ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

評価B-

● 映画:『お茶漬けの味』(小津安二郎監督)

1952年松竹。

 異色の小津作品という感じがする。
 スタイル的にではなく内容的に、である。
 スタイル的には、低い視点の固定カメラ、バストショットで鸚鵡返しの単調なセリフのやりとり、空ショットの多用、壺や茶筒など文物をセンターに、演じる人物を脇に配した画面作り・・・など、翌年の『東京物語』で完成を見た小津スタイルがここでも健在である。(ズームが使われているのはちょっと珍しいと思った。)
 内容的な異色とは、ひとことで言えば‘女臭い’映画という点である。
 
 小津作品はいつも男臭い。バンカラである。扱うテーマから言えば男臭さの権化と思える黒澤映画よりも、小津映画のほうが平均的には男臭いと自分(ソルティ)は思う。
 それはおそらく、作品の持つ‘ウェット感’が影響している。
 黒澤映画はどこかウェットである。別の言葉で言えば「人情的」である。小津映画は乾いている。黒澤がチャップリンとしたら、小津はバスター・キートンだ。『東京物語』のように家族間の人情を描くドラマであってさえ、観る者の感情移入を不思議と拒むところがある。それは、先にあげた対象から常に一定の距離を置く小津スタイルのためでもあろうが、根源的なところにあるのは小津安二郎のストイシズムなのではないかと思う。
 小津作品からはエロスが欠落している。少なくとも女のエロスが。なまめかしいのは、原節子でも三宅邦子でもましてや杉村春子でもなく、佐野周二(『父ありき』の息子役)であり、この作品の佐分利信であり、壺や茶筒の曲線や表面のツヤである。
 生涯結婚せずに母親と二人暮らしだったという小津監督のセクシュアリティには興味深いものがある。
 そんななか、この作品はウエット感がいつもより濃厚なのである。
 
 理由の一つは、主演の木暮実千代の艶にある。洋装、着物、浴衣、ファッションショーのように切り替わる木暮の艶やかにして凛としたいで立ちは、登場するだけで画面にツヤをもたらす。この‘女満開’オーラはさすがの小津スタイルも閉じ込めておけなかったようだ。
 木暮を中心に他の3女優――淡島千景、津島恵子、上原葉子(←加山雄三の母親!)――が競演し、女ばかりで温泉に出かけては酒を飲んで酔っ払ったり、野球観戦に行ったり、ことあるごとにそれぞれの亭主の愚痴をぶちまけたり・・・と、「女子会」の模様が頻繁に描かれているのも‘女臭い’理由の一つ。温泉の部屋の窓辺でしどけない浴衣姿でくつろぐ4人の周囲を、庭の池に反射した光の模様が揺らぎ遊ぶシーンなど、衣笠貞之助監督『歌行燈』を連想させるほどにはかなげに美しく、「小津監督もこんな細やかな新派風の演出ができるのか」と感嘆する。
 また、物語が終始女性視点、すなわち木暮実千代演じる妻・佐竹妙子の視点で描かれているのも‘女臭さ’の原因である。「女達の目から見た男(亭主)の仮の姿と真の姿」というのが、この映画の主題なのである。
 
 こういった毛色の変わった小津映画を面白く観ていたのだが、最後の最後で教条主義になってしまうのが残念。
 佐竹妙子は、鈍感でドン臭いと思っていた亭主・佐竹茂吉(=佐分利信)が、実は「器の大きな、地に足ついた男」であることを知って反省するというオチなのだが、それが「世の女性方よ。男を、亭主を見くびってはいかん。亭主を馬鹿にして、遊び惚けるのも大概にしなさい。」という説教になってしまって、台無しである。
 『戸田家の兄妹』(1941年)でもそうだが、教条主義に走ると小津映画は失敗する。もとがストイシズムなだけに、とたんに息苦しい、無味乾燥なものになってしまう。
 『東京物語』以後の作品は、教条主義を捨てたストイシズムによって万人の共感を得たのであろう。
 
 それにしても、撮影当時の佐分利信は43歳、木暮実千代は34歳。共に貫禄・風格十分の立派な大人である。
 いま、SMAPの中居君が43歳、宮沢りえが36歳。
 こうして比べると、戦後、日本人がいかに幼く(若く)なっているかが瞭然である。
 だからどう、というわけでもないのだが、映画を観ている間、佐竹茂吉(=佐分利信)を自分より年上に思い、「いぶし銀のような渋いお父さんだなあ」と憧れに近い魅力を感じていたのだが、実際は自分より10歳近くも年下なのである。

 なんだかなあ~。



評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!




● 映画:『25年目の弦楽四重奏』(ヤーロン・ジルバーマン監督)

2012年アメリカ映画。

 弦楽四重奏は、第1バイオリン、第2バイオリン、ヴィオラ、チェロの4つの弦楽器によって構成される。

 結成25年目を迎えたプロの弦楽四重奏団「フーガ」は、父親格のチェロ奏者ピーター(=クリストファー・ウォーケン)がパーキンソン病にかかったことから、突如メンバー交代の節目を迎える。それがきっかけとなって、残り三人の奏者の心の中でくすぶっていた様々な思いが浮上し、人間関係に齟齬が生じていく。事態は混乱の極みに達し、ピーターの引退公演を直前にして「フーガ」は解散の危機に陥ってしまう。
 ――という人間ドラマが、「フーガ」の十八番であるベートーヴェン《弦楽四重奏曲第14番》の調べをモチーフにしながら進行していく。登場人物の性格や心の動きにのっとった無理のないドラマ展開、セリフの自然さ、演じる四者(第1バイオリン:マーク・イヴァニール、第2バイオリン:フィリップ・シーモア・ホフマン、ヴィオラ:キャサリン・キーナー)の滋味ある演技。芸術家のドラマとしても通用するくらいの良く取材され練られた脚本。人生の秋を迎えた大人達の鑑賞に堪える佳品である。
 
 クリストファー・ウォーケンと言えば、いまだに『ディアハンター』のイメージが強いが、相変わらずの演技達者ぶりである。存在感も別格。
 ピーターの亡き妻ミリアムを演じているのは、実在の有名な美人メゾソプラノ歌手アンネ=ゾフィー・フォン・オッター。彼女の出演シーンはピーターの回想中のほんの一シーンだけだが、その歌声は艶やかな気品に満ちたもので、はっと耳をそばだてさせる。

 ベートーヴェン《弦楽四重奏曲第14番》を聴きたくなること間違いなし。


評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 


● 真木よう子に注目 映画:『さよなら渓谷』(大森立嗣監督)

2013年。

 吉田修一の同名小説を原作とするミステリー風人間ドラマ。
 十代の時に起きた集団レイプ事件の被害女性(真木よう子)と加害男性(大西信満)とが、十数年後に再会し、憎しみと償いの強い感情に結ばれて、「幸福になるためでなく不幸でいるために」同棲を始める。そこに、二人の隣りに住む女が自らの幼い子供を殺害するという事件が持ち上がり、田舎町にマスコミが押しかけ、二人の関係に微妙な変化をもたらしていく。
 
 見所は、主演の真木よう子の演技に尽きる。この作品で、第37回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞はじめ数々の演技賞を受賞している。
 昨年くらいまでよく列車内に流れていたtoto(サッカーくじ)のCMの‘冷感症の女’風の演技が印象的で気になっていたのだが、作品を観るのははじめてである。
 と思っていたら、2006年公開の西川美和監督『ゆれる』に出演していた。
 『ゆれる』は観た記憶があるのだが、作品内容も真木よう子も印象に残っていない。
 なんでかなあ?
 
 演技は確かに上手い。役の雰囲気作りも抜群である。
 加えて、スクリーン映えする姿かたちを持っているのが彼女の何よりの武器だろう。なんというか西欧風の匂いのする女優さんである。シャーロット・ランプリングのように、大人の演技ができる、大人の作品で真価を発揮する女優なのではないか。
 映画のラストで彼女が歌う主題歌が流れる。これがまた滅法味がある。むろん、プロ歌手のように上手ではないけれど、透き通った美しい声でシャンソンのような説得力ある歌唱を披露している。
 いま最も注目すべき女優であるのは間違いない。
 彼女の代表作はこれから先に現れるだろう。
 『さよなら渓谷』も、totoのCMも、彼女にはいささか幼すぎる。
 


評価:B-


A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 

「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 


● 映画:『シンプル・シモン』(アンドレアス・エーマン監督)

2010年スウェーデン映画。

 アスペルガー症候群のシモンは、イケメンで優しい兄サムが大好き。
 でも、シモンの非常識な行動が原因で、サムは恋人から捨てられてしまう。
 落ち込むサムのために、シモンは新しい恋人を見つけてあげようと奔走する。
 
 アスペルガー症候群とは、知的障害を伴わないものの、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる自閉症スペクトラム(ASD)の一種である。・・・・・・・・
 アスペルガーの人は、多くの非アスペルガーの人と同様か、またはそれ以上に強く感情の反応をするが、何に対して反応するかは常に違う。彼らが苦手なものは「他人の情緒を理解すること」である。(ウィキペディア「アスペルガー症候群」より抜粋)
 
 他人の情緒(=物語)を理解しないゆえに、トンチンカンな行動をくり返し、事態をますます紛糾させてしまうシモン。でも、心は純粋(シンプル)そのもの。
 そんなシモンが最後にはなんと、物語のなかの物語たる“恋”に目覚めてしまう。
 
 アスペルガーという枷を除けば、普通の楽しい恋愛娯楽映画である。


評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 


 
 
 
 

● 映画:『プリズナーズ』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)

2013年アメリカ映画。

 『X-MEN』『レ・ミゼラブル』のヒュー・ジャックマン、『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホール共演のサスペンスクライムドラマ。
 脚本も演技も演出も及第点に達しているので、長尺(153分)にも関わらず、最後までダレなく面白く鑑賞できた。
 ジェイク・ギレンホールの刑事役がなかなか渋くて良い。『ブロークバック・マウンテン』(アン・リー監督、2005年)や『ミッション:8ミニッツ』(ダンカン・ジョーンズ監督、2011年)では感じなかったけれど、意外に年ふるごとに名優に近づいていくタイプの役者なのかもしれない。主役よりもバイプレイヤーで光るのではなかろうか。
 今後に期待。
 

評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!




 



● 台湾のゲイ 映画;『GF*BF 女朋友、男朋友』(ヤン・ヤーチェ監督)

2012年台湾。

 切なさと一抹の苦さとで胸がかきむしられるような青春映画。
 同じグイ・ルンメイ主演で、男女三人の恋愛トライアングルを描いた同じような設定の『藍色夏恋』(イ-・ツーイェン2002年)のバリエーションというか、別バージョンという感じである。
 『藍色夏恋』は、一人の男(チェン・ボーリン⇒一人のレズビアン(グイ・ルンメイ)⇒一人の女(リャン・シューホイ)⇒最初の男、という♂1:♀2のトライアングルだった。こちらは、一人の女(グイ・ルンメイ)⇒一人のゲイ(ジョセフ・チャン)⇒一人の男(リディアン・ボーン)⇒最初の女、という♀1:♂2のトライアングルである。どちらの作品も台湾でヒットして高評価を得ている。察するに、台湾社会はセクシュアルマイノリティに寛容(少なくとも日本より)なのだろうか。関係ないかもしれないが、台湾人はかつて自国を占領・支配した日本人に対して友好的だと言う。
 大らかな国民性?
 
 『藍色夏恋』が三人の青春時代だけの活写で終わっているのにくらべ、『GF*BF』は戒厳令下にあった1985年から2012年までの激動の台湾社会を背景に、10代から40代に至る三人の変貌を描いている。そのため、後者のほうがより人生ドラマの趣きが強い。と同時に、青春の挫折というテーマが加味されて、大人になることの苦味が鑑賞後に残る。
 
 大学時代の三人が、民主化を求めるデモに参加して盛り上がっているシーンがある。
 日本で言えば、全共闘あるいは今のSEALDsの若者たちを髣髴させる。大義をもって体制と闘うという市民運動的志とは別に、ああいった動乱の中で仲間と夜通し酒を飲みながら議論し喧嘩し、自己を確立し、友情を育て恋愛やセックスを覚えるという青春は、やっぱりそれ自体幸せなのではないだろうか。我々バブルの頃の若者のように、渋谷や新宿や六本木の繁華街やクラブで退屈をまぎらわすために夜通し騒ぐ繰り返しだけの青春(BGMは中森明菜『DESIRE』)よりも、鮮やかに記憶に残る思い出となるのではないか。
 若者たちに‘デモの中の青春’をプレゼントできるのは、大人たちの寛容さであり、社会の成熟さを示しているのではないだろうか。
 そんなことを考えた。
 
 登場人物のなかで、自分(ソルティ)が感情移入したのは、もちろんゲイの忠良(チョンリャン)である。
 ノンケの友人シンレン(♂)を好きになってもそれを打ち明けることができず、シンレンと自分の幼馴染メイパオ(♀)とが結ばれるのを傍らで指を咥えて見ていることしかできず、一人夜の街にセックス相手を探しに出かけるチャンリャン。成人してからは、妻子ある男との秘密の情事にひとり身をこがす。本命のシンレンは、「転向」して地位も金もある男の娘と結婚し家庭を持つ。シンレンの子を宿し断ち切れぬ関係に苦悩するメイパオの哀れな姿を鏡のように見て、チャンリャンははじめて自分のありのままの姿を知る。それは、叶うことない偽りの愛をひたすら渇望する‘倒錯した’おのれの性(さが)であった。
 
 クローゼットのゲイは、クローゼットのゲイとしか知り合えない。
 そこに未来はないのである。
 
 
評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 

 

● 映画:『100歳の華麗なる冒険』(フェリックス・ハーングレン監督)

2013年スウェーデン映画。 
 
 原作はスウェーデンで100万部のベストセラーとなり、日本を含む40ヵ国以上で翻訳されている作家ヨナス・ヨナソンのデビュー作『窓から逃げた100歳老人』。
 
 100歳の誕生日に、居住している老人ホームの窓から一人逃げ出したアラン・カールソン(=ロバート・グスタフソン)の波乱に満ちた冒険、そして生涯を描くアクション・コメディ。
 アランが生きてきた100年のヨーロッパ史――それはつまるところ戦争と謀略の歴史である――を背景に、無類の爆弾マニアであるアランが、運命に身をまかせつつも、持ち前の好奇心と幸運と楽観主義とで激動の時代をくぐり抜け、世界の要人たちとの邂逅を重ね、当人はそれと知らず世界の歴史を変えるキーパーソンになっていく様子をコミカルに描く。同時に、老人ホームから逃げ出したアランが遭遇するギャングや警察を巻き込んだ破天荒な珍道中を、ユーモラスに‘のほほんと’描き出す。
 “北欧版『フォレスト・ガンプ』”と称されたのも道理である。が、アランはフォレスト・ガンプほど純真な心の持ち主ではない。平気で人殺しをしてしまうのだから。また、少年時代に入れられた精神病院で去勢手術をされたため、女性関係を持たなかった。それゆえ、フォレスト・ガンプのような恋愛ドラマや家族愛とは無縁である。その点で、この映画をヒューマンドラマに分類するのは「やや違う」ような気がする。
 
 主人公アランを演じるロバート・グスタフソンは、1964年生まれの50歳。スウェーデンの国民的コメディー俳優として知られている。青年期から100歳までのアランを器用に演じ分けている。特殊メイクの効果もあるが、20代のアランも、100歳のアランも、とても50歳の男が演じているとは思わなかった。100歳のアランの何事にも動じない飄々たる振る舞いを、演技とは思えないような自然さで演じきっている。
 監督のフェリックス・ハーングレンは、1967年生まれ。この作品で国際的監督になったわけだが、インタビューで「なぜこの物語がこれほど世界中で人気を博したと思うか」と聞かれた答えがフルっている。
 
 西洋では我々の人生の終わりとは、退職したときにたくさんの金が貯めてあって、良い暮らしやゴルフをしたりすることができることだ、と考える傾向がありますが、真実は我々のほとんどが、孤独に老人ホームに行き着き、そこで死に向け、ただ朽ちて行くのです。
 心の底で我々は、このことを知っています、それゆえ、誕生日を迎えた100歳の男が、彼が好奇心旺盛であり人生でさらなる体験をしたいがために、単純に窓から歩き去ってしまうのを見るのは、気持ちの良いものなのです。彼は物事を計画したり将来の心配をしたり、過去を憂えたりするような男ではありません。彼は非常にリラックスした方法で、今日が最後の日であるかのようにただ毎日を生きて行きます。
 人々はアランになりたいと感じる。それは何にせよひとり老人ホームで終わるゆえ、どうせ楽しむことのできない物質的な所有に奮闘する西洋のそれより、我々にしっくりくる生き方だからです。(公式ホームページhttp://www.100sai-movie.jp/index.htmlより抜粋)

 やっぱり、西洋の人も、なんだかんだ言って「老人ホームで死ぬのはイヤ」なのだな・・・。



評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 


 

● 映画:『U Want Me 2 Kill Him ユー・ウォント・ミー・トゥ・キル・ヒム』(アンドリュー・ダグラス監督)

2013年イギリス。

 2003年に英国で実際に起こった少年事件をもとに作られたという。
 イギリスってのは昔から、これまでの常識(良識)を覆すような新奇な犯罪事件の発祥地になりやすい――っていうイメージがある。思いつくだけでも、「切り裂きジャック」「メアリー・ベル」・・・・・
 あれ??? そんなもんか。
 わかった!!
 シャーロック・ホームズ、ブラウン神父、エルキュール・ポワロという三大名探偵を生み出したミステリー王国ならではのイメージなのだ。歴史上の推理小説の独創性は、ほぼ上記3人が登場する小説群によって開拓されたのである。新奇なトリックが生まれやすい土壌があるのかもしれない。なんと言っても世界で最初の市民革命を、産業革命を起こした国である。発想の飛躍を是とするところ、良きにつけ悪しきにつけ‘世界初’を栄誉とするところが国民性のうちにあるのだろう。 

 この映画のもととなった事件の新奇性は、表に現われた実際の少年同士の殺傷事件に至るまでのすべての過程が、インターネットのチャットルーム内で進行したというところにある。
 主人公の少年マークは、チャットルームで知り合った年上の女性レイチェルに恋をし、彼女を恋人ケビンの暴力から助けるために発奮する。自殺したレイチェルのため、ケビンに復讐をはかろうとする過程で英国諜報部(MI5)のエージェントとチャット上で知り合い、そのエージェントに操られて、クラスメートの親友ジョンを路上で殺傷する。マークがジョンをナイフで刺すという現実の事件の動機はすべてチャットルームで形作られていく。
 だが、レイチェルもケビンもMI5のエージェントもみな、ネットに挙げられた顔写真とハンドルネームとメールのやりとりだけの架空の存在だったのである。すべては、マークに目をつけたある一人の人物が、マークをそそのかして親友のジョンを殺すために仕掛けたトリックだったのである。マークは殺人者に仕立て上げられたのであった。トリックの仕掛け人の天才ぶりに驚かされる。
 主人公二人の少年の演技もよいし、脚本もよく出来ている。
 
 マークは、架空の人物たちの織り成す架空の物語を頭から信じ込んでいっぱい喰わされたわけである。マークの信じた物語は、ネットの中にしかなく、還元すればマークの頭の中にしかない妄想だった。妄想を現実と信じ、いいように感情を操られて、実際の犯罪に手を染めたのであった。
 愚かであろうか。
 大人たちは、ネット上の人間関係をリアルに受け取る現代の若者の愚かさを笑うであろうか。

 思うに、マークの嵌まった罠は、ネットの外にいて‘本物の’現実を生きているつもりの大人たちもまた同じように嵌められている。
 なぜなら、ネット内であろうとネット外であろうと、結局、我々の生きている現実は、我々ひとりひとりの頭の中の妄想を材料として組み立てられているからである。だれもが、自分の主観によって感情を良くも悪くも掻き立てられながら生きている。主観という妄想によって――。
 自分はマークを笑えない。 



評価:B-


A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!




● 映画:『グランド・ブダペスト・ホテル』(ウェス・アンダーソン監督)

2014年ドイツ・イギリス共同制作。

 超高級ホテルの支配人(コンセルジュ)と世に出たばかりの若い従業員ゼロとの戦時下の友情を描いた娯楽作。
 舞台は、ヨーロッパ文化の粋を集めたような豪華絢爛にして優雅に洗練されたGBホテル内(架空)から、大陸横断鉄道、大富豪の邸宅、主人公グスタヴ(=レイフ・ファインズ)が収容される刑務所、山奥の修道院、アルペン競技が行われる雪山と、めまぐるしく移動する。
 ストーリーは、GBホテルや名画を含む莫大な遺産相続をめぐる争い、亡くなった富豪の遺族に雇われた殺し屋の暗躍、刑務所からの脱走、戦時下の厳しい検問、警察との攻防、そこにベルボーイの爽やかな恋愛を薬味に加えて・・・。アクション映画と言っても間違いなかろう。実際、グスタヴとゼロの関係は、あたかもシャーロック・ホームズとワトスンみたいである。ホームズばりの鮮やかなる推理こそないけれど。
 肩の力を抜いてワイン片手に純粋に楽しめる良品である。


評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 


 
 

● たかがスキン 映画:『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(ジョナサン・グレイザー監督)

2014年イギリス・アメリカ・スイス合作。
 
 監督は、ニコール・キッドマン主演『記憶の棘』(2004年)のジョナサン・グレイザー。
 前作同様、映像の美しさ、艶やかさ、独特の品格あるスタイルが特徴的。
 この監督、凡ではない。
 
 宇宙人の地球侵略ものという意味ではSFスリラーの範疇に入るのだが、妙に文学性のある象徴性の高い作品である。
 地球人のスキン(皮膚)を収集し、それをまとうことで地球人に化けて仲間を増やしていく宇宙人。その由来や生態や能力は最後まで明かされない。
 美しい地球人女性のスキンを被った主役の宇宙人(=スカーレット・ヨハンセン)は、その美貌と若さあふれる悩殺ボディを武器に、来る日も来る日も町を車で流しながら、独り者の男を物色していく。
 逆ナンである。
 簡単に引っかかっていく男たち。
 どこか漆黒の部屋の中、一枚一枚服を脱いで裸体(スキン)をあらわにしてゆく女を、自らも裸になりながら憑かれたように追っていく男たちは、知らない間に黒い液状の捕獲罠にずぶずぶと嵌まっていく。沼底には、生け捕られた裸の男たちが琥珀の中の昆虫のごとく浮かんでいる。文字通り身(スキン)ぐるみ剥がされるのを待ちながら・・・。
 
 男達が罠に落ちていくシーンの描かれ方が、なんというか象徴的、‘能’的である。
 地球人捕食の瞬間を、よぶんな描写や背景や会話やサービスショットをいっさい省いた、最少の演出とカット割りと演技で描いている。暗闇に残されるのは、二人の脱ぎ捨てた衣服だけ。
 見ていて連想するのは、本邦の増村保造『盲獣』(1969年)、加藤泰『陰獣』(1977年)といった江戸川乱歩作品である。乱歩特有のエログロ淫靡な世界を、シュールレアリズムのごとモダンな切り口で捌きスクリーンに乗せた両天才を想起する。
 考えてみれば、若く逞しい男を物色して収集する孤独な女の姿は、美輪明宏演じる『黒蜥蜴』(くろとかげ)に重なる。人間の皮を剥いで被るという発想も、なんだか乱歩っぽい。
 
 象徴的なのは、この映画がスキン(皮膚)をめぐる物語というところにもある。
 
①宇宙人(女の形をしているが実のところ性別があるか否かも不明)は、人間のスキンを欲している。中味は――皮膚の下にある内臓や骨や筋肉はもちろん、心(ハート)も――必要でないし、関心もない。ただスキンを得る為に、女は自らのスキン(外見)を利用する。当然、罪悪感のかけらもない。
 一方、男達は女のスキンに魅了される。スキンを欲して罠に落ちていく。性欲に突き動かされている彼等は、女の「スキンの下にあるもの(Under the Skin)=心」にはとりあえず興味が無い。
 ここまでは互いのスキンを欲する者同士のフィフティ・フィフティのアバンチュールと言えなくもない。結果はともかく、少なくとも動機においては。

②女は、ある不具の男との出会いをきっかけに、スキンの下にあるもの(=心)に目覚める。
 それはおそらく、生まれてから一度も女性の体(スキン)に触れたことの無い、また自身も他者によって触れられたことの無い不具の男が欲しているものが、単なるスキンではなく、それ以上であったことによるものと思われる。 女に何らかの変容が起こり、一度捕獲した不具の男を逃がす。
 ‘心=感情’を獲得していくことによって、女は宇宙人として、捕獲者として、脱落していく。バスの中で出会った男と愛し合うようになるが、女の体はもともとセックスするようにはできていない。

③絶望して森の中を彷徨う女を、一人の男がレイプしようとする。
 せっかくのチャンスなのに、女は男を捕食しようとしない。地球の女のように逃げ回り、抵抗する。
 男は女を捕らえ、乱暴に衣服を破り、一緒にスキンも破ってしまう。
 肌の裂け目から、宇宙人の本来の黒い肌が現われる。
 
④スキンの下にあるものを見た男は、恐怖に襲われ、女を焼き殺す。 

 以上のストーリーは寓意としてこんなふうに読める。

①男も女も互いにスキン(=性欲)だけを求めているとき、男は女の手玉に取られる。男は性欲には勝てない。
②男がスキンの下にあるもの(=心)を求めたとき、女は男にほだされる。女にとってもはや男のスキン(=外見)は二の次である。
③スキンの下にあるもの(=心)を求める女は、男の餌食になりやすい。
④スキンの下にあるもの(=他者)を見た男は、恐怖に襲われる。
 
 アンダー・ザ・スキンというタイトルは一種の皮肉であろう。
 オンリー・ザ・スキンというのが内容的には正確である。
 人の美醜はほんの数ミリの皮膚一枚と言う。そこに人間は翻弄される。
 
 たかがスキン。されどスキン。
 
 
 
評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!




 
 
 
  

● 木暮実千代と浦辺粂子 映画:『雪夫人絵図』(溝口健二監督)

1950年新東宝。

雪夫人絵図
 
 溝口健二が1952年の『西鶴一代女』から始まる怒涛の傑作連発期(『雨月物語』『祇園囃子』『山椒大夫』『噂の女』『近松物語』)に入る直前の作品である。世間的評価は良くなかったようだが、この翌年に撮った『お遊さま』『武蔵野夫人』同様、まぎれもなく溝口スタイルが刻印されている高い水準の映画である。
 
 溝口スタイルとはなにか。
1. 転落していく美しい女性(達)が主人公である。
2. それは恋愛相手の男から見て年上である(姉様)ことが多い。
3. 悲劇の結末が用意されている。
4. 自然描写とりわけ水(湖、川、海、雨)を背景とするシーンが象徴的である。

 溝口監督の生育歴なんか読むと、どうやらこの姉様と年下男の関係は、溝口自身と家計を助けるため芸者や妾になった溝口の姉との関係がオーバーラップされているらしい。つまり、シスコンだったのだ。
 それはともかく。
 見るべき味わうべきは、まず舞台となる熱海の景観である。
 50年代初頭の熱海はこんなにも美しかったのかと驚嘆する。『武蔵野夫人』でもそうだが、やはり美しい背景あっての恋愛悲劇である。光る海、霧の中の木立、木々の陰影、静かに波立つ湖面・・・風景がそのまま登場人物たちの心理描写となる。これが『源氏物語』の昔から続く、我が日本の伝統的な写実のありようだろう。そのテクニックを手中に収めた時から、溝口監督の国際的な快進撃が始まったと言うべきだ。
 とりわけ、水の使い方では溝口に並ぶ監督は古今東西そうそうにおるまい。ここでも山々に抱かれる熱海の海面や木立に潜む芦ノ湖の水面が、日常と非日常、現実と夢幻との境界のように映し出され、元華族である雪夫人(=木暮実千代)がその境界をさまよいつつ、現実に負けて、次第に非日常へと誘われていく道行きを象徴的に表している。
 
 木暮の演技が素晴らしい。
 生涯350本以上という映画への出演本数――それも黒澤、小津、溝口など巨匠作品に主役級で出演――と「ヴァンプ女優」と評された妖艶な姿態、そしてCM女優第一号という栄誉に比すと、現在の木暮実千代の名の低さは意外なほどである。悪役、純情可憐な主人公の敵役が多かったせいであろうか。
 『祇園囃子』での「芸は売っても身は売らぬ」の筋の通った気立てのいい芸者・美代春。『赤線地帯』での病弱の夫と幼い子供を抱え「なりふり構わず」生きていく強い娼婦・ハナエ。そして、愛人を平気で家に連れ帰ってくる酷い夫とどうしても別れることのできない元華族の弱い女・雪。育ちも環境も性格も異なる三人の女を、木暮は見事に演じ分けている。この演技力、昨今なかなか見られないレベルである。
 
 もう一人見るべきは、雪夫人の家の女中頭役で出演している往年の「おばあちゃん役者」浦辺粂子(1902-1989)である。このとき浦辺は50歳。女優業スタート時点から脇役一筋、間違っても元華族のおひい様役など回ってこない。この映画でも、後年耳についてはなれなくなる、あの独特の声と節回しで、雪を虐げる周囲の者たちをなじる。その姿は、自分(ソルティ)が子供の頃楽しんで観た榊原るみ主演のTVドラマ『気になる嫁さん』(1971-72年)の家政婦たま(「リキおぼっちゃま!」)にまで、地続きで繋がっている。
 間違ってもスター女優ではない。
 だが、記憶に残る女優である。
浦辺粂子

評価:B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



● 映画:『月下の恋』(ルイス・ギルバート監督)

1995年イギリス映画。

 英国田園地帯の美しい風景。
 堅牢にして広壮な由緒あるゴシック風の館。
 色彩豊かでシックなデザインの家具調度。
 見るからに高級で上質でファッショナブルな衣装を普段着のように着こなす八頭身の美男美女。
 ため息の出るような手の届かない世界の中で、謎を深めながら静かに進行する幽霊譚。
 ずばり自分(ソルティ)の好みを直撃する映画である。
 撮影を担当しているのが、同じイギリス上流階級映画である『眺めのいい部屋』(ジェイムズ・アイボリー、1986年)のトニー・ピアース=ロバーツだけあって、とにかく映像の美しさが際立つ。それだけとっても十分見る価値はあるのだが、これが映画初主演となった21歳のケイト・ベッキンセールの東洋風の瑞々しい美貌と大理石のように輝く白い裸体は、女性やゲイの鑑賞者にとっても‘眼福’と言ってよいレベルである。
 
 恐くはない。
 ホラーというよりオカルトミステリー。
 主要な登場人物も片手で数えられるくらい。
 最後にどんでん返しが待っているところも含め、ニコール・キッドマン主演の傑作オカルトミステリー『アザーズ』(アレハンドロ・アメナーバル監督、2001年)を想起する。
 いやいや、制作年から言ってこちらが本家である。これは『アザーズ』の元ネタなのかもしれない。
 
 好きなタイプの映画なのに、途中まで以前観たことに気づかなかった。筋も忘れていた。ベッキンセールのヌードを忘れられるなんて、ノンケの男ならありえないだろう。(笑)
 一方、『アザーズ』を忘れることなどありえそうもない。
 この違いは何だろう?
 考察するに、『アザーズ』にあって『月下の恋』に存在しないものがある。
 それは‘哀しみ’である。
 『アザーズ』で心に残るのは、ラストシーンですべてが白日の下にさらされたあと、ニコール・キッドマン演じる母親が二人の(自分が手にかけた)子どもを抱きながらモノローグする姿である。あの何とも切ない‘人間的な’モノローグが、作品を単なるオカルトミステリーやホラーから、情念のドラマに格上げする。彼女が霊として蘇えらなければならなかった悲しい宿命に観る者もまた涙する。
 『月下の恋』にももちろん人間ドラマはある。
 主役の二人、デイヴィッド(=エイダン・クイン)とジュリエット(=ケイト・ベッキンセール)の最後には破綻するラブロマンスはある。
 しかしそれは‘哀しみ’ではない。
 ジュリエット兄妹が亡くなった理由もまた哀しみとはかけ離れた‘おぞましい’ものだ。
 
 観る者の心になんら感動を残さない。
 その点で、二匹目のどじょうである『アザーズ』に軍配は上がる。
 
 
評価:B-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
   
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 
 
 

● 映画:『異人たちの棲む館』(フェルザン・オズベテク監督)

2012年イタリア映画。

 原題はMagnifica Presenza(素晴らしき住人)

 役者になることを夢見るピエトロは、親戚のマリアを頼ってローマにやって来た。昼間はオーディション、夜はパン屋でバイトの日々。ゲイである。一人暮らしを始めるべく古いアパートに移り住むが、そこには戦時中に活躍した劇団の幽霊たちが棲んでいた。ピエトロと幽霊たちの奇妙な同居生活が始まる。

 オカルトコメディといったところだが、幽霊たちの存在(?)の謎が解明される最後に、シリアスで物哀しいドラマが待っている。
 戦時の芸術の脆さを描いた林海象の『夢見るように眠りたい』(1986年)や、同じく正体不明の役者たちが現実世界をかき回すルイジ・ピランデルロの戯曲『作者を探す六人の登場人物』を思い出した。こういう類いの作品は基本好きである。
 ストーリーに関してはもう一押し欲しかった気もする。
 幽霊たちの謎は解けるが、主人公ピエトロがこの不思議な邂逅によってどう変わったのかが描かれない。都会のストレスに病んで幻想を抱くようになった(と周囲にはうつる)ナイーブな青年のままで終わってしまう。宙ぶらりんな終わり方という印象を受ける。
 だが、昔日の大監督フェデリコ・フェリーニの作品(たとえば『そして船は行く』とか)を持ち出すまでもなく、過酷で退屈な‘現実’から逃避し、甘美でやさしい‘幻想と夢’のうちに住み続けることが、イタリア的なハッピー・エンディングなのかもしれない。戦後イタリアでヴィットリオ・デ・シーカやロベルト・ロッセリーニなどのネオレアリズモ(新現実主義)の傑作群が生まれたのは、逆に言うと、本来の国民性の基盤は反レアリズモということなのだろう。効率と競争、スピードと消費の資本主義社会とうまく折り合って‘明るく前向きに生きる’というアメリカンな価値観は、イタリア人とは到底なじまないのだろう。

1986年、マクドナルドがイタリアに進出し、ローマのスペイン広場に1号店を開いたが、アメリカ資本のファストフード店に対する反発は大きく、この際に起こった反対運動が、伝統的な食文化を評価する「スローフード」運動に発展した。やがて食文化のみでなく、生活様式全般やまちづくりを見直す動きに広がった。(ウィキペディア「スローライフ」より抜粋)
 


評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」       

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
 
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 

● ソウルメイト 映画:『ジェイン・エア』(フランコ・ゼフィレッリ監督)

1996年フランス、イタリア、イギリス、アメリカ合同制作。

 シャーロッテ・ブロンテ(1816-1855)原作の英国上流社会‘かいま見’小説。
 と言うとまるで「家政婦は見た」みたいだが、貴族の館に勤めることになる主役のジェイン(=シャルロット・ゲンズブル)の職業は家庭教師である。そして、市原悦子と派遣先の主人が恋に陥ることはまずないが、ジェインは風変わりな館の主人であるロチェスター(=ウィリアム・ハート)と恋に陥る。
 原作発表当時(ヴィクトリア朝)は、この女主人公の造型は「これまでにないもの」として世間に衝撃を与え、多大な反響を呼んだらしい。家庭教師として自立し、主人と対等に会話し、最後には身分を越えた恋を貫いて、火災で障害をおったロチェスターのもとに走るジェインの姿は、当時としては異色だった。また、ジェインは美人ではない。これも当時の小説としてはあまりないことだった。フェミニズムのはしりと言えるのかもしれない。(フェミニスト=不美人という意味ではない、念のため。)
 だが、いま我々がこの小説を読み、この映画を観るときに、こういったことはほとんど関係ない。ジェインのような女主人公はいたるところに見つけることができよう。ジェインの言動や決断に新鮮な衝撃を受ける現代人はいないだろう。
 それでもなぜこの小説がいまもかく読み継がれ、これまでに4回も映画化されるほど人々の心を捉えているのか。
 それは一つには最初に書いた英国上流社会‘かいま見’の面白さである。
 世界中のどこにもない英国貴族社会独特の伝統、風習、しきたり、豪華、優雅、邸宅、庭園、マナー、ウィットや皮肉に満ちた会話、装束、骨董品、つやびかりする家具調度・・・・。といった現代一般庶民の手の届かない世界を‘かいま見’る楽しみ。監督のフランコ・ゼフィレッリは、あの貴族監督ヴィスコンティの助手をつとめていただけあって本物志向である。安心して‘かいま見’の快楽に身を投じられる。
 いま一つの理由は、言うまでもなく、恋愛小説としての「ジェイン・エア」である。
 ジェインとロチェスターの間には、身分の違いだけでなく、いくつもの障壁が立ちはだかっていた。一度はあきらめた恋であった。その障壁を乗り越えて--ご都合主義の部分もあることは否めないが--ついには結ばれる二人を見ていると、「赤い糸」とか「魂の絆」とか「ソウルメイト」という言葉が浮かんでくるのである。
 現代人が希求しているのはこれなのだろう。
  
 最近、SMAPの稲垣吾郎が半同居人であるヒロくんのことをカミングアウトして話題になった。ヒロくんは妻子もち50代の会社経営者、週に二日は稲垣の自宅マンションの専用部屋に寝泊りする仲だという。二人が知り合ったのは都内のワインバーで、「ワインと共に友情も深まっていった」・・・。
 インタビューでヒロくんはこう答えている。「彼ほど一緒にいて違和感なくなじめるというのは、奇跡的かもしれないですね」
 稲垣は言う。「ヒロくんは精神的な恋人みたいなもの」
 SMAP関係者は言う。「二人はソウルメイト」

 ソウルメイトが異性であるとは限らないのである。


評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 

● 映画:『それでも夜は明ける』(スティーヴ・マックイーン監督)

2013年アメリカ・イギリス映画。

 『SHAME シェイム』の監督によるアメリカの奴隷制をテーマにした歴史ドラマ。
 第83回アカデミー賞の作品賞を受賞している。 

1841年、ニューヨーク州サラトガで‘自由黒人’として妻子と共に平和に暮らしていたヴァイオリン奏者であるソロモン・ノーサップ(=キウェテル・イジフォー)は、奴隷斡旋者の甘言に乗せられて故郷を離れワシントンに出向く。その晩、薬漬けにされたソロモンは、気がつくと手枷足枷はめられ監禁され、そのまま南部の綿農園に奴隷として売られてしまう。それから身元が保証され解放されるまでの12年間、彼を待ってたいたのは過酷な奴隷生活であった。

 まず、‘自由黒人’というのにちょっと驚いた。
 が、奴隷制度に対して異を唱える北部の州では、自由な身分の黒人たちが存在していたのである。この映画の時代背景である1840年時点、合衆国における黒人の人口比率は17%、そのうち13.4%が自由黒人であった。(逆に言うと、黒人の9割近くが奴隷だった)

 この映画は、愛する家族と共に幸福な生を送っていた男が、一夜にして地獄へと突き落とされた衝撃のストーリーである。
 なにが衝撃的と言って、この話が実話であるという点に尽きる。
 これは、1853年に発表されたソロモン・ノーサップによる奴隷体験記『Twelve Years a Slave(12年間の奴隷生活)』をもとに制作された映画なのである。
 ソロモンは、あらゆる権利を剥奪され、他の黒人たちと共に南部ルイジアナ州の農園で酷使される。オーナー家族や支配人への絶対服従、日の出から日没までの過酷な労働、容赦ない暴力と罵倒、不衛生な住居、性的虐待、プラットという名前に変えさせられてオーナーの都合で物品のように左から右へと売られる。それは家畜同然いや家畜以下の生であった。

 アメリカ独立宣言(1776年)?
 全ての人間は平等に造られている?
 生命、自由、幸福の追求の権利?
 関係ない。
 人権はあくまでも「人」の「権利」であって、黒人は「人」ではなくて「物」だったのである。

 キリスト教?
 隣人愛?
 神の前の平等?
 関係ない。
 そもそも奴隷制を肯定する根拠として持ち出されたのはほかならぬ「聖書」であった。
 映画の中でも、最初にソロモンを買ったバプティスト派の聖職者ウィリアム・フォード(=ベネディクト・カンバーバッチ←イギリスBBC製作のテレビドラマ「シャーロック」でホームズを演じて人気沸騰)が奴隷たちを庭に集めて聖書を読み、説教するシーンが出てくる。
 なんたる滑稽! なんたる倒錯!
 
 ソロモンが解放され手記を発表したのは1853年。
 その前年にストー夫人が『アンクル・トムの小屋』を著した。
 南北戦争が始まったのが1861年。
 リンカーンによる奴隷解放宣言が1863年。
 合衆国憲法修正第十三条の成立により公式に奴隷制度を終わったのは1865年。今からちょうど150年前である。
 このような野蛮な文化がほんの150年前まで存在していたのである。
 アメリカには、日本を含む他国の過去の歴史における人権侵害や虐待をとやかくいう権利も資格もまったくないはずである。
 一方で、黒人大統領誕生をわずか150年で実現させてしまう--オバマは奴隷の子孫ではないらしいが――ところは、変化(Change)の許容に対するアメリカ人のすごいところである。30年前、自分は日本で女性総理大臣が誕生するより、アメリカで黒人大統領が誕生するほうが100年は遅いと踏んでいたのだが・・・。

 製作者および出演者として、ブラピが関わっている。




評価:B-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」       

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● 終わりよければ 映画:『終の信託』(周防正行監督)

2012年東宝。

 尊厳死(安楽死)がテーマの‘重~い’作品である。
 この答えのない難しい題材を、144分の長さにわたって真摯に、丁寧に、しっかりと、緊張感を持続させて描き切った周防監督の力量は、賞賛に値する。やはり、現代日本の最もすぐれた映画監督の一人である。
 主演の草刈民代は、夫である監督の薫陶よろしく、「ここまで演れる人だったのか!」と目を見張るほどの熱演、好演。『Shall we ダンス?』(1996年)での女優デビューから16年、女優としてとても良い成長を遂げてきたのが証明されている。篠田正浩―岩下志麻、吉田喜重―岡田茉莉子に継ぐべき夫唱婦随のコンビネイションであろう。
 
安楽死とは、
①患者本人の自発的意思に基づく要求に応じて、患者の自殺を故意に幇助して死に至らせること(積極的安楽死)、および、②患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、または、患者本人が意思表示不可能な場合は患者本人の親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、治療を開始しない、または、治療を終了することにより、結果として死に至らせること(消極的安楽死)である。

積極的安楽死を認めている国は、スイス、アメリカ(オレゴン州、ワシントン州)、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクなど。日本では刑法上殺人罪の対象となる。一方、消極的安楽死は、日本を含め世界諸国で容認されている。
                          (ウィキペディア「安楽死」より引用抜粋)


 先日、知り合いの看護師から聞いた話である。
 彼女はALS(筋萎縮性脊索硬化症)患者のいる病棟で働いていた。体も口も動かせなくなったALS患者は、文字盤を使い、瞳の動きで意思表示する。それを解読し、家族や見舞客に通訳するのが彼女の特技だったそうである。
 ALS患者は、病状が進行したある時点――自発的な呼吸ができなくなる時点――で、人工呼吸器をつけるかどうするか決定しなければならない。
 つけなければ死ぬことになる(消極的安楽死)。
 つければ数年生き延びることになるが、最終的には瞳すらも動かせないトータリー・ロックト・イン・ステイト(完全閉じ込め状態)が訪れ、周囲とのコミュニケーションがいっさい図れないまま、寝たきりで最期を迎えることになる。
 いったん呼吸器をつけたらはずすことはできない。当然本人にははずすことが機能的にできないし、医者や家族など周囲の人間がそれをすると殺人になってしまう(積極的安楽死)。
 彼女の担当していたあるALS患者は人工呼吸器をつけないことを望んだが、家族が反対し(決心することができずに時間切れとなって)、結局つけさせられてしまった。
 その後しばらくして、病室で患者と家族の対話を通訳していた彼女は、次のセリフを患者の家族に伝えなければならなかった。
「ど・う・し・て・こ・ろ・し・て・く・れ・な・か・っ・た」

 尊厳死(安楽死)をどう考えるべきか。
 いまのところ自分でもよく分からない。
 ただ、積極的安楽死の容認賛成派の主張のうち、次の一文は妙に納得する。
「生命の継続・延命を強要し、心身の耐え難い苦痛を継続させることは虐待や拷問であり、死生観の強要である」


 仏教では、死ぬ間際の意識の状態が次の転生先を決めるとする。
 苦痛に七転八倒し、周囲の人間を恨み、怒りに満ちた心の状態で死ぬのは、当然良いことではない。どんな酷いところに転生するか分かったもんじゃない。
 そのような死に方をもたらした人たちもまた、計り知れない業(カルマ)を背負うことになろう。


 最近思うのは、「命の大切さゆえに」生物としての生命を何としても長らえさせるべき、というのはかえって「命」に対する軽侮であり、「命が大切だからこそ」その終焉も尊厳あるものにすべきでないか――ということである。
 ただし、その際の当事者の自己決定が、周囲の愛と理解と、最善の医療的・福祉的対応に保障されていることが前提であるが・・・。


All's Well That Ends Well
(終わりよければすべて良し)
    ―シェイクスピア―



評価:B-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」 

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」 

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


 


● 映画:『もうひとりのシェイクスピア』(ローランド・エメリッヒ監督)

 2011年イギリス・ドイツ合作。

 シェイクスピア別人説をモチーフにした歴史サスペンス。
 英国エリザベス絶対王政時代のコスチュームプレイと、ゲイとして有名なエメリッヒ監督の好むイケメン群像が楽しめる。

 シェイクスピア別人説は、人類史上最高の劇作家であるウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の作品が別人によって書かれた――というものである。史実上のシェイクスピア(とされる人物)の育ちや経歴を見ると、アノ間違いなく「世界遺産」の上位五指に入る膨大にして崇高な傑作群を生むほどの教養や語学力を身につけられたはずはない――というのが根強い別人説を生む原因となっている。

 真の作者として有力な候補は三名。
1. フランシス・ベーコン・・・経験主義、帰納法で有名な政治家・哲学者
2. クリストファー・マーロー・・・同時代の劇詩人。シェイクスピアと生年が同じで、最期は他殺体となって見つかった。(この映画にも登場する)
3. エドワード・ド・ヴィア・・・第17代オックスフォード伯。政治よりも文学を愛好する貴族。

 この映画は、3のオックスフォード伯こそ真のシェイクスピアであるという説に基づいて創られている。
 脚本はよく練られている。が、登場人物達の若い頃と現在とが頻繁にスイッチするので、誰が誰だか分からないのは難点。映像はエメリッヒらしい美意識と格調とが横溢。最後の最後で明かされる衝撃の事実も(史実ではないだろうが)、ギリシャ悲劇のようで面白い。エリザベス役のヴァネッサ・レッドグレイブも女王らしい威厳を醸している。全体に肩の凝らない娯楽作品に仕上がっている。

 シェイクスピアと言えば、思い出すのは小学校時代の学芸会である。
 演劇クラブに所属していた自分は、全校生徒を前に体育館のステージで『リア王』を演じたのである。脚色もほぼ自分がやった。
 このときの自分の役は、なんとリア王の三人娘の一人で、冷淡で強欲な長女ゴナリルだった。妹のネグリジェをドレスに仕立て、母親のカツラを借りて、人生最初にして(おそらくは)最後の女装であった。思う存分役になりきって、次女のリーガンと共にけなげで可憐な末娘コーデリアをいたぶったものである。
 リア王を演じたのは、クラブの部長だった上級生の女子であった。傲慢で尊大で貫禄があってリア王にぴったりだった。
 男子児童が女性を演じ、女子児童が男性を演じ・・・。今思うと、かなりキッチョで、クールで、恥知らずな舞台であった。
 何より大胆だと思うのは、『リア王』を喜劇に変えてしまったのであった。

評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● 映画:『カルテット!人生のオペラハウス』(ダスティン・ホフマン監督)

 2012年イギリス映画。


 『卒業』『真夜中のカーボーイ』『トッツィー』『レインマン』の名優ダスティン・ホフマンの初監督作品。
 名優必ずしも名監督ならず――だから、あまり期待しないで観た。引退したオペラ歌手たちが暮らす老人ホームが舞台ということだから、「アリアの名曲を聴ければ良いかな」「英国の老人ホームの様子が窺えるかな」くらいの気持ちで・・・。

 意外に良かったのである。
 ホフマン監督は、同じく俳優出のクリント・イーストウッド監督ほどの職人レベルには達していないが、手堅い演出、丁寧な絵づくり、役者の魅力を引き出す能力で、娯楽映画の合格点に達している。ワーグナー歌いで名を馳せたソプラノ歌手のギネス・ジョーンズはじめ、引退したプロの音楽家たちがたくさん出演しているのが見所なのだが、たくさんの個性的な登場人物を上手に捌いている。音楽の使い方、挿入の仕方も巧みである。
 イギリスの名優たち――マギー・スミス、トム・コートネイ、ポーリーン・コリンズ、マイケル・ガンボンら――の演技も深みがあって、魅力あるキャラクターづくりに成功している。
 
 自分は老人ホームで働いているが、利用者の退屈は大きな課題である。
 この映画の舞台となるホームのような、音楽のある生活、芸術の香りのする空間、音楽への共通の愛で結ばれた仲間たちとの交流、表現する喜びに溢れた日常――これは幸せな老後の風景と言えないか。
 
  人生は短し
  芸術は長し



評価:B-

+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」 

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● ハリウッドの流行? 映画:『恋するリベラーチェ』(スティーブン・ソダーバーグ監督)

 2013年アメリカ。

枝付き燭台

 原題はBehind the Candelabra(枝付き燭台のかげに)
 枝付き燭台とは右の写真のような蝋燭立てである。この映画の主人公である実在の人気ピアニスト、リベラーチェ(1919-1987)が自らのピアノに枝付き燭台のデザインをあしらったところから来たタイトルである。同時に、枝付き燭台によって象徴される成功した大スターのゴージャスできらびやかな表の生活の背後に隠された、ファンの知らない裏の顔を描く、という意味合いもあろう。
 映画の原作は、リベラーチェの秘書兼恋人であったスコット・ソーソンの同名の回想録。

 リベラーチェの活躍した時期は1950年代から80年代前半にかけてであるが、あまり日本では知られていない。自分もこの映画ではじめてリベラーチェという名前(と存在)を知った。80年代に日本中の女性をとりこにしたリチャード・クレーダーマンの貴公子然とした風貌と物腰にくらべると、派手でこれ見よがしで金ピカ趣味のリベラーチェは当時の日本人には受け入れ難かったのかもしれない。80年代後半のバブルの頃ならまだしも・・・。

 天才ピアニストで観客を楽しませることにかけては一流のエンターテイナーであったリベラーチェの秘密とは、①ゲイであったこと(若い男をとっかえひっかえしていた)、②エイズで亡くなったこと、であった。
 エイズ罹患は本人の生きている間はひた隠しにされていた。亡くなった後に司法解剖が入って明るみに出されたのである。と同時に、彼がゲイであったことも、生前から大枚はたいて必死に秘密を封じこめてきたマネージャー達の奮闘もむなしく、世間に知られるところとなった。この時代(80年代)、「エイズで死んだ芸術家=ゲイ」は鉄板の方程式だったからである。

 映画はしかし、セクシュアリティの問題、カミングアウトの問題、エイズの問題には深く入り込まずに、リベラーチェとスコットの二人の男の関係――出会い、熱愛、伴侶、すれ違い、亀裂、破局――に焦点を絞って、純粋な恋愛ドラマとして描いている。
 その意味では、もしこれが有名な男性(or女性)スターとその付き人である女性(or男性)の恋愛模様を描いたストーリーだったとしたら、まったくのところ陳腐なものになったであろう。男同士の恋愛という設定だからこそ、まだ語る価値がある。
 つまり、異性間であろうと、同性間であろうと、人が人を好きになり、必要とし、求め合い、永遠の愛を願い約束し、しかるにそこに到達するのは極めて困難であり、結局孤独に立ち戻らなければならない――という愛の輪廻は変わらない。それがこの映画から学びうるテーマである。

 リベラーチェを演じたマイケル・ダグラス。『蜘蛛女のキス』(1985年)のウィリアム・ハートに比肩できるような見事なオカマ演技である。やっぱり、この俳優は反体制のヒッピー出だけある。
 恋人のスコットを演じるは、名優マット・デイモン。リベラーチェに愛される金髪碧眼のドリアン・グレイばりの美青年から、ヤクにはまり嫉妬と絶望に苦しむ見捨てられた恋人までを、何ら気負いなく違和感なしに演じている。
 二人が仲睦まじげにからんでいるシーンでは、これが『ウォール街』の強欲な投資家と『ボーン・アイデンティティ』の凄腕の暗殺者とはまったく思えない。
 一昔前なら、こういった(ホモセクシャルの)役を演じることは、アメリカの男優にとって「清水から飛び降りる」ほどの勇断、というかまったくの愚挙であり「ありえない」ことだった。それが今や、ヒース・レジャーとジェイク・ジレンホールが『ブロークバック・マウンテン』(2005年)でケツを掘るカウボーイを演じ、フィリップ・シーモア・ホフマンが『カポーティ』(2005年)を演じ、ショーン・ペンが『ハーヴェイ・ミルク』(2008年)を演じ、コリン・ファースが『シングルマン』を演じ、レオナルド・ディカプリオが『J・エドガー』(2011年)を演じ、もちろん直近では『チョコレート・ドーナツ』(2012年)でのアラン・カミングの力演がある。
 ハリウッドの男優たちはこぞってゲイの役をやりたがっているようである。



評価:B-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● ドヤの中の品格 映画:『太陽の墓場』(大島渚監督)

 1960年松竹。

 大島渚は日本が世界に誇る名監督である。
 が、恥ずかしながら主要な作品をほとんど観ていない。
 安部定事件を題材に男女の性愛の極限を大胆に描いて国際的な名声を得た『愛のコリーダ』(1976年)あたりから、その名を意識するようになったのだが、むろん『コリーダ』は不完全な形でしか観れていない。
 デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし出演で世界的大ヒットとなった『戦場のメリークリスマス』(1983年)は、さほど感動しなかった。シャーロット・ランプリングの魅力全開の『マックス、モン・アムール』(1987年)、新撰組の男色模様を描いた松田龍平デビュー作『御法度』(1999年)は文句なく面白かった。
 これら晩年の作品のみで――それらがいかに傑作であろうとも――大島渚を云々するのは、あまりにも乱暴で、鼻持ちならない所業であろう。
 が、自分の中で印象付けられたのは、「品格のある作品を撮る人」というイメージであった。

 大島渚のもっとも熱い時代を自分は知らない。作品も観ていない。
 松竹ヌーヴェルバーグの旗手と言われるきっかけとなった『青春残酷物語』(1960年)、日米安保闘争を描いた『日本の夜と霧』(1960年)、死刑制度の矛盾や韓国人差別を描いた『絞死刑』(1968年)など、反権力のスタンスで社会性の強い作品を世に送り続けた大島監督の真骨頂は、やはり60年代にあるというべきだろう。
 『太陽の墓場』はまさにその一つである。


 舞台は撮影当時(1960年)の大阪釜ヶ崎(今の「あいりん地区」)。東京の山谷、横浜の寿町とならぶ日本三大ドヤの一つである。
 戦後の匂いがぷんぷんと立ち込める釜ヶ崎で、不法な仕事をしながらその日暮らしの生活を送る人々をリアルに描く。
 主役に抜擢された新人・炎加世子が光っている。男勝りで、刹那的で、うかつに触れればスパッと切られるように激情的で、セックスアピール抜群の女・花子を、体当たりで演じている。相手役の武を演じるのは佐々木功。なんと「宇宙戦艦、ヤ~マァ~ト~♪」の歌手である。もともと俳優だったのだ。役柄のせいもあると思うが、悪に染まりきれない文系のイケメン青年ぶりは好ましい。
 ほかにも、判淳三郎、渡辺文雄、小池朝雄(コロンボ刑事の声)、津川雅彦、川津祐介、小松方正、田中邦衛、左卜全、浜村純など、今にしてみれば個性派スター総出演の豪華さ。愚連隊のボス・信を演じる津川雅彦は、「カッコいい」の一言に尽きる。若き日のデヴィ夫人が恋に落ちるのも無理もない。

 売血、売春、強盗、レイプ、殺人、死体遺棄、戸籍売買、人買い、殴りこみ、手榴弾の爆発・・・・と、何から何まで無法だらけの、登場人物すべてがキ印と思えるほどの、壮絶な内容である。これとくらべると、80年代の山谷の騒動を描いたドキュメンタリー『山谷 やられたらやりかえせ』は、3チャンネル(NHK教育テレビ)に思えるほど行儀がよい。
 実際、よく撮れたなあ、よく上映できたなあ、と思う。いまこの作品を公開上映したら、「健全な若者に悪影響を及ぼす」と、どこからか文句が出そうな気がする。
 しかし、である。
 自分はやはりここにも大島監督の「品格」を感じたのである。

 テーマや内容とは関係のないところで、大島監督の作品は品がある。
 たとえばそれは、レイプシーン。犯されている女子高生のショットそのものずばりは撮らずに、それを遠めで見ている花子と武の表情を映すところ。線路上で取っ組み合っている武と信が列車に轢き殺されるシーン。近づいてくる列車はまったく撮らずに、列車の響きと線路脇で二人を見ている花子の動きを映すところ。露骨なエログロシーンは出てこない。
 考えてみれば、『マックス、モン・アムール』(=オランウータンと美しき人妻との恋、下手すれば獣姦)も、『御法度』(=新撰組に忍び入る男色)も、もちろん『愛のコリーダ』(=チンチンをちょん切る女の話)も、内容そのもの、テーマそのものは決して品のあるものではない。むしろ、撮りようによってはいくらでも下品に陥る危険、エログロになる可能性はあった。
 そうはならなかったのは、ひとえに大島渚の資質や才能によるものだろう。
 品だけは隠せない。



評価:B-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
    
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

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