるで違っていた。
 清浄な、きめ細かい、打ち震えるようなバイブレーションがあたりを領していた。これがもともとのこの山の「気」だろう。人があまり入らないところには残っている。逆に言うと、それだけ人の発する「気」は強くて、粗雑ということだ。一人ならどうという影響もないが、大勢集まれば明らかにその場の「気」が変わる。

 ウッドデッキでお弁当を食べていたら、鹿の親子が遊びに来た。


4に続く。


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