1968年日活。
黒部ダム建設の苦闘を描いた骨太の人間ドラマ。上映時間196分(3時間以上!)は破格の長さであるが、長さをまったく感じさせない脚本のうまさ、役者たちの演技の熱さ、セットのリアルさ、撮影技術や演出の見事さに舌を巻く。さすが、『地の群れ』、『サンダカン八番娼館』の熊井啓。
ダム建設自体も大変な苦労だったろうが、この映画の撮影もまた相当な苦労だったろう。当時(50年代後半)の日本社会が持っていた人的・財的・技術的資源と巨大ダム建設に賭ける男たちのほとばしる情熱は、そのまま当時(60年代後半)の日本映画界が持っていた人的・財的・技術的資源と映画制作に賭ける男たちのみなぎる情熱そのものである。これが戦後の復興を可能ならしめたパワーというものだろう。
・・・どこかに消えて久しい(いい悪いは別として)。
・・・どこかに消えて久しい(いい悪いは別として)。
役者陣の充実ぶりも凄い。
石原裕次郎演じるキザな熱血男児・岩岡と、あこぎで破天荒なその父・源三(辰巳柳太郎)の父子相克は、『美味しんぼ』の山岡士郎と海原雄山のそれとダブる。リアリティあふれる辰巳柳太郎の土方の演技を見るだけでもこの映画を見る価値はある。
父子と言えば、なんと宇野重吉・寺尾聰親子が共演している。これは寺尾聰(『ルビーの指輪』)の映画デビュー作(当時21歳)なのだ。
当時、石原プロの元にはスタッフ・キャスティングに必要な人件費が500万円しか無かった。石原裕次郎はこの500万円を手に、劇団民藝の主宰者であり、俳優界の大御所である宇野重吉を訪ね、協力を依頼した。宇野は民藝として全面協力することを約束し、宇野を含めた民藝の所属俳優、スタッフ、必要な装置などを提供。以降、裕次郎は宇野を恩人として慕うようになった。(ウィキペディア「黒部の太陽」より抜粋)
この宇野重吉の相貌がいまの寺尾聰そっくりである――順序から言えば逆か。いまの寺尾聰が当時の宇野重吉そっくりなのだ。当たり前といえば当たり前なのだが、映画撮影当時はここまで相似するとは予期できなかっただけに、なんだか感動する。
三船敏郎と石原裕次郎。
やはり昭和が生んだ大スターの名に恥じない存在感である。
やはり昭和が生んだ大スターの名に恥じない存在感である。
相性も悪くない。
二人を一緒に並べて観ることで、俳優としての二人の資質の違いを実感した。
石原裕次郎は、何をやっても石原裕次郎である。それ以外にはなれない。裕次郎としての個性が強すぎて、役柄よりも個性が前に出てしまう。吉永小百合や高倉健と同じである。
一方、国際的俳優でアクの強さでは本邦随一とも言える三船敏郎は、演じる役に同化することができる。‘大スター三船敏郎’はスクリーンのうちに存在を消して、役柄になりきることができる。この映画でも、誠実で娘思いで渋さの際立つ建設会社管理職そのものになりきっている。たとえば、三船が出演していることを知らずにこの映画を観た人が、「あれ?この役者確かにどっかで見たことあるけれど、だれだったかなあ?」と思ってしまうほどの、確かな役の造形力、演技力である。
三船敏郎は演技派だったのだ。
三船敏郎は演技派だったのだ。
それから、気になったのは音楽。
ソルティが最近はまっているマーラーの交響曲になんだか似ている。いつくかの主要な動機(=メロディ)もそうだし、様々な楽器の――特に金管楽器の使い方がマーラー風である。
「誰だ? 音楽担当は?」
クレジットを見直したら、黛敏郎だった。
なるほど、大自然を相手の人間の涙ぐましい死闘、人知を尽くして苦難を克服した輝かしい一瞬の栄光、その裏に隠された幾多の犠牲と悲劇、そしてその後(バブル崩壊後)わが国に訪れることになる、生きるパワーの停滞と不安と虚しさ・・・・・。これらを表現するのにマーラーの音楽ほど適したものはないかもしれない。トンネル開通の浮かれ騒ぎの中で娘の死を知った三船敏郎の深い苦悩の表情とともに、この音楽もまた、黒部ダム建設が「人間の勝利、技術の光輝」という単純な‘プロジェクトX’図式に回収される話ではないことを物語っているようだ。
評価:B-
A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」
A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!
A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」
A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!