ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

評価C+

● 映画:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(ジェームズ・ガン監督)

2014年アメリカ。

 アメリカの人気コミックを原作とするSFスペースアクション映画。
 なんの気構えも予備知識も期待感もなくおもむろに観始めて、思わぬ楽しさが待っていた。
 拾い物の一本である。
 
 まず、今さらであるがCG技術の凄さに感心する。もとがコミックでスペースものなので、どれだけCGが使われていても全然気にならない。これが恋愛映画だったり歴史ドラマだったりしたら、やっぱりCGの過剰投与は製作者の‘手抜き’感を高めるだろう。
 また、コミックだけあってキャラクターの‘立ち(=個性)’が素晴らしい。とりわけ、チームを組む5人の戦士のうち、遺伝子改造されたアライグマのロケットと、彼の相棒である木のヒューマノイドのグルートのコンビが、最高にユニークで楽しい。役者世界の有名な言葉に「子供と動物には勝てない」というのがあるが、まさに「動物と植物には勝てない」といったところか。

 家族や友達と酒を飲みながら、休日前夜を楽しく2時間過ごしたいと思うならば、恰好のオススメ映画である。(そのかわり3日経てば内容を忘れる。)


評価:C+


A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!





● 永遠の神経衰弱 映画:『リピーテッド』(ローワン・ジョフィ監督)

2014年イギリス・アメリカ・フランス・スウェーデン共同制作。

 原題はBefore I Go to Sleep. 「私が眠りにつく前に」

 ニコール・キッドマン主演のミステリー&シチュエーションスリラーである。
 どんなシチュエーションかと言うと・・・・・
 クリスティーンは10年以上前の外傷が原因で記憶障害になり、朝目覚めると前日までの記憶をいっさい失ってしまい、20歳の自分に戻ってしまう。
 ベッドの横には見知らぬ中年の男が眠っている。
 (これは誰?)
 (ここはどこ?)
 (私は何をしているの?)
 パニクっているクリスティーンに見知らぬ男は言う。
「ぼくは君の夫のベンだ。ぼくたちは14年前に結婚して、それから一緒に暮らしている」
 ベンの説明を聞き、壁に貼られた結婚式以来の様々なツーショット写真を見て、クリスティーンはやっと気持ちを落ちつかせる。
 そんな朝が繰り返される。
 
 ニコール・キッドマンも、ベンを演じるコリン・ファースもベテランらしい確かな演技で観る者を惹きつける。少ない登場人物で、派手な演出もアクションもなく、おそらくCGもない? 度肝を抜かれるほどの‘どんでん返し’もなく、最後は‘母と子の再会’という永遠の涙腺弛緩テーマで感動を誘う。
 可もなく不可もなく、何も残らない。
 
 ・・・・・のであるが、連想したのは職場(老人ホーム)の認知症の進んだ高齢者たちである。
 「毎朝目が覚めると、昨日までのことをすっかり忘れている」
 というのは、まさに彼らのことなのだ。
 
 部屋のベッドで目が覚める。
 白い天井が見える。
 (はて、ここはどこだろう?)
 起き上がって、周囲を見回す。
 ベッド柵がある。ライトがある。カーテンの閉まった窓がある。ゴミ箱がある。自分のものらしい衣類が置かれた棚がある。
(昨日は家でなくここに泊まったらしい。どうしてだろう?)
 誰かがやって来る足音がして、部屋の扉がガラリと開く。
「○○さん、おはようございます。朝ですよ。今日もいい天気です。さあ、起きましょう」
 見知らぬ若い男が、わざとらしい愛想良さで声をかけてくる。
(これは誰? でも、私の名前を知っているようだ。ホテルの従業員?)
「は、はい。おはようございます。今起きます」
 男に渡された衣類に着替える。
(いつの間に寝巻きに着替えたんだろう?)
 男と一緒に廊下を歩いて、とりあえずトイレに向かう。
 同じような部屋がたくさん並んでいる。
(やっぱり、ここはホテル?)
 食堂に入ると、たくさんの見知らぬ顔が並んでいる。爺さん、婆さんばかり。車椅子に乗っている人もいる。みな、自分と同じようにわけが分らないような顔して押し黙っている。
(ここは病院らしい。自分は病院に連れてこられたのか・・・? どこか悪いんだろうか?)
 隣でお茶をすすっているお婆さんに聞いてみたいけれど、「私はなぜここにいるのですか?」なんて尋ねたら、なんと思うだろう。こちらをキチガイかなんかだと思うのではないだろうか? 
 お茶を配っているあの人に聞いてみようか。でも、なんだかとても忙しそうで、ゆっくり話ができる雰囲気じゃない。
 しばらく黙って様子を見ていよう。
(おや? あの人は見たことがある。名前は知らないけれど、前に話したことがある。とても親切な人だ。ああ、良かった。知っている人がいて・・・・・。そう言えば、お腹がすいた)
 
 こんな朝が繰り返されているのではないかと想像する。
 
 施設で働き始めたばかりのころ、認知症の人たちのレクリエーションでトランプの神経衰弱をやったら、まったくテーブルの上の札が減っていかない。いつまでたっても終わりが見えない。
 前の自分の番のときにめくった札の場所や数字はおろか、直前の人がめくった札の数字も覚えていないのである。記憶を頼みとする神経衰弱は、認知症の人の最も不得意なゲームなのだ。いきおい、2枚の同じ数字の札がめくられるのは、純粋に偶然か直感かに限られる。確率的にかなり‘起こりえない’。
 しまいには参加者全員飽きて、ゲームは中途終了となった。
 その次からは、数字をあわせるのではなく、スーツを合わせるやり方に変えた。ハート同士、クラブ同士、ダイヤ同士、スペード同士合えばOKというように。これなら偶然でも当たる確率は1/4となる。もっとゲームスピードを上げたいときは、色同士で合わせる。赤と赤、黒と黒ならOKというように。これなら目隠しでやっても1/2の確率で当たる。
 かくして神経衰弱は記憶力を競うゲームから、直観力あるいは‘その日の運’を競うゲームに変貌したのである。

 朝方、不安と疑問と心細さで一杯だった入所者たちも、朝食をすませ、トイレを済ませた頃には落ち着いてくる。近くの席の人たちと笑顔で世間話なんかを始める。
 その鮮やかな転換ぶりが4年経ったいまでも不思議なのだが、おそらく彼らは自分が朝方不安におびえたこともまた忘れてしまうのだろう。
 そうでなければ、本当に神経衰弱になってしまう。
 


評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 


● 森×一より笠智衆 映画:『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(リチャード・カーティス監督)

2013年イギリス、アメリカ。

 「もう一度あの時に時間を戻して、人生をやり直せたら・・・」
 という妄想は誰でも一度は描くであろう。
 この映画は、その妄想を現実化してしまった青年の話である。
 
 主人公ティム(=ドーナル・グリーソン)は21歳の誕生日に父親から重大な秘密を打ち明けられる。
「我々一族の男にはタイムトラベルできる力がある。過去に自分が存在した場所に戻って、別の選択肢を選ぶことができる」
 善良で家族思い・友人思いのティムは、その力を悪用することなく、自分の恋愛の成就のため、そして周囲の愛する人々のために使う。
・・・・・というハートウォーミングなSFヒューマンコメディである。
 
 監督のリチャード・カーティスは、ローワン・アトキンソン主演の『Mr.ビーン』や、人気ハリウッド女優(ジュリア・ロバーツ)としがない書店店員(ヒュー・グラント)の身分(?)違いの恋愛を描いた『ノッティングヒルの恋人』、レネー・ゼルウィガー主演の『ブリジッド・ジョーンズの日記』など、コメディ映画の脚本家としてむしろ有名である。脚本兼監督をつとめたこの『アバウト・タイム』も、上記の作品同様、イギリス風のとぼけたユーモアと不器用に生きる市井の人々へのあたたかい眼差しをもって、何の変哲もない日常生活の中にひそむ「生」の魅力を描くことに成功している。
 
 役者の中では、ティムの父親を演じたビル・ナイが俄然光っている。どこかで観た顔なのだが、何の映画の何の役だったのか思い出せず・・・。
 ウィキで調べたら、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のデイヴィ・ジョーンズ役をはじめ、『ハリー・ポッターと死の秘宝PART1』、『銀河ヒッチハイクガイド』、『ショーン・オブ・デッド』、『オペラ座の怪人』ほか、たくさんのヒット作・話題作に出演している名バイプレイヤーなのである。
 名前を覚えておこう。(無理)
 
 実際には、ティム青年が持っているような過去に戻る超能力を与えられたら、その人は間違いなく不幸になるだろう。失敗しても何度でもやり直しが効くので、目の前の一つのことに心をこめて打ち込むことができなくなってしまうだろうし、自分の人生を完璧にしたいという執念が異常なまでに高まって、ちょっとでも気に入らないことがあると、簡単にタイムトラベルを繰り返すようになる。しまいには、整形手術にはまった芸能人みたいにコントロールとバランス感覚を失って、グロテスクな結末を迎える羽目になろう。

 「もう一度あの時に時間を戻して、人生をやり直せたら・・・」と願うのは、その人が「今の自分」を受け入れられないところから来る。
 たとえ、タイムトラベルをして状況が思い通りに変わったとしても、「今の自分を受け入れられない」という性格自体が変わらなければ、結局、 堂々巡りになるだけだろう。主体がマイナス(-)であるとき、いくらプラス(+)を掛けても、出てくる答えはマイナス(-)にしかならない。
 「今の自分」「その時々の自分」を受け入れられることこそ、幸福でいるための最大の秘訣である。
 きっと、その秘訣をものにした人の顔は、穏やかに輝いていて、見る人をも幸せな気持ちにさせ、いくら歳を重ねようが整形手術の必要などないに違いない。
 笠智衆のように。



評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!





 


● シーシュポスの岩 映画:『パラドクス』(イサーク・エスパン監督)

2014年メキシコ映画。

 原題はEl  Incidente
 「出来事」といった意味か。

 1階まで降りると9階の踊り場に、9階まで上がると1階の踊り場に到達する出口のない階段。一本道をずっと運転し続けると、いつの間にか通り過ぎたはずの道に舞い戻ってしまう道路。山手線のように同じ軌道をグルグル走り続け降車できない列車。漕げども漕げども陸地も他の船も見えない大海原を漂う筏。
 無限に繰り返される出口のない空間に、30年以上、訳も分からず閉じ込められた数名の男女のパニックと恐怖と苛立ちと絶望と墜落と諦めとを描くシチュエーションスリラー。
 「世界各地の映画祭で注目を集めた」というDVDパッケージの煽り文句に乗せられてレンタルした。
 
 趣向は面白い。
 しかし、意味が分からん。
 結局なんだったのか、最後まで明かされることがない。
 永遠にループするシステム自体は判読できる。一つのループシステムが別のループシステムに、登場人物の一人を介してつながってゆくという仕組みは分かった。だが、いったい誰がどういった意図で、このようなパラドクスをある特定の人物に仕掛けたのかが説明されないで終わってしまう。
 その点で、パラドクス(逆説)というより不条理である。喜劇にしろ悲劇にしろ、幸福にしろ不幸にしろ、すっきりした結末がない。

 深読みするならば、元になっているのはギリシア神話に出てくる『シーシュポスの岩』だろう。
 
 シーシュポスは神々を二度までも欺いた罰として、タルタロスで巨大な岩を山頂まで上げるよう命じられた(この岩はゼウスが姿を変えたときのものと同じ大きさといわれる)。
 シーシュポスがあと少しで山頂に届くというところまで岩を押し上げると、岩はその重みで底まで転がり落ちてしまい、この苦行が永遠に繰り返される。(ウィキペディア「シーシュポス」より)
 
 『異邦人』で有名な久保田早紀、じゃなかったアルベール・カミュ(1913-1960、←タレントのセイン・カミュの大叔父にあたる大作家)が、このエピソードをもとに『シーシュポスの神話』というエッセイを書いている。ソルティ未読だが、「いずれは死んですべて水泡に帰すことを承知しているにもかかわらず、それでも生き続ける人間の姿を、そして人類全体の運命を描き出した。」(ウィキペディア『シーシュポスの神話』より)。
 イサーク・エスパン監督がここまで哲学的なところを踏まえて、この映画を撮ったのかどうか知らないが、確かに人生の比喩として観ると‘面白い’・・・て、言っていいのやら。どころか、仏教徒のソルティが観ると、もっと深く、もっと残酷に、これは輪廻転生の比喩のようにも思える。
 
 この世に生まれると同時に前世の記憶をすっかり抜き取られ、一からやり直し。理由も目的も分からず、ゴールも分からず、出口も分からず、ただ欲望を満たすために闇雲に闘うだけ。得られたものはすべて奪い去られ、老いて病んで苦しみのうちに死んでいく。それが何万回、何億回と繰り返される。
 これがブッダの説いた輪廻転生の実体である。

 そのあたりと絡ませると、この映画はかなり深遠な興味深いものになっただろう。
 でも、エスパン監督は仏教を知らんだろうな。

 いずれにせよ、怖ろしいシステムだ。
ハムスター車

評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!




 


 
 
 
 
 

● 人類愛・・・。 映画:『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督)

2014年アメリカ、イギリス。

 原題(Interstellar)は「星の間」の意。
 169分という長尺のSF映画であるが、最初から最後まで退屈することなく楽しめた。テンポが良いこと、トウモロコシ畑や宇宙空間や未知の惑星をはじめとするヴィジュアルの美しさ、そこで起こる不可思議な現象(相対性理論やブラックホールに由来する)への興味が、観る者を引っ張っていく。逆に言うと、ドラマそのものは貧弱である。その点で、すぐ前に見た『オン・ザ・ハイウェイ  その夜、86分』と真逆の位置にある。
 
 波打つトウモロコシ畑と中年に差しかかった男の捨てられない野望という点では『フィールド・オブ・ドリーム』を想起し、人類愛と父と娘の愛情という点では『アルマゲドン』『コンタクト』と重なり、宇宙空間の神秘と科学性という点では『2001年宇宙の旅』『コンタクト』に追随し、ドラマの貧弱さでは『サイン』と同列である。‘ごった煮’という印象は否めない。
 人類救出という大事件をテーマとする大作の割りには驚くほど登場人物が少ない。(ここがまた『サイン』と通じる) その中で光るのは、アメリア・ブランド博士を演じるアン・ハサウェイの理知的な美しさ、主人公ジョセフ・クーパー(マシュー・マコノヒー)の幼少の娘マーフを演じるマッケンジー・フォイのクールな美少女ぶりである。あと、後半でマット・デイモンがマッドキャラで登場するのは望外の喜び。

 この作品は、「ワームホールを描写し、相対性理論を可能な限り正確にするために理論物理学者のキップ・ソーンが科学コンサルタントを務めた」(byウィキペディア『インターステラー』)そうである。
 なので、科学音痴の自分が難癖つけるのはおこがましいのだが、やっぱり見終わった後に腑に落ちないものがある。タイムトラベルものに不可避について回るパラドックス(矛盾)がこの作品でも生じている。
(注意:ここからはネタバレです。)

1. 主人公クーパーの娘マーフの部屋で、ポルターガイストと思える「不可思議な現象」が起こる。
2. その謎の解明をきっかけに元空軍パイロットのクーパーはNASAと接触するようになり、人類を救う使命を受けて宇宙に旅立つことになる。
3. 宇宙旅行の様々な試練難関をくぐり抜けた挙句(その間に地球では数十年が過ぎていた)、クルーのブランド博士を助けるため、クーパーはブラックホールに一人飛び込む。
4. ブラックホールの行き先は4次元空間で、幼い頃の娘の部屋の本棚の裏側に通じていた。
5. クーパーは、ブラックホールで手に入れた人類を救うために必要なデーターを、なんとか娘に伝えようと苦心する。
6. それが、はじめの「不可思議な現象」の正体だった。

 かいつまんで言えば、上記のような構成なのだが、1と6とでつながって時間がループしている。
 ここで頭をひねるのは、
A.「不可思議な現象」が起こらなかったら、クーパーが宇宙に旅立つことはなかった。
B.クーパーが宇宙に旅立たなければ、「不可思議な現象」も生じない。 
C.結果として人類が救われることもない。
 このAとBとCは因果的に動かせないだろう。ここには矛盾はない。
 次に、こう仮定する。
A’ 「不可思議な現象」を目にしても、クーパーが宇宙に旅立つことを何らかの理由で拒否する。(幼い娘の懇願に負けてとか)
B’ その場合、クーパーはブラックホールを通じて4次元空間に入り込むことはないので、「不可思議な現象」を起こせない。
 この仮定A’と結論B’は明らかに矛盾する。
 クーパーが宇宙に旅立たなければ、「不可思議な現象」はそもそも起こらない。
 つまり、「不可思議な現象」が起こった時点で、すでに「クーパーが宇宙に旅立つ」ことは決定付けられている。それ以外の選択肢はあり得ない。
 「すべてはあらかじめ決まっていた」と結論付けるほかない。
 
 「すべてがあらかじめ決まっていた」を「アリ」とするなら、ドラマが介在する余地はなかろう。人類は、あらかじめ運命づけられているストーリーを神(だか高度生命体だか)の書いた脚本どおりに仕方なく生きているだけの話になる。人類が滅亡するも救出されるも「別に・・・」ってことになりかねない。
 それともこれは、あらかじめ決まっている運命の中で、それでも懸命に愛し合い、夢を見、運命に抗って生きようとする人類の気高さを謳っている作品なのか。

 それにつけても、この種のアメリカ映画を観るといつも思うのだが、人類ってそれほどまでに生き残らなければならない‘種’なのだろうか。
 自分が親でないからそう思うだけ? 
 自分が人類愛を欠いているだけ? 


評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 
  

● 映画:『ハングオーバー 最後の反省会』(トッド・フィリップス監督)

2013年アメリカ映画。

 ハングオーバー・シリーズの第3作。
 頼りがいある冷静なフィル(=ブラッドレイ・クーパー)、生真面目でパニクりやすいスチュ(=エド・ヘルムズ)、イケメンで友達思いのダグ(=ジャスティン・バーサ)、そして‘イッちゃってる’アラン(=ザック・ガリフィアナキス)の親友4人が、毎度毎度面倒な事件に巻き込まれ、次々と襲い来るハプニングにきりきり舞いし、命の危険にさらされながら、いちかばちかの度胸と厚い友情と運の良さとで苦難を乗り越えるドタバタコメディ。
 本シリーズでザック・ガリフィアナキス同様、吹っ切れた‘怪演’により人気に火がついたレスリー・チャウ(=ケン・チョン)も一層パワーアップして舞い戻ってきた。
 脚本とキャラクターの面白さで、3匹目のドジョウとは言え、ドタバタコメディとしてはまずまずの出来。期待を裏切らない笑いが待っている。
 でも、4作目は要らないな。
 これでオーバーで正解。


評価:C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」       

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。

      「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!



 

● 映画:『聖衣』(ヘンリー・コスター監督)

1953年アメリカ映画。

 聖衣とは、イエス・キリストが処刑されたときに着ていた衣のこと。
 古代ローマ帝国の護民官(官僚)であるマーセラス(=リチャード・バートン)は、時の帝王ティベリウスの後継ぎであるカリギュラの不興を買いエルサレムに飛ばされる。そこで出会ったのは、神の子として人民から崇められ慕われているイエス・キリスト。マーセラスは、ピラト総督の命によりイエスを磔刑に処する。そのときから彼の心の苦しみが始まる。

 マーセラスの回心とキリストへの帰依が主たるテーマであるが、『ベン・ハー』(ウィリアム・ワイラー、1959年)のように‘主’との感動的な遭遇シーンがあるわけでなし、手に汗握る戦車競争シーンが用意されているわけでなし、なんか中途半端な筋立てである。
 しかも、主役を務めるリチャード・バートンとジーン・シモンズに華がないのは致命的。二人とも容姿は整っているし、誰もが認める演技達者である。だが、少なくともこうした歴史超大作で主役を張れるほどの華がない。リチャードはやはりリズ・テーラーあってのアントニウスだし、ジーン・シモンズにいたっては代表作が思い浮かばない。

 CGを使わないセット撮影の贅沢とそれを可能にした50年代ハリウッド=アメリカの威信を実感する映画である。それ以上ではない。

 にしても、イエス・キリストとカリギュラ帝が同時代に生きていたとは知らなかった。
 カリギュラと言えば、自分の世代ではなんと言ってもティント・ブラスの映画『カリギュラ』(1980年)である。表は歴史超大作の顔をして、その実はまったくのハード・コア・ポルノ。ぼかしのないスクリーンを見ようと、日本から大勢の男達が「カリギュラ観賞ハワイツアー」に参加したのが記憶に残っている。
 その後しばらくしてから日本で再映された‘ぼかし入り’を某成人映画館で観たのだが、「別にどうってことはなかった。」(いつだってそうだ。「チャタレイ」も「エマニュエル」も「エーゲ海に捧ぐ」もなんであんなに騒いだのかよくわからん。)
 ‘猥褻’というのが「陰毛が見えた」とか「陰部がバッチリ見えた」とか「挿入場面のアップ」とか「乳首が見えなければ脱いだことにならない」いった即物的・肉体的レベルにおいて語られるのは、本当に小学生レベルだと自分は思うのだが・・・。
 世の男どもよ。『マドモアゼル』を観なさい。
  
 
評価:C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 

● 美人女優の放尿&オナニー考察 映画:『ペーパーボーイ 真夏の引力』(リー・ダニエルズ監督)

 2012年アメリカ映画。

 ダニエルズ監督は1959年生まれの54歳。
 ニューヨーク市在住のアフリカ系アメリカ人。
 2009年に公開された『プレシャス』で日本では知られるようになった。(ソルティ未見)
 カミングアウトしている同性愛者でもある。(この映画でもゲイセクシュアリティが物語の一つの鍵となっている。)

 お気に入りのニコール・キッドマンが出演しているのでレンタルしたのだが、まあ、ニコールの女優魂に感嘆した。
 衆人(囚人)環視の場でマスターベーションするわ、恋愛感情を向けてくれる少年(ザック・エフロン)の体にオシッコをかけるわ、台所のシンクに手をついて激しくバックを責められるわ、ニコールには「美人女優としてのイメージを大切にしたい」なんてポリシーはまったくないのである。
 ほんと、素敵!
 むろん、「美人女優」であることより、どんな役でもこなせられる「演技派」であることを重視しているのだろうが、日本の女優でこの役をやれる人がいるだろうか?

 マスターべーションとオシッコ。
 この二大恥辱をスクリーンで披露した女優として、なんと意外なことに、吉永小百合がいる。
 吉永小百合は『天国の駅』(1984)で死刑囚を演じたときにオナニーをしてみせ、『映画女優』(1987)で田中絹代を演じたときに畳の上で着物を捲り上げて放尿してみせた。「清純派脱皮」を目指して役者根性を見せたものの、やっぱりイメージからの脱皮はかなわなかった。
 同じ美人女優で実力派。
 なのに、ニコールと小百合の差はどこにあるのだろう?
 ニコールは脱いだけれども小百合はついにヌードにはならなかった――ってところにあるのか。根強いサユリストらの作る結界が小百合の脱皮を阻むのか。
 思うに、ニコールは映画の中の登場人物になりきることができるけれど、小百合は何を演じても「小百合」になってしまうところに要因があるような気がする。演じる役柄(たとえば死刑囚、田中絹代、『鶴』のつう)よりも、演じている小百合のほうが前に出てしまうのである。
 親の反対を押し切って15歳年上の岡田太郎と結婚したことが示すように、平和運動や脱原発運動に力を入れ積極的な発言をしていることが示すように、吉永小百合は非常に強い「個」と自意識を持っているのだろう。
 清純派というのはお門違いで、実は無頼派なのじゃないだろうか。
 
 つい話が小百合に持っていかれたが、ニコールの熱演とザック・エフロンの白いパンツ一丁姿が印象に残る良質なサスペンスである。


評価:C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● MOTTAINAI! 映画:『斬る』(三隅研次監督)

1962年大映。
 

 時代劇の巨匠三隅研次監督の美的センスの冴える映像と、雷様こと市川雷蔵の臈たけた魅力を楽しめる作品。

 それだけで十分という気もするが、物語的にはもの足りない。というか、もったいない。

 自死(切腹)で終わる一人の剣客・高倉信吾(=雷蔵)の波乱の生涯を描いた物語なのだが、物語の枷とも動因ともなるのが信吾の出生の秘密である。

 信吾の母親は、自らが仕えていた主君の愛妾を手にかけて打ち首となる。その際の処刑人こそが信吾の父親であった。生まれて間もない信吾は秘密裡に高倉家の養子となり、何も知らないまま成長し、義父を実の父と思い尊敬し、義妹を実の妹と思い可愛がってきたのであった。

 これは物語の枷としては十分すぎる仕掛けである。この秘密を信吾がいつどうやって知るか、知った後に義父や義妹との関係はどう変わるか、この衝撃をどう乗り越えるか、母親の起こした殺人事件の内容をどのように知るか、それをどう受け止めるか、生存している実の父親とどのように再会を果たすか・・・。
 語りどころ満載、見所満載になるはずである。

 しかし、そこがうまく活かされていないのである。

 せっかく観る者を最後まで惹きつける魅力的な仕掛けが用意されていながら、脚本(新藤兼人)が拙いせいで不発に終わってしまっている。

 残念至極。

 同じような出自のトラウマを物語の動因としてうまく活用し展開した『破戒』(市川昆監督)や『源氏物語』(森一生監督)とくらべると、そのもったいなさは明らかである。

 映像が素晴らしいだけにかえって惜しまれる。



 

評価:C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
   
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 


 


● 映画:『日本女侠伝 真赤な度胸花』(降旗康男監督)

 1970年東映。

 藤純子主演の日本女侠伝シリーズ第2弾。
 開拓時代の北海道が舞台となる西部劇風ドラマである。
 普段はきっちりと帯を締めた着物に結い上げた髪も艶やかな藤純子が、『二十四の瞳』の女教師の如く、洋装に髪を長くたらし上品な日本語をあやつる姿は、「おっ」と思うほど新鮮である。すっきりした顎のラインと典雅なたたずまい、声優の池田昌子によく似た声は、オードリー・ヘップバーンを思わせる。
 藤純子とヘップバーン。まったく思いもつかなかった相似に惑乱する。
 西部劇で言えば「シェーン」のように、風のように現われて風のように去っていく高倉健も相変わらず渋くてカッコいい。
 高倉健演じる風見五郎が藤純子演じる松尾雪に愛を告白するシーンの気障っぽさといったら、ほとんどポエムである。アイ・ラブ・ユーという言葉を持たないこの時代の日本人が、いきなり相手を奪うのではなしに(とりわけそれはストイックな健さんには許されない)、相手に気持ちを伝えるには、どうしても歯の浮いたセリフと気の利いた演出を用意しなければならない。それが日本映画の恋愛シーンの繊細さ(あるいは歯がゆさ)を生んできたのであろう。
 冗談とも本気ともつかぬ口調で「お前に惚れたんだ」と欲望まるだしで雪に迫るトッカリ松(=山本麟一)を歯牙にもかけず、「アイ・ラブ・ユー」を言わない(言えない)風見五郎を選びとる雪の姿勢に、日本人の言葉に対する不信を読むと言ったらうがちすぎだろうか。




評価:C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


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