ソルティはかた、かく語りき

首都圏に住まうオス猫ブロガー。 還暦まで生きて、もはやバケ猫化している。 本を読み、映画を観て、音楽を聴いて、寺社仏閣に詣で、 旅に出て、山に登って、瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

評価C-

● 文楽の可能性 映画:『心中天網島』(篠田正浩監督)

1969年表現社、ATG製作

原作 近松門左衛門
脚本 富岡多恵子、武満徹、篠田正浩
音楽 武満徹
撮影 成島東一郎
上映時間 103分

 本作の一番の特色は、通常の劇映画のように写実的な屋内セットやリアリティあるロケ現場を物語の背景として用意するのではなくて、モノクロのシュルレアリズム絵画のような書き割り満載の、しかし簡素極まりない人工照明の舞台装置の中を、歌舞伎や文楽に欠かせない黒衣(くろご)たちが物語の進行を助けるために縦横無尽に動き回る――という実験的・前衛的手法を用いているところにある。
 低予算を逆手に取った奇策であると同時に、原作本来の表現形式である人形浄瑠璃や歌舞伎の雰囲気を色濃く漂わせる妙案でもある。「近松の世界はすべて外は闇で、光の当たっている部分に人間がいる」という篠田監督の解釈がこうした発想につながったらしい。確かに、抽象的で色彩も広がりも持たない演技空間のおかげで物語の閉塞性が強調されている。つまるところすべてのドラマは、狭い人間関係の中で生じていることであり、登場人物の心の中で起こっていることである。端的に言えば、物語とは「自我」の別称なのだから。
 色彩と広がりのない息苦しさは観る者を苛立たせ、疲れさせ、ともすれば集中力を途切れさせるリスクがある。ソルティの近い席のおやじは途中から大きなイビキをかいていた。もちろん叩き起こした。
 だが、野心的な試みは十分評価できよう。

 ソルティはこれまで歌舞伎はともかく、文楽(人形浄瑠璃)は観たことがないので、その芸術的特質というものに疎い。なのではずしているかもしれないが、黒衣たちが人形を操って一定の空間の中で物語を進めていく手法は、いわゆる「メタフィクション」効果があると思う。時代物でも世話物でも、戦記物でも心中物でも、物語そのものを登場人物に感情移入して楽しんだり、人形遣いの見事な腕に感嘆したり、人形の着物や顔の美しさに感動したり、義太夫節や三味線の巧みさに唸ったり・・・というオリジナルな楽しみ方とは別に、人間(人形)たちの織りなすドラマを、本人の知らないうちに外側から操って予定通りの結末に導いていく「操り手」の力を感じ取ることができる。
 これすなわち「宿命」である。
 映画『心中天網島』でも、黒衣たちが文字通り暗躍し、愛し合う男女の心中という悲劇的結末に向かっていくストーリーに積極的に手を貸している。たとえば、ラストシーンでおさん(=岩下志麻)を殺めようとする治兵衛(=中村吉右衛門)の手にどこからか調達した刀を握らせる、その後首つり自殺しようとする治兵衛の首にご丁寧にも紐をかけてやるというふうに・・・。すべては個人の意思とは関係ないところで決められていて、あらかじめ運命の決めたストーリーを個人はプログラム通りに後追いするだけだ(しかし個人はおめでたいことにそのことにまったく気づかない)。
 ――という、ある種の「脱・フィクション観」「反・物語論」をこの映画から感じ取ることができたのであるが、篠田監督が制作当時(1969年)、そこまで意識して撮ったのかは怪しいところである。篠田監督の才能云々の話ではなく、当時はまだまだ「物語」の力が圧倒的に強かったであろうから。その証拠に、たとえば岩下志麻の迫真の演技はまさに「物語」の力そのもので、それを疑わせるような演出上の仕掛け――たとえば筋の随所で出演俳優を象った人形を示すとか――はみじんもない。
 それにつけても志麻姐さんの演技は不思議である。いつも「巧いかどうか」という判定を観る者にさせないほどの美貌と声の威力と高テンションで、最後まで押し切ってしまう。

 篠田の才ということで言えば、やっぱり男優が魅力的でない。『鬼平犯科帳』でブレークした2代目中村吉右衛門はなるほど美男でもセクシーでもないけれど、この治兵衛はあまりに冴えない。主役にふさわしい華を欠いている。愛妻(恐妻?)岩下の相手役ということで、演出の腰が引けたのであろうか。結果、『鑓の権三』と同じ欠陥にはまっている。

 「物語」のメタフィクション化が一般的になった現在、文楽の可能性は広がっているように思われる。
 一度観に行ってみるか。

 

評価:C-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!





● 映画 : 『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』(ビル・コンドン監督)

2015年イギリス・アメリカ制作
上映時間104分


 名探偵シャーロック・ホームズを主人公とするパスティーシュ(模倣作)。
 コナン・ドイル原作本の映画化と思うと裏切られる。どころか、ドイルの原作やこれまでテレビや映画に登場したホームズ像に近いものを期待していると、大いに裏切られることになる。

 『ロード・オブ・ザ・リング』『X-MEN』シリーズで知られる名優イアン・マッケラン(組合仲間)がここで演じているのは、引退した93歳のよぼよぼシャーロックであり、なんたることか認知症と闘うホームズなのである。世紀の名探偵も歳には勝てない。あの記憶力抜群で数学と論理に長けたホームズが、白髪頭を振り振り、「憶いだせん・・・」と呟くのを見ることになるとは・・・!
 イアン・マッケランは1939年生まれだから撮影当時76歳。日本なら後期高齢者だが役者としてはまだまだ十分現役。いまだかつてだれもチャレンジしたことがない(多分)であろう90代のホームズを違和感なく見事に演じているのはさすが。老いて顔が痩せてますますあの有名な鷲鼻も目立っている。

 認知症状を軽減する効能があるという山椒魚を求めて、ホームズが戦後間もない日本を旅するシーンがある。ホームズの案内役として真田広之が出演しているのも見所である。
 実際にはホームズが日本に来たという逸話はないはずである。でも、二重の意味で作りごととは承知しているものの、ソルティのようなシャーロキアンにとって、ホームズの来日譚は素直にうれしい。ただ、被爆後の広島を訪れるあまりの無謀さは科学者ホームズらしくない。
 
 肝心の最後の事件の中味と謎解き自体は、とても目覚しいものとは言えず。


 
評価:C-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!




 

● 閻魔帳、あるいは映画:『クラウド アトラス』(ウォシャウスキー姉妹、トム・ティクヴァ監督)

2012年ドイツ、アメリカ、中国、シンガポール製作。

 不滅の魂の本質は言葉や行いによって決定され、その因果の中、我々は永遠に生き続ける。命は自分のものではない。子宮から墓場まで、人々は他者とつながる。過去も現在も。すべての罪が、あらゆる善意が、未来をつくる。

 登場人物の一人、未来社会に生きるクローン少女ソンミ451の上記のセリフに見るように、この映画の中心テーマは「輪廻転生、因果応報」である。
 『マトリックス』のウォシャウスキー姉妹(←姉弟←兄弟)が「輪廻転生」をテーマとした映画に挑んだと来れば、もう期待するなと言うほうが無理である。
 案の定、172分の長尺をものともせずに、3回繰り返して観てしまった。
 1度目は、筋を追い、登場人物を見極め、複雑な構成を見抜くのに手一杯で、「あれよあれよ」という間に終わってしまった。ウィキペディアクラウド アトラスで蓄えた知識をもとに臨んだ2度目は、構成の巧みさ、俳優たちに施されたメイキャップ技術の凄さ、テーマ曲『クラウド・アトラス六重奏』の美しさ――坂本龍一の『エナジー・フロー』に似ている――などに感心しつつ、ソンミの言葉に涙した。2倍速で観た3度目で、巧緻に編まれたこの作品の綻びが顕わになった。
 
 原作はデイヴィッド・ミッチェルというイギリス生まれの作家の同名小説である。日本に数年間住んでいたことがあり、日本人女性と結婚し、今は二人の子供とともにアイルランドに住んでいる。子供の一人は自閉症であり、その息子を理解したいと願っているところに出会ったのが、東田直樹の書いた『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』であった。東田の本を読んでいたく感激したミッチェルは、夫人と共に東田の本を英訳し、世界に紹介した。
 なんだか『クラウド アトラス』を地で行くような因縁めいた話である。
 
 この映画は、時代と場所の異なる6つの物語からできている。登場人物も、ただ一人(物理学者のルーファス・シックススミス)をのぞき、それぞれの物語間で合い重なることはない。
 ただ、それぞれの物語の主人公には共通の特徴がある。体のどこかに流れ星型の小さい痣(あざ)がついているのである。6人は、生きる時代・場所はむろん、性別も階級も性格も人種も様々であるけれど、この痣の存在を通じて、そして共通して与えられた使命――自由を求めて抑圧的な力と闘う――を通じて、同じ一つの魂の分離体であることが知られる。つまり、輪廻転生している。
 この仕掛けは、おそらくデイヴィッド・ミッチェルが敬愛する三島由紀夫の最後の小説『豊饒の海』4部作にヒントを得ているのだろう。あの小説では、転生する主人公の徴となったのは、脇の下の三つの黒子(ほくろ)であった。
 
 スピリチュアルの世界でよく言われるように、今生で深い関係を持つ人間とは前世でも出会っている。来世でも出会うことになる。前世で夫婦であった二人は、今生では兄弟であるかもしれない、来世では親子であるかもしれない、その次はライバルであるかもしれない・・・・とその都度間柄は変わるのだが、濃い因縁は継続するので、必ず近い関係性をもって転生し、出会うのである。だから、転生するときは個人ではなく、グループで、あたかも同じ船に乗った「運命共同体」として転生する。これをソウルグループ(魂の仲間)と言う。ソウルグループのうち、もっとも近しい、味方となる関係(夫婦や恋人になる場合が多い)をソウルメイトと呼ぶ。
 ソウルグループの成員は、各自がそれぞれ与えられたテーマ(役割)を有しており、そのテーマの成就・克服・繰り返しを目的に多生を生きることになる。これが「宿命」というやつだ。
 第6の物語の舞台が韓国のネオソウル(魂)であるのは偶然ではあるまい。

第1の物語「波乱に満ちた航海の物語」
●とき 1849年
●ところ 南洋の植民地~帰りの船中~アメリカ
●主人公が乗り越えるべきテーマ 奴隷制
●ソウルグループの人間模様
主人公 アダム・ユーイング(弁護士)=ジム・スタージェス
天敵 ヘンリー・グース(医師)
抑圧者 ハスケル・ムーア(奴隷商人、主人公の義理の父)
ソウルメイト オトゥア(逃亡奴隷)、ティルダ(主人公の妻)
●ソルティが連想した映画 『ルーツ』

第2の物語「幻の名曲の誕生秘話」
●とき 1931年
●ところ イギリス
●主人公が乗り越えるべきテーマ 同性愛への偏見
●ソウルグループの人間模様
主人公 ロバート・フロビッシャー(駆け出しの作曲家)=ベン・ウィショー
天敵 ヴィヴィアン・エアズ(有名な作曲家)
抑圧者 フロビッシャーの父親?(登場せず)
ソウルメイト ルーファス・シックススミス(物理学を専攻する学生、主人公の恋男)、ジョカスタ・エアズ(ヴィヴィアンの妻、ユダヤ人)
●第1の物語から継承するキー ユーイングの手記
●連想した映画 『アマデウス』『アナザー・カントリー』 

第3の物語「巨大企業の陰謀」
●ところ 1973年
●ところ アメリカ
●主人公が乗り越えるべきテーマ 資本主義の闇
●ソウルグループの人間模様
主人公 ルイサ・レイ(女性ジャーナリスト)=ハル・ベリー
天敵 ロイド・フックス(原発企業の社長)
抑圧者 ビル・スモーク(殺し屋)
ソウルメイト アイザック・サックス(フックスの会社の社員)、ジョー・ネピア(フックスの用心棒、ルイサの父親の戦友)、ルーファス・シックススミス(物理学者)
●第2の物語から継承するキー フロビッシャーの曲「クラウド・アトラス六重奏」
●連想した映画 『大統領の陰謀』『チャイナ・シンドローム』

第4の物語「ある編集者の大脱走」
●ところ 2012年
●ところ イギリス
●主人公が乗り越えるべきテーマ 管理施設の束縛
●ソウルグループの人間模様
主人公 ティモシー・カベンディッシュ(編集者)=ジム・ブロードベント
天敵 デニー・カベンディッシュ(ティモシーの実兄)
抑圧者 ノークス(老人ホームの女看護師)
ソウルメイト アーシュラ(ティモシーのかつての恋人)、ミークスほか(ホームからの脱走仲間)
●第3の物語から継承するキー 原稿『ルイサ・レイ事件』
●連想した映画 『大脱走』『グリーンマイル』

第5の物語「伝説のクローン少女と革命」
●ところ 2144年
●ところ ネオソウル(韓国)
●主人公が乗り越えるべきテーマ 人間性を剥奪する官僚システム
●ソウルグループの人間模様
主人公 ソンミ451(クローン人間)=ペ・ドゥナ
天敵 リー師(ソンミの雇用者)
抑圧者 メフィ評議員に代表される官僚制度
ソウルメイト ヘジュ・チャン(革命派の闘士)、ユナ939(ソンミの親友)
●第4の物語から継承するキー 映画『カベンディッシュの大災難』
●連想した映画 『マトリックス』『ブレードランナー』『未来世紀ブラジル』

第6の物語「崩壊した地球での戦い」
●ところ 2321年
●ところ どこかの島
●主人公が乗り越えるべきテーマ 心の中の悪魔
●ソウルグループの人間模様
主人公 ザックリー(平和的部族の一員)=トム・ハンクス
天敵 コナ族(食人する部族)
抑圧者 オールド・ジョージ(主人公の心の闇の顕現)
ソウルメイト メロニム(プレシエント族)、アダム(主人公の義弟)
●第5の物語から継承するキー ソンミの遺した言葉
●連想した映画 『ロード・オブ・ザ・リング』『猿の惑星』

 6つの物語の主人公が輪廻転生しているように、天敵や抑圧者やソウルメイトもまた一緒に転生している。
 天敵のテーマは「弱肉強食」である。なので、大概、成功者、権威、金持ちで生まれてくる。第6の物語に至っては、コナ族は文字通り「食人」を習慣としている。
 抑圧者のテーマは「この世には序列がある(差別主義)」。抑圧者は、既存体制を守るため、自由と平等を希求する主人公の意志をくじき、あの手この手を使って抑圧し虐げる。
 ソウルメイトは、理不尽な体制の中で自身虐待されながらも、主人公が真実に目覚めるきっかけをつくる(黒人のオトゥア、ユダヤ人のジョカスタ、アイザック・サックス、クローンのユナ939など)。あるいは、主人公の実質上のパートナーとなる(ティルダ、シックススミス、アーシュラ、ヘジュ・チャン、メロニムなど)。

 こんなふうに解析すると、この壮大な物語の構造が明瞭になってこよう。
 第6の物語は、「コナ族に食べられた部族の歯の化石」と「ザックリーが森の中で発見したアダム・ユーイングの翡翠色のボタン」というキーを介して、第1の物語に回帰する円環構造になっている。輪廻転生は時空を超えて永劫回帰するというわけだ。

 実際よくできているなあ~、面白いなあ~と感心するのだが、一方、どうしても綻びが目に付くのである。
 一つは、第3の物語(1973年)と第4の物語(2012年)が近すぎて、生まれ変わりに支障が生じている点である。
 第3の物語の主人公ルイサ・レイ(想定30代)と第4の物語の主人公ティモシー・カベンディッシュ(想定60代)は、たとえルイサが1973年に突然死したとしても、生まれ変わることができない。39年の時間差では不可能だ。第3の物語の‘天敵’ロイド・フックスから、第4の物語の‘天敵’デニー・カベンディッシュ――どちらの役もヒュー・グラントが演じている--もまた、生まれ変わるには時間が近すぎる。どうしたって同時代に生存している。
 むろん、生まれ変わりのルールの中には、一つの魂が必ずしも単独の個体(人間)に生まれ変わるのではなく、二人や複数の個体に分裂して生まれ変わることもある、という変則も唱えられている。そう理解すれば、第2の物語の主人公ロバート・フロビッシャーの魂が、第3の物語のルイサ・レイと第4の物語のティモシー・カベンディッシュの二人に分かれて転生したと考えることも不可能ではない。(二人は同年生まれと言う可能性はあり得る)
 しかし、それはどうにも苦しすぎる。何らかの説明の要するところだ。 
 時代設定は原作でも同様であるらしいから、これは多分、原作時点における設定ミスではないかと思う。

 今一つの綻び、というか失策は、同一の俳優を6つの物語通して出演させたことである。
 たとえば、トム・ハンクスは、
① 医師ヘンリー・グース(天敵)
② 安ホテルの支配人
③ アイザック・サックス(ソウルメイト)
④ ダーモット・ホギンズ
⑤ 映画『カベンディッシュの大災難』の主演俳優
⑥ ザックリー(主人公)
と、すべての物語にメイキャップを十全に凝らすことによる七変化(六変化)で出演している。
 
 ハル・ベリーも同様に、
① 植民地の農園で働くマオリ族
② ジョカスタ・エアズ(ソウルメイト)
③ ルイサ・レイ(主人公)
④ 出版パーティーのインド人女性
⑤ ソンミの首輪をはずす闇医者
⑥ メロニム(ソウルメイト)
と六変化している。
 
 ほかに、ヒューゴ・ウィーヴィング、ヒュー・グラント、ジム・スタージェスがすべての物語に何かしらの役で出ている。
 いずれの役者もさすが国際クラスの大スターの名に恥じない演じ分けをしている。とくに、5つの物語で‘抑圧者’を演じているヒューゴ・ウィーイングが光っている。第4の物語に登場するサディスティックな看護婦ノークスなどは、彼女を主人公にコメディ映画をシリーズ化したいほどの出色キャラである。 
 同一の役者が演じていることによって、観る者は勘違いしてしまう。トム・ハンクスが演じている登場人物が6回連続して輪廻転生している、ハル・ベリーの演じた登場人物達が同一の魂の継承者である、ヒューゴ・ウィーヴィングが演じている・・・・(以下同)と勘違いしてしまうのである。
 ネットでこの映画に関する感想や批評や解説を見ても、それどころか日本版の公式サイトを見ても、こうした見方がなされているのは驚きである。いわく、「トム・ハンクス演じる人物の魂が、6つの物語(転生)を通して様々な経験をして次第に成長していく物語である」とか、「近づいたり離れたりを繰り返しながら、時空を超えていつの日か達成する愛の物語」とか・・・。
 だが、‘抑圧者’を5回演じているヒューゴ・ウィーヴィング、および‘天敵’を4回演じているヒュー・グラントはともかくとして、トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・スタージェスのそれぞれの物語における役の振り当てられ方には特段意味なり共通項なりを見出すことはできない。前の物語での行動の是非が、次の物語の役割を決定しているといった関連性はそこには見出せない。因果応報はない。たとえば、トム・ハンクス演じる人物は、悪人(第1話と第4話)になったり、善人(第3話)になったり、どちらでもない第三者であったり、なんら脈絡がない。6つの物語を通じて、次第に人間として成熟しているというわけでもない。
 同一の役者の演じる役が転生しているわけではない。そうであるなら、観る者は輪廻転生の秘密を探るために、6つの物語のどこにどの俳優がどの役で出演しているか、高度なメイキャップの技術を目を凝らして見抜かなければならなくなるではないか。そんな無駄なこと! たとえソルティのように3回繰り返して観る暇人がいて、見事に見抜いたとしても、特定の一人の俳優が演じる6つの役柄の連関性を解釈するのはどだい無理である。
 察するに、トム・ハンクスやハル・ベリーなどのオスカー級大スターを、莫大な出演料を払いながらたった一つの物語だけに使うことのもったいなさが、こうした六変化出演を許してしまったのであろう。出演する役者にとっても、このようないろいろな役柄を演じられるということが、出演を決めるための一つのインセンティヴになったのかもしれない。
 誰がどこに出演しているかを見抜くという作業も確かに映画鑑賞の楽しみの一つとして否定することはできないが、この作品に限っては、それによってテーマの混乱を招いてしまっただけのように思われる。
 第6の物語の主人公ザックリーが、悪夢にうなされるシーンがある。
 そこで彼が見るのは、医師ヘンリー・グースに毒殺されようとするユーイングであり、浴槽で拳銃自殺するフロビッシャーであり、車ごと海に沈められるルイサ・レイであり、体制に銃殺されるソンミ451である。つまり、前世の自分の姿である。
 やはり、流星型の痣を持つ人物が転生していると解釈するのが妥当だろう。

 作品の今一つの綻びは、あまりにシーンが切り換わるのが早過ぎて(忙しすぎて)、ドラマに深みが欠けてしまっている点である。
 時代も場所も異なる6つの物語を、コマ刻みにパラレルにつないでいく手法を取っている。第1の物語を10分やったら、第5の物語に飛び、せっかくのいい場面まで来たら、突如として第3の物語に飛ぶ・・・といったアクロバティックな編集をしている。6つの物語の類型(骨子)は、「主人公が体制の理不尽に気づき、それに抵抗して立ち上がる」という点で共通しているので、6つの物語を同時進行させることで、このテーマが6本の線で重複されることになり、より濃く浮き上がり、観る者により深く伝わる仕組みにはなっている。
 が、あまりにカッティングし過ぎである。目まぐるしくて疲れてしまう。一つの物語の醸し出すムードに浸る暇なく、次へ次へと追いやられてしまう。結果、ドラマというより予告編かダイジェスト版を見ているような軽薄な印象を持たされる。
 役者の重厚にして滋味深い演技によって、じっくりと人間の感情や心の襞や人間同士の綾を描き出すという、本来の‘ドラマ性’を欠いている。
 全体がロールプレイングゲームのようである。(昨今はそんな映画ばかりであるが)

 まあ、これだけ壮大深遠なストーリーを172分に凝縮したところに無理があるのかもしれない。むしろ、たった172分に凝縮させた監督の手腕こそ、褒め称えるべきなのかもしれない。
 もっとじっくり丁寧に撮るとしたら、おそらく上映時間2時間として3部作くらいは必要であろう。『風と共に去りぬ』『ベン・ハー』『ロード・オブ・ザ・リング』のような大作は予算的にも簡単には撮れないだろうし、また、テレビやコンピューターゲームの影響で観る者もすっかりセッカチになってしまっているから、大河が滔々と流れるような悠長な大作にははじめから背を向けてしまうリスクがある。
 そしてまた、これまでのフィルモグラフィを見るに、ウォシャウスキー姉弟もとい姉妹は、ゲーム的感覚の作品は得意だが、人間ドラマは苦手という気がする。で、残念ながら、輪廻転生を描くこの物語ほど‘人間ドラマ’を欲するものはないわけである。人間的な感情こそが、輪廻転生を引き起こすエネルギーとなるのだから。

 とても興味深い、面白い、繰り返し見たくなるほど刺激的な作品なのだが、やっぱり惜しい。偉大なる失敗作と言いたい。
 
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 ときに、『クラウド アトラス』というタイトルは、直訳すれば「雲の地図」になる。なるほど、映画のファーストシーンは青空に広がる白い雲のショットであった。
 私見だが、この「クラウド」はインターネット用語における「クラウド」、つまり個人の端末ではなくインターネット上(プロバイダーのホストコンピューターとか)に情報(データ)が保存される仕組み――を意味しているのではないだろうか。いっさいの個人の記録は、ネット上にUP(保存)されて貯蔵される。だから、端末が壊れても大丈夫。然るべき手続きでアクセスされた別の端末に、これまでの情報が新たにダウンロードされる。あたかも‘生まれ変わり’のように。
 「クラウド アトラス」とは、個体を超えたところに存在する思考・感情・無意識・言動・体験の巨大な貯蔵庫、いわゆるスピリチュアル業界で耳にする「アカーシックレコード」に相応するものを言っているのではないか。
 古くからの日本語で言えば「閻魔帳」である。 

 第6の物語で心に潜む悪魔オールド・ジョージに打ち勝ったザックリーは、運命の相手であるメロニムと一緒に、放射能汚染され生き物の住めなくなった地球を離れて、どこかの惑星に移り住む。
 これまでの長い物語は、この惑星の大地で満点の星空の下、年老いた片眼のザックリーが、メロニムとの間にできた孫たち相手に、過去500年以上にわたる自らの輪廻転生の物語を語っていたのだということが明らかになる。
 ザックリーは、もう生まれ変わることはないのだろうか?
 天敵を殺害し、心の悪魔を退治し、地球を離れ、輪廻転生をつぶさに思い出したザックリーは、解脱したのだろうか?
 それとも、惑星での命が尽きると共に、またどこか別の惑星に、別の人物として、生まれ変わるのだろうか?
 輪廻は続き、第7の物語があるのだろうか?
 


評価:(作品としては) C-(解析する楽しみを与えてくれたことで)B-

A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。 
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」

A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!




 


 

● 映画:『闇のあとの光』(カルロス・レイガダス監督)

 2012年メキシコ・フランス・ドイツ・オランダ制作。

 第65回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞している。
 元弁護士で国連でも働いたという新進気鋭のメキシコ人監督(1971年生まれ)の問題作である。
 『チョコレート・ドーナツ』を銀座で見たときに、ロビーでチラシを手にして、なんだか非常に気になったものだから、渋谷ユーロスペースに足を運んだ。


 なんとも不思議な映画である。
 一応、一つの家族――攻撃性を内に秘めた父親、きれいな母親、小さな可愛い娘、まだ指しゃぶりを卒業していない無邪気な息子――をめぐる日常を描いた、悲劇に通じる物語なのだが、物語はあちこちに飛ぶし、脈絡も説明もないし、登場人物同士の関係が分かりにくいし、SFやホラーを思わせる不条理なシーンが突如出てくるし、雷鳴とどろく牧場の長回しにイライラさせられたかと思えばポルノ映画ばりの過激な乱交シーンが出てきてバッチリ覚醒させられる。
 変な映画。
 そのうえ、カメラはまるで視覚異常を起こしたように、スクリーンの中心から一定距離の円の中ははっきりと映されているが、その外側はぼやけている。観ている自分の目が悪くなったんじゃないかと、まばたきを繰り返した。こんな技巧は観たことがない。 
 
 レイガダス監督は既存の映画文法を壊そうとしている。
 新しい表現の可能性を探っているのは間違いない。
 その意味で、本邦の天願大介『魔王』と通じるところがある。
 「物語の筋なんかもうどうでもいい。この魅力的な映像をずっと見させてくれ」
 そう思える瞬間があったのは事実だが・・・。

 

評価:C-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!




 

 

● 映画:『ヒューゴの不思議な発明』(マーティン・スコセッシ監督)

月世界旅行 2011年アメリカ。

 3D制作された映画を2Dで観て評価するのはフェアではないという気もする。が、そもそもスクリーン上映を前提に作られたものを自宅のテレビモニターで観て評価している段階で、「それは言いっこなし」である。

 で、感想だが、期待はずれであった。

 期待の源は、この作品の主要テーマが「映画に関する愛」を描いているという予備知識にあった。『アフター・アワーズ』(1985)のスコセッシだし、それなりに心震え、涙腺揺るがすものを期待していた。
 確かに内容は裏切っていない。月に浮き彫りされた顔の片目にロケットが不時着するシーンで知られる『月世界旅行』(1902)の監督で、映画創世記にさまざまな技法を発明し一世を風靡したフランスのジョルジュ・メリエスへのオマージュとなっている。メリエスのいろいろな作品がその半生と共に映し出され、彼の天才と映画への情熱が描かれている。スコセッシのリスペクトがびんびんと伝わってくる。
 しかし、物語全体の機構が凡庸であり、巧くもない。
 前半の時計台に住む孤児ヒューゴのアドベンチャーな物語と、後半の過去の栄光を捨て失意のうちに過ごすメリエスの再起の物語とのつながり方がぎこちない。脚本が悪いのだろう。スムーズにつながるためには、ヒューゴとメリエスの関係の深化をもっとこまやかに丁寧に描く必要がある。
 だが、そこがうまく描けたとしても凡庸は避けられないが・・・。
 お子様向け。


 

評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
      
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 
 
  

● さすがだな、柄本! 映画:『魔王』(天願大介監督)

魔王 2014年自主上映。

 『デンデラ』(2011年)以来の天願大介の映画とあって、上映される下北沢まで駆けつけたのである。人ごみ嫌い(特に休日の)、「若者の街」嫌いの自分にこんな衝動的行為を起こさせるのは、映画監督なら天願大介しかいない。
 上映されたのは、アトリエ乾電池という名前の地下劇場。定員50名くらいか。
 なぜ自主上映?
 ――と思ったのだが、入口で渡されたパンフレットに監督の言葉がある。

ここ数年、映画を取り巻く環境は激変し、映画の位置は変わってしまった。映画はもう特別なものではない。
僕が大好きだった「映画」はもう死んだのだ。ではこれから何をすればいいのだろう。
悩んだ末、辿り着いた結論は自主映画だった。もう一度自主映画を撮る。
自主映画とは、誰にも頼まれていないのに勝手に撮る映画のことで、それが俺にとっての「第二の選択」だ。
無前提に「映画」だからこうすると思っていたことを捨て、新しい方法を考えよう。

 映画の位置がどう変わったのかは知るところではないが、今村昌平という大監督のサラブレッド(息子)にしてこのような苦境に立たされているのだ。あるいはサラブレッドだからこそ、時流に乗ることを拒んだのかもしれない。
 いずれにせよ、すがすがしいまでに潔い決断である。

 『魔王』は、あらゆる評価や解釈やこじつけを拒む映画である。監督の言うとおり、「無前提に‘映画’だからこうすると思っていたことを捨て」た結果がこの作品である。それ以上でもそれ以下でもない。
 自分は『暗いところで待ち合わせ』のような美しい作品、『世界で一番美しい夜』のようなメルヘンチックな作品を半ば期待していたのである。
 が、そのどちらをも裏切って「魔王」はふてぶてしいまでに観る者をあざむき、コケにし、理解を拒む。
 それはまるで「お前の映画に対する愛なんて、しょせんその程度のものだろう」と突き放される、あるいは試される感覚である。

 人には到底勧められない。
 でも、やはり天願大介は天願大介だった。
 なぜならこれを「映画でない」とは言うことができないからである。
 映画的でないすべてを削ぎ落として残した結果が「魔王」だからである。 
 愛のあるC-を贈りたい。

 観客はわずか5名ばかり。
 うち一人は柄本明だった。
 

評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 映画:『ポゼッション』(オーレ・ポールネダル監督)

2012年アメリカ・カナダ製作。

 POSSESSIONとは、そのものずばり「憑依」。
 古典的名作『エクソシスト』の流れを汲むオーソドックスな悪魔憑きと除霊のストーリーである。憑かれるのが美少女であるところも定石どおり。
 とりたてて新奇なところも、画期的なアイデアや唸るような映像表現もない。
 何より始末に悪いのは、恐く・・・・ない。
 『エクソシスト』や『エイリアン』や『リング』の公開時の恐怖と衝撃にまさるような映画ってそうそうにないって分かっているけれど・・・。


評価:C-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
      
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 

● 何も残らない 映画:『キャビン』(ドリュー・ゴダード監督)

 2011年アメリカ映画。

 原題はTHE CABIN IN THE WOODS「森小屋」
 「あなたの想像力なんか、たかが知れている。その先は絶対に予想できない」というキャッチコピーに惹かれてレンタルしたものの・・・。
 表面上はよくある「湖畔でキャンプする若者たちに次々と襲いかかる血に飢えた怪物」という13金以来の正統スプラッタホラーである。
 が、それをメタフィクション化している。若者たちの惨殺される場面を、モニターのこちら側で賭けをしたり酒を飲んだりナンパしたりしながら悠然と眺め、状況を科学的にコントロールしている人々がいる。
 いったいこの常軌を逸した設定の意味は何か。
 それが最後まで伏せられているところがミステリーでもある。

 同じ手は二度と使えないアイデア勝負の作品だと思うし、古今東西怪物大集合のCG技術もすごいと思うが、やっぱり子供だまし。ゲーム感覚。漫画的。
 ストーリー同様、見終わったあとに何も残らない。



評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 映画:『リアリティ』(マッテオ・ガローネ監督)

 2012年イタリア・フランス制作。

 シンデレラと王子様が馬車でお城へご帰還、みたいなファンタジー風冒頭から始まって、派手で陽気な結婚式に専用機で文字通り「飛び入り」するテレビスター、それに口づけを強要するドラッグクイーンの参列者・・・・と、何の説明もない、わけのわからないシーンの連続に、「いったいこれは何の話なんだ?」「主役は誰なんだ?」と頭の中をいっぱいの「?」が飛び交う。「もしかしてこれ(DVD)を借りたのは失敗だったかも・・・」という一抹の不安を抱きつつ。
 それでも見続けてしまうのは、映像の個性による。
 カラフルな色彩の氾濫、登場人物(デブばかり)の大道芸風たたずまいに、「キャンプ」を感じるからである。
 「キャンプ」とは、スーザン・ソンダグの定義によると、「感覚の自然なあり方よりも不自然なもの、人工的なもの、誇張されたものを愛好する感受性」である。「女装」の意味や意図を超越した「ドラッグクイーン」は、まさに代表的なものだろう。
 イタリア制作でナポリが舞台ということも手伝ってか、フェデリコ・フェリーニ(『アマルコルド』あたり)を想起したのだが、大道芸人を好んで描いたフェリーニ作品は「キャンプ」と言っていいのかもしれない。
 というより、イタリア人ってみな「キャンプ」なものが好きなんじゃないかという気がする。だからこその、芸術の国、料理の国、オペラの国なのだろう。イタリア人が最も好きな女優は一昔前ならソフィア・ローレン、今はモニカ・ベルッチっていうのが、まさにキャンピー感覚である。
 「キャンプ」を別の言葉で表現するなら「毒食らわば皿まで」であろう。
 
 ナポリで魚屋を営む陽気なルチャーノは、たまたま受けた人気テレビ番組のオーディションで手応えを感じ、「自分は合格した」と思い込み、すっかりその気になってしまう。長期ロケのために魚屋をたたみ、テレビ局から覆面調査員が来ていると思いこみ家財を貧乏人に投げ与える。結果、愛する妻と喧嘩して子供たちとも離れ離れに。
 それでも夢をあきらめられない、妄想から抜けられないルチャーノ。
 
 陽気で人好きで家族愛に満ちたナポリ人(ナポレターノ)のSimpatico(親しみやすい)雰囲気が活写されていて楽しめるが、物語自体は破綻も、どんでん返しも、サプライズも、ひねりもない。その意味では「キャンプ」なのは外観だけであった。



評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」  

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 映画:『地球、最後の男』(ウィリアム・ユーバンク監督)

 2011年アメリカ映画。

 DVDパッケージの説明文に「現代の『2001年宇宙の旅』とも称される」と書いてあったので、相当期待して観たのである。
 ‘詐欺’とまでは言わないけれど、‘誇大広告’もいいところ。
 映像はなるほどスタイリッシュで見事なものだ。
 が、ただそれだけ。
 これなら、『月に囚われた男』(ダンカン・ジョーンズ監督、2009年)のほうが断然クールである。
  


評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 

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