ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

評価C+

● 映画:『その男は、静かな隣人』(フランク・カベロ監督)

 2007年アメリカ。

 原題はHE WAS A QUIET MAN.
 犯罪が起こった時に犯人を知る隣人たちがテレビカメラに向かってよく言うセリフである。日本語にするなら、「大人しそうな人でしたよ」ってところか。
 この「大人しそうな」男の内面を描いた映画である。

 カメラも良く、テンポも良く、諧謔精神に富み、退屈することなく観られる。
 しかるに、後味が悪い。
 最近よくある「夢落ち」もの。つまり、話の流れのある一点(映画の一場面)で時間は止まっていて、それ以降画面に流れるストーリーは主人公の夢や妄想や白昼夢であった、それが結末に至って暴露される、という構成。
 物語につきあう側からすると、「夢落ち」はある意味反則だと思うので、よほど巧い使われ方をしないと、落胆するか頭に来てしまう。「ここまで観る者を引っ張っておいて、その決着はないだろう」と感じてしまうからだ。
 今まで観た映画の中で「夢落ち」が巧く機能していると思ったのは、『未来世紀ブラジル』(1985年)、『オープン・ユア・アイズ』(1997年)、『パッセンジャー』(2008年)、『ステイ』(2005年)なんかである。いずれも「夢落ち」というトリックが、単なるトリックのためのトリックになっておらず、物語のテーマや主人公の置かれている心理状況と強く絡み合った現象として位置されているので、結末が分かった時に、謎が解けたカタルシスと同時に物語のテーマや主人公の心理がより一層観る者に伝わる仕組みとなっている。
 この『その男は、静かな隣人』は、そう言う意味で、「夢落ち」が失敗しているように思う。それまで延々と語られ、観る者がつきあわされてきた「ほのぼの恋愛サクセスストーリー」が、実は主人公ボブ(クリスチャン・スレイター)が死ぬ前の一瞬の間に頭の中で描いた「夢」だったということを知った時に、あまりいい気持ちがしないのだ。
 なぜなら、観る者は最初のうちこそ、鈍重でオタッキーで野暮ったい窓際会社員ボブに反感を持つとは言わないまでも好意を抱かないけれども、ボブが身体障害者となったヴァネッサ(エリシャ・カスバート)とつきあい始めるあたりから、ボブの不器用さと純情ぶりに共感を持ち始めるからである。つまり、ボブに感情移入し、応援している自分に気づくようになる。これは、クリスチャン・スレイターの演技が素晴らしいからである。そしてたぶん、観る者はこの不器用なボブの後ろに、麻薬や痴漢や拳銃不法所持などの不始末を重ね続ける不器用な役者クリスチャン・スレイターの姿を重ね合わせる。応援したくなるのが人情ではないか。
 そこに来て「すべては夢でした」はあんまりだと思うのである。

 作り手の狙いとしては、競争社会の落ちこぼれが抱えたストレスと精神の病みが一縷の望みのごとく紡ぎ出す妄想と、その絶望的な末路を描くことで、現代社会の不条理を伝えたかったのだろう。
 が、現代社会の不条理というもはや陳腐なテーマを伝えるのに「夢落ち」が許容できるかという点は於くとしても、クリスチャン・スレイターはミスキャストであろう。

 


評価: C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


 


● ジュリアン・ムーアの顔 映画:『NEXT-ネクスト』(リー・タマホリ監督)

 2007年アメリカ。

 2分先の自分の未来が見える男(ニコラス・ケージ)が、核弾頭によるテロを阻止するためにFBI(ジュリアン・ムーアら)に協力する。
 サスペンス&アクションと言ってよいのだが、最後まで見るとサイキック&ラブファンタジーと訂正したくなるかもしれない。
 ニコラスもジュリアン・ムーアも達者な役者であるし、脚本も凝っているし、最初から最後まで楽しく観られる。悪くない。


 それにしても、ジュリアン・ムーアという女優は本当に出演作が多い。
 92年の『ゆりかごを揺らす手』からほぼ毎年のように映画に出演し続けている。一年に4本という年もある。いったいどうスケジュールをこなしているのだろう? いつ休んでいるのだろう? なんでこんなに立て続けに出るんだろう? 莫大な借金でもあるのか?

 しかも、『めぐりあう時間たち』(2002年)や『エデンより彼方に』(2002年)のような文芸調ドラマから、ジョディ・フォスターの代役で彼女を一躍有名にした『ハンニバル』(2001年)や『フォーガットン』(2004年)のようなスリラー、SF(『ブラインドネス』2008年)も、ホラー(『シェルター』2009年)も、コメディ(『ビッグ・リボウスキ』1998年)も、もちろんアクションもこなしている。
 どの作品においても失敗と言える演技、はまっていない役柄がない。
 これはすごいことである。

 彼女は美人ではない。
 特徴のある顔立ちだが、ジュディ・フォスターの代役として選ばれたことで分かるように、どっかの誰かに似ていると観る者に思わせてしまう、二番煎じの顔なのだ。自分は彼女を見ると、ジョディとマドンナとメルリ・ストリープをダブらせて(トリプらせて)しまう。

 あまりに次々と出演する器用貧乏さと、二番煎じの顔立ち。
 それが彼女にとってマイナスに働いているような気がする。
 さもなくば、とっくにオスカーを獲っている女優であろう。

 じっくり腰を落ち着けて、ヨーロッパ映画にでも出たら彼女の類い希なる名優ぶりが発揮されると思うのだが・・・・。



評価: C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」 
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!




 


 
 

● 映画:『テンペスト』(ジュリー・テイモア監督)

 2010年アメリカ映画。

 言わずと知れたシェイクスピアのラストメッセージTHE TEMPEST(嵐)の映画化である。

 いまや映像芸術はCG全盛の時代であるが、CGの効果がもっとも生かされるジャンルはファンタジーではないだろうか。
 もちろん、SFやホラーや戦闘ものもCG技術の向上によって多大なる恩恵にあずかった。スーパーノヴァの爆風に宇宙空間を木の葉のように錐揉みしていく宇宙船だろが、人間の内臓を喰らう見るも恐ろしいグロテスクな怪物だろうが、何万という兵士たちが大草原を兜と旗の色とで塗り替えていくシーンだろうが、CGを使えば簡単に低予算で実現できる。今や、人の頭の中で想像するもので作れない映像はないと言っても過言ではないだろう。
 SFやホラーや戦闘ものが多かれ少なかれ物語を語るためにCGを利用するのにくらべ、ファンタジーというジャンルは物語もあるにはあるが、非日常的な夢のような魔法のような現象が目の前におきているという、まさにそのこと自体に特徴があり魅力がある。つまり、夢のような魔法のような視覚体験を紡ぎだすことがファンタジーの使命である。
 であるから、CGはファンタジーというジャンルにおいて、その進歩のほどを存分に発揮できると思うのである。

 シェイクスピアのあまたある作品中、もっともファンタジー色の強いのは『真夏の世の夢』と『テンペスト』であろう。とくに、主役のプロスペローが縦横無尽に魔法を使う『テンペスト』こそ、CGによる映像化が待ち望まれていたと言ってよい。
 そんなわけで、期待大でレンタルした。

 さて、CGによる映像そのものは可もなく不可もなく、「まあ、こんなところかなあ」という仕上がりである。なかなか『ザ・セル』(ターセム監督)レベルの映像表現はお目にかかれない。
 面白いと思ったのは、主役のプロスペローを原作の男から女へと変更している点である。

 ミラノの王であったプロスペローは、実の弟とそれにつるんだナポリ王たちの陰謀により失脚し、3歳の娘ミランダともども、島流しの憂き目にあう。辿り着いた島で、臥薪嘗胆、魔術の腕を磨きながら復讐の時を待つ。12年後、島の近くを仇の男たちが船で通り過ぎる。ついに、そのときがやってきた。プロスペローは船を遭難させるべく、魔術を使って嵐を巻き起こす。


 プロスペローを演じるは、イギリスの誇る名女優ヘレン・ミレン。エリザベス二世を演じた『クイーン』(スティーブン・フリアーズ監督、2006年)で主演女優賞を総なめにしたのが記憶に新しい。
 現代でも、イギリスで名役者と言われる条件は変わらない。シェイクスピアを演じられることである。ヘレン・ミレンは、見事にシェイクスピアの古めかしくて、長くて、難しいセリフを自分のものにしている。その上、原作では男であり王であり父親であるプロスペローを、女として女王として母親としてリアリティもってつくりかえて、まったく不自然を感じさせない。さすがである。

 この女プロスペローを見ていて、たくまず思い起こしたのはモーツァルトのオペラ『魔笛』に出てくる夜の女王であった。崖の上で魔法の杖を振り回し、仇の男たちの乗る船に向かって雄叫びを上げるミレンのプロスペローは、まさにコロラトゥーラでザラストロを罵倒する夜の女王そのものである。自然と両者の比較してしまうのである。

 『魔笛』は、父権社会の象徴たるザラストロと、母権社会の象徴たる夜の女王が、二人の間にできた娘パミーナを取り合っていがみあうストーリーである。パミーナの肖像に一目惚れした若者タミーノは、ザラストロに誘拐されたパミーナを助けるよう夜の女王に頼まれる。取り戻せば、娘はお前のものと約束を得て。
 若者はザラストロのところへと向かうが、どうやら悪いのはザラストロではなく夜の女王の方であると知る。何かの教団の長であるザラストロは、パミーナを求めるタミーノに試練を与える。その試練に耐え抜き合格したタミーノは、晴れて教団の一員として認められ、パミーナを得る。

 単純に言えば、青年が通過儀礼を乗り越えて男社会(父権社会)の一員となって恋する女を獲得する物語である。(こうダイジェストするとミもフタもないな~)
 自分が『魔笛』をその素晴らしい音楽にもかかわらず、どうも好きになれない、とくに途中からつまらないと思ってしまうのは、このストーリー構造が気に入らないからである。ザラストロより夜の女王の方が数段魅力的である。(与えられている歌の点でも)
 ザラストロを長とする教団とは、モーツァルトが入会していたというフリーメーソンだという説がある。そうなのかもしれない。ただ、それを超えて、このストーリーは父権社会の構造を「よし」とする圧力が全編みなぎっている。


 『テンペスト』でも、これとよく似た仕掛けが見られる。
 ナポリの王子であるファーディナンドは、遭難したあと、島で出会ったプロスペローの娘ミランダに一目惚れする。しかし、ミランダを手に入れるためにはプロスペローから与えられた試練を乗り越えなければならない。最終的には、無事試練を潜り抜け、ミランダの手をとることを許される。


 プロスペローを男から女へと変えたことによって、ジュリー・テイモア監督とヘレン・ミレンは、この作品に新しい視点をもたらした。
 男たちの陰謀によって娘ともども島流しにあい、男たちへの復讐を誓いつつ魔法の腕を磨き、雌伏12年、ついに男たちに報復する機会を得た女プロスペローの「男社会への闘い」の物語と読めるのである。(「雌伏」とは、まさにメスが伏せることだなあ。)
 その文脈では、王子ファーディナンドの受ける試練の意味も変わってくる。『魔笛』とは逆に、若者に試練を施し、若者が一人前になったと承認するのは娘の母親なのであるから。
 女プロスペローにとっては、自分の大切な娘を、自分を虐げた男社会の一員であり、やがてはそれを継ぐことになる青年に、そのままの形で託したくないに違いない。だから、彼女が青年に与える試練は、「男社会の一員たれ」というものではないと想定される。

 さしものシェイクスピアもモーツァルトもこんな展開が有りうるとは予想しなかったであろう。



評価: C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


●  映画:『ヴェネツィア・コード』(ティム・ディスニー監督)

 2004年ルクセンブルク・オランダ・スペイン・イギリス・アメリカ・イタリア制作。

giorgione_tempesta01 原題は『TEMPESTA(嵐)』。
 ルネッサンスの巨匠ジョルジョーネの代表作にして、ヴェネツィア(ベニス)はアカデミア美術館所蔵の西洋絵画史上最も議論かまびすしい作品。
 この作品の盗難をめぐって、水の都ベニスを舞台に繰り広げられる連続殺人と贋作事件と運命的な恋とをミステリー仕立てで描いた映画である。

 まず、画面の美しさを讃えなければなるまい。
 それもそのはず。ベニス&世界的名画、である。美しくなければウソである。美しくなければ撮る意味がない。
 しかも、美しいだけでなく、ベニスという古都が持つ類いまれなる魅力―張り巡らされた水路、迷路のように入り組んだ街路、靴音の響く石畳、噴水のある広場、そこかしこに息づく暗がり、いくつもの瀟洒な橋、ゴンドラ、海に浮かぶ蜃気楼のごとき鐘楼、そして、マントと仮面の彩りとが旅人を中世にタイムスリップさせるカーニバル。こうした道具立てを上手に使って、ミステリーと恋という二つの物語をからませながら盛り上げていく。たいした手腕と感心する。
 そう、真の主役はベニスと言えるかもしれない。

 となると、やはり持ち出したくなるのは、ヴィスコンティ『ベニスに死す』である。
 世界的に有名な作曲家が旅先のベニスで出会った美少年タジオの虜となり、街を襲うコレラもものともせず少年の追っかけを敢行。ついには罹患し、浜辺で少年を眺めながら息絶えていく。テーマは、自然の「美」の前に屈する芸術、「愛」の前に投げ出す人生。

 『ヴェネツィア・コード』もまた、腕のいい絵画鑑定士(元画家)が出張先のベニスで出会った美女の虜となり、殺人犯の濡れ衣を着せられながらも危ない橋を渡り続け、女のためにまっとうな人生から転落し、最後には命を落としてしまう。彼が選んだのも芸術より人生より「愛」であった。『ベニスに死す』の高踏的な文学性(原作がトーマス・マンだから当然だが)とくらべると、センセーショナルで俗っぽくはあるが、狙うところは一緒であろう。

 人生の成功者となるよりも破滅的な愛を、平凡な日常の気の遠くなるような繰り返しよりもつかの間の甘美なる陶酔を。そんな選択を人にさせてしまう、そんな心の奥の願望を表に引っ張り出してしまう力が、ベニスという街にはある。
 それこそがベニス最大の謎であろう。

 ミステリーとしては底が割れていて、最後に明かされる真犯人に驚きもしなければ、盗まれた絵画をめぐる謎に『ダヴィンチ・コード』のような奇想天外な解釈が用意されているわけではない。
 そこはいいのだが・・・・。

 人生が破滅しても悔いはないと主役の鑑定士に思わせるほどの「運命の女」とやらが、ジョルジョーネの『嵐』に描かれている女はもとより、『ベニスに死す』のタジオの魅力にもまったく及んでいないのが、残念至極である。



評価: C+

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」  
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


 

● 映画:『チェックメイト』(エリック・テシエ監督)

 2009年フランス映画。

 希望の映画学校への入学が決まり、ルンルン気分で(いつの流行語だ!)自転車で走っているところ、目の前を黒猫が横切る。急ブレーキで転倒。ケガした手を洗うためにたまたま入った最寄りの家で、監禁されている瀕死の男を発見。
 結果、ヤニックもまたその家の主人ジャックに捕らわれることになる。
 だから、「他人の家に勝手に入ってはいけない」ってあれほど言ったのに。(聞こえてないか・・・。)

 よくある展開である。
 定石通りならば、この主人はこれまでにすでに何十人も拉致監禁殺害している異常性格者にして残虐な殺人鬼であり、家の地下にはこれまで殺した男や女の死体や骸骨がゴロゴロと塁をなしている。捕らえられた獲物は、必死に逃げだそうとあの手この手を使って奮闘するが、いいところまで行っては捕食者に見つかっておじゃんになる。そのうち、肉体だけでなく精神的にも衰弱し、幻覚が見えたり幻聴が聞こえたり・・・。
 というところであるが、実際まさにその通りに展開するのだから、マンネリズムに通常なら退屈しそうなものである。
 
 定石の退屈さ、凡庸さからこの作品を切り離しているのは、フランスならではの軽妙なエスプリがところどころ効いていて、思わず吹き出すとまではいかないけれど、日本やハリウッドの同種の作品ならば主人公の陥った状況の過酷さにこっちも緊張して固唾を呑んで観てしまうところ、なんだかサンドイッチマンのコントでも聞いているような不条理な笑いに口元が緩むのである。

コント1 
 監禁されたヤニックをジャックが夕食に誘う。一緒に階下に降りていくと、そこにはジャックの妻モードと娘二人がくつろいでいる。絵に書いたようなありきたりの家族の日常風景。隙を見て逃げようとしたヤニックを、ジャックが止めようと殴りつける。それを見たモードのセリフ。
「あなた、子供たちの前ではしない約束よ」

コント2
 2階から飛び降り逃げようとするヤニックを、娘のミッシェルが庭で待ち伏せしていて、バッドでヤニックの足を何度も殴りつける。それを見て怒るジャックのセリフ。
「無用な暴力はいかんと言ったろ。部屋に行ってろ。今夜はテレビはなしだ」

コント3
 翌朝、甲斐甲斐しくヤニックの足の手当てをするジャック。ミシェルを連れてきて、ヤニックに詫びを入れさせる。
「許してくれ。娘に悪気はないんだ」

 と、こんな調子である。
 人を平気で殺す殺人鬼でありながら、妻や娘に尊敬される父親で、平凡なタクシードライバーで、親切なんだか残酷なんだか、異常なんだかまともなんだかよくわからない、というジャックの不条理な性格が、こうした不条理な笑いを生んでいるのであり、ヤニック同様、観ている我々も混乱の極みに置かれる。

 が、この不可解さには理由がある。
 ジャックには、神の命のもと自分が正義を行っているという確固たる信念があり、悪人を見つけ出して退治することを自分の使命と信じているのである。であればこそ、彼には彼なりのルールがある。
「無用な暴力、無用な残酷さは罪である。殺すときは一気にとどめを刺すべし。」
 家族も共有しているこの信仰をのぞけば、あとはまったく普通の家庭なのである。拉致監禁中のジャックがまるで客人であるかのように同じテーブルで夕食をとり、一家団欒し、食後は父と娘はチェスを行い・・・。
 このへんてこなギャップがこの作品の一番の見所であろう。

 チェスの達人であるジャックは、ヤニックに告げる。
 「一回でも私に勝ったら、君は自由だ」
 そうして、二人は毎晩チェスをするようになる。
 負け続けるヤニック。監禁されて他に気を紛らすものがないことも手伝って、ヤニックは次第に勝負にのめり込んでいく。
(絶対にジャックに勝ってやる!)
 しまいに、それは妄執となる。せっかく逃げだす機会をモードがつくってくれたのに、ヤニックはそれを拒絶し、ジャックとの勝敗をつけるために家にとどまる。

 ヤニックがどうしてもジャックに勝ちたいと思うのは、単にチェスの魔力に引き込まれたとか、負けず嫌いであるとか、男の意地とか、ジャックを打ち負かしてジャックの信仰の間違いを正したいとかいうのではなく、ジャックの後ろに自分の支配的な父親の姿を見るからである。ジャックに勝つことは、ヤニックが個人として自立するための通過儀礼なのである。
 なるほどなあ~、やっぱり欧米人のエディプス・コンプレックスって強いんだなあ~。
 
 かくも父親像が確固として強く立ちはだかるのは、キリスト教徒の欧米人は、父親の後ろに「神」を見るからなのだろう。
 近代的自我の確立が神を倒すことから始まったことを思えば、この構造は手に取るようにわかりやすい。
 
 最後のゲームでは、ヤニックがいいところまで行ってジャックを破れるかと思いきや、邪魔が入って結局決着がつかないまま終わってしまう。事件は警察に知られるところとなり、ジャックは捕まり、ヤニックは自由の身となる。
 しかし、精神的にはヤニックはなお捕らえられたままである。
 倒すべき神がいないモラトリアムの牢獄にー。
 
 思ったより深い作品である。



評価: C+


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!





● 映画:『パーフェクト・ゲッタウェイ』(デヴィッド・トゥーヒー監督)

 2009年アメリカ映画。

 タイトルが良くない。
 というか、これは原題なので仕方ないとしても、なぜ適当な邦訳をつけないのだろうか。
 ミラ・ジョヴォヴィッチ主演をいいことに、『バイオハザード』のようなSFアクションと勘違いさせる為か。
 『とんだカップル~血塗られたビーチ』なんてのはどうか?
 『欺かれたハネムーン』は?
 『殺楽園』は?・・・。
 
 途中までかったるい。
 奇跡のように美しいハワイの風光明媚がなければ、とても見続けられない。
 ある一点を境に、物語が逆転し、驚くのもつかの間、あとはジ・エンドまで一気呵成のスリラー&アクション。
 見終わったあとに、もう一度最初から一つ一つのシーンを確認したくなること請け合い。主役二人のせりふの掛け合いや表情、彼らの一つ一つの行動とその理由などを確認する楽しみが待っている。
 すると、なるほどうまいこと作られているなあ~、と感心する。

 レオナルド・デカプリオの『シャッター・アイランド』同様、語りそのものがトリックという点で、アガサ・クリスティの有名な戯曲を想起した。
 しかし、トリックをのぞいたら、凡庸な作品。
 


評価: C+

参考: 

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 

「東京物語」 「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。

「風と共に去りぬ」 「未来世紀ブラジル」 「シャイニング」 「未知との遭遇」 「父、帰る」 「フィールド・オブ・ドリームス」 「ベニスに死す」 「ザ・セル」 「スティング」 「フライング・ハイ」 「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」 「フィアレス」 ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。

「アザーズ」 「ポルターガイスト」 「コンタクト」 「ギャラクシークエスト」 「白いカラス」 「アメリカン・ビューティー」 「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。

「グラディエーター」 「ハムナプトラ」 「マトリックス」 「アウトブレイク」 「タイタニック」 「アイデンティティ」 「CUBU」 「ボーイズ・ドント・クライ」 チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)

「アルマゲドン」 「ニューシネマパラダイス」 「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ~。不満が残る。

「お葬式」 「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった

「レオン」 「パッション」 「マディソン郡の橋」 「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● 映画:風の中のめんどり(小津安二郎監督)

 風の中の雌鳥1948年松竹。

 日本が無条件降伏してから3年後に撮った映画である。
 映画の中の時代背景も舞台も状況設定も、そのまま当時の日本(東京)とみていいだろう。
 その意味では、リアリズム映画と言える。よくあったであろう話。

 出来としては、当時の批評家の評した通り、そして小津監督自身が言った通り、「失敗作」なのだろう。84分という短い上映時間にかかわらず、長く感じてしまったあたりにそれが表れている。

 見るべきは、主役の田中絹代の演技となる。
 この人はぜんぜん美人じゃないけど、存在感は尋常じゃない。この人とからむと、あの京マチコでさえ食われてしまう。(『雨月物語』) 女の情念や愚かさや一途さを演じたら、この人の右に出る女優は昔も今もそうそういないだろう。
 そして、なんとなく小津監督もこの人の演技にひきずられてしまったのではないかという感じがする。
 というのは、小津映画にあっては役者の過剰な演技力は‘余分’であるからだ。それは、もっとも小津映画で輝いたのが、笠智衆と原節子であったことからも知られる。笠も原もなんだかんだいって、決して上手い役者ではない。少なくとも、同様に小津映画の常連であった杉村春子や『東京物語』の東山千栄子のように新劇的な意味で演技できる役者では、全然ない。
 だが、小津が自らのスタイルを確立する上で必要としたものを二人は持っていた。
 立体的で虚ろな顔と、純潔なたたずまい。
 言ってみれば、二人のありようこそが、真っ白なスクリーンかキャンバスみたいなもので、あとは小津マジックで、場面場面で必要な様々な感情や印象を二人の役者に投影して見せることができたのだ。そこで変に演技されると、小津スタイルを壊してしまう。

 病気になった子供の看病をするシーン。布団に横たわっている子供の顔をしゃがんでのぞき込む田中絹代は、スクリーンの中心から左半分にいる。子供の姿はそのまた左側なのでスクリーンに入っていない。凡庸な監督ならば、心配する母親の顔が画面中央に来るようにして、子供の寝姿と共に撮すだろう。
 この不思議な構図で我々の目が惹きつけられるのは、スクリーンの右半分、小卓に置かれたビールかなにかの瓶である。表面の光沢と物体としての重さ。その異様なまでの存在感。
 「物(自然を含む」)と「人」とが等価値で、時には「物」の方が尊重されて、スクリーン上に配置される。語ることなく動じることなく、ただそこにある「物」の世界の中に、ほんの一時、顕れてはドラマを演じ消えていく人間達。  
 「物」と「人」との絶妙なバランスこそが、小津スタイルの刻印である。

 杉村も東山も日本の演劇史に大きな足跡を残す名優ではあるが、微妙なところで、小津スタイルを壊すことなく、むしろ、持ち前の演技力によって逆に小津スタイルを浮きだたせる役割りを担っている。それは、小津の使い方がよかったのか、杉村や東山の呑み込みがよかったのか。きっと、もともとそれほど芝居をさせてもらえるようなテーマや脚本や役柄ではなかったことが大きいのだと思う。(杉村春子主演で小津が監督したら、やっぱり失敗作になると思う。)
 この映画での田中絹代は、小津スタイルにはまりきれていない。容貌ももちろんそうだが、何より本気で芝居している。この脚本と状況設定とでは、そうするよりほかないだろう。そう撮るよりほかないだろう。
 田中絹代は、役者に十分演技させながら独特の美を造形していく溝口スタイルにこそ向いているのだ。(『西鶴一代女』) 


 結論として、テーマ自体が小津スタイルには向いていなかったということである。

 それにしても、この翌年に『晩春』を撮っていることが驚きである。
 なんとなく、60年代くらいの映画と思ってしまうのだが、『晩春』も無条件降伏からたった4年後の話なのだ。




 評価:C+

参考: 

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
         「東京物語」 「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
         「風と共に去りぬ」 「未来世紀ブラジル」 「シャイニング」 「未知との遭遇」 
         「父、帰る」 「フィールド・オブ・ドリームス」 「ベニスに死す」 「ザ・セル」
         「スティング」 「フライング・ハイ」 「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」
         「フィアレス」 ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
         「アザーズ」 「ポルターガイスト」 「コンタクト」 「ギャラクシークエスト」 「白いカラス」 
         「アメリカン・ビューティー」 「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
         「グラディエーター」 「ハムナプトラ」 「マトリックス」 「アウトブレイク」
         「タイタニック」 「アイデンティティ」 「CUBU」 「ボーイズ・ドント・クライ」 
         チャップリンの作品たち   


C+ ・・・・・ 退屈しのぎにはちょうどよい。レンタルで十分。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
         「アルマゲドン」 「ニューシネマパラダイス」 「アナコンダ」 「ロッキー・シリーズ」

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ~。不満が残る。 「お葬式」 「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
         「レオン」 「パッション」 「マディソン郡の橋」 「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。もう二度とこの監督にはつかまらない。金返せ~!!





● 映画:フェーズ6(アレックス・パストール監督)

2009年アメリカ映画

TUTAYAでは「モンスター」のカテゴリーに分類されていたが、近未来SF&パニックものといったところ。
致死率100%の未知のウイルスによる感染拡大で人類が滅びていく中、感染を避けるために車で逃走する4人の男女の顚末を描く。タイトルの「フェーズ6」とは、パンデミック(感染拡大)に対する対策レベル(=危険レベル)を表す業界用語である。

4人の主役の一人クリス・パインはどこかで見たことあると思ったら、「スター・トレック」(2009年公開)で、若き日のカーク艦長役をやっている。あのときは、金髪、紅顔の美少年という面立ちだったが、今回は、かなりワイルドで、汗臭さと酒臭さが匂ってきそうな野郎を演じている。それが過不足無くはまっているからには、なかなかの演技派と見ていいだろう。たんなるイケメン俳優では終わらない、そう、うまく年取ったらケビン・ベーコンのようになるんじゃないか。

おまけのお楽しみとしては、「デスパレートな妻たち」を見ていた人には、途中でよく知った顔が出てくる。マーク・モーゼスという名の俳優だが、一目見れば「ああ!」と声を上げるだろう。

物語そのものは、特にこれまでのウイルスパニックものと一線を画すような新機軸は見られず、終わり方も明るいものでない。まあ、最後の最後になって特効薬(ワクチン)発見!!みたいな、ハリウッドハッピーエンドは、かえって陳腐だろうから、それを避けたのは賢明か。

シナリオにだるさはないし、作りも役者も平均レベルには達しているから、退屈しのぎにはなる。クリス・パイン的イケメンが好きな人は楽しめるだろう。



評価:C+

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドン
ト・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!



記事検索
最新記事
月別アーカイブ
最新コメント
ソルティはかたへのメッセージ

ブログ管理者に非公開のメッセージが届きます。ブログへの掲載はいたしません。★★★

名前
メール
本文