ソルティはかた、かく語りき

東京近郊に住まうオス猫である。 半世紀以上生き延びて、もはやバケ猫化しているとの噂あり。 本を読んで、映画を観て、音楽を聴いて、芝居や落語に興じ、 旅に出て、山に登って、仏教を学んで瞑想して、デモに行って、 無いアタマでものを考えて・・・・ そんな平凡な日常の記録である。

評価C-

● 映画:『ウイークエンド――爆破まであと1198分。史上最悪の二日間――』(ジャレド・ドレイク監督)

 2008年アメリカ映画。

 原題はVISIONEERS。
 「幻視者たち」といったところか。
 ザック・ガリフィアナキスが大ブレークするきっかけとなったトッド・フィリップス監督『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の前年に公開されている。ザック人気にあやかって日本でも急遽DVD発売となったのだろう。邦題はまさにその事情を物語っている。
 コメディアンとしてのザックを楽しもうとレンタルしたのだが、ストーリーそのものはコメディの要素もないことはないが、意外にシリアスである。
 とういうのも内容は、『未来世紀ブラジル』(テリー・ギリアム、1985年)や『Vフォー・ヴェンデッタ』(ジェームズ・マクティーグ監督、ウォシャウスキー兄弟脚本、2005年)を思い起こさせるディストピアもので、全体主義の管理社会の中で精神を病んでいく一人の男を描いているからである。
 その点で肩透かしを食らったのだが、ザック・ガリフィアナキスの演技にやはり惹きつけられる。コメディだけでなく、シリアスも十分いける役者だ。よく見ると堂々たる風貌をしているので、コスチューム・プレイもいけそうである。
 シェイクスピアの『リア王』なんかどうだろう。
 観てみたいな。

 映画としては、ザックの演技がなければ、なるほどあえてDVD化する価値は無い。



評価:C-



A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」   

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 映画:『おとうと』(山田洋次監督)

 2010年日本映画。

 前々記事に取り上げた本に触発されてツタヤで借りた。
 そうでもなければ山田洋次監督の映画を見ようとは思わなかっただろう。
 この監督の作品を、「つまらない」という思いを抱かずに観ることができないからである。
 「寅さん」然り、「幸福の黄色いハンカチ」然り。

 何がつまらないって、脚本である。
 話がベタ過ぎ。展開が簡単に読める。笑いのオチが10割がた推測できる。セリフが饒舌すぎて味わいが無い。
 一言で言って「紋切り型の権化」である。
 しかし、寅さんが日本庶民のヒーローであり続けたことが示すように、このレベルの映画が大衆の好むところなのは明らかだ。映画で落語をやっている。
 山田監督は大衆を知り尽くして、それの欲するところのものを誠実に提供しているのだろう。
 それはそれでプロフェッショナルと言える。
 だが、時に挿入されるストーリーとは直接関係のない空ショットのハッとする扱いに、この監督の映画的才を見て取ることができる。
 脚本は他人に任せ、映像だけを撮ったものが見たいものだが・・・。



評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


 


● インドに行け! 映画『四つのいのち』(ミケランジェロ・フランマルティーノ監督)

 2010年イタリア・ドイツ・フランス共同制作。

 ヨーロッパでかなり評判になった映画らしい。
 南イタリアののどかな田舎町を舞台に、人、ヤギ、木、炭の四つのいのちが循環する様をロングショットを多用して淡々としたタッチで描く。

 会話らしい会話がない。音楽もない。ナレーションもない。説明のための字幕もない。それどころか演技と言えるものもほとんどない。(プロの演技者は老人が飼っている犬だけらしい。)
 絵と自然のサウンドだけでストーリーを進め、観る者にテーマを伝えていくという点では「映画的」と言える。
 実際、南イタリアの牧歌的な風景、古い石造りの町と素朴な住民の紡ぐのどかな日常、静寂を引き立てるヤギの鈴の音や犬の鳴き声など、観ていると何ともくつろいだ平和な気分に満たされる。プロの俳優たちの過剰な演技がないぶん、作品から作為の気配が薄まって「いのちの循環」という大仰な、また説教的になりそうなテーマをさりげなく観る者に気づかせることに成功している。


 好感の持てる映画と言いたいところなのだが、何か引っかかる。どことなくしっくり来ない。
 なんでだろう?
 とつおいつ考えて浮かび上がった言葉は「オーガニック」「スローフード」。
 この作品は、この2つの言葉から自分が抱くイメージに近い。
 原義というか、英語で本来使われている意味合いはよく知らないが、日本に紹介されるとき「オーガニック」も「スローフード」も、欧米で流行の生活様式、それも意識の高い人たちの熱中するファッションみたいなニュアンスがつきまとっている。おそらくは、英語をそのままカタカナ語にして日本文化に取り込むときに必然的に生じる弊害なのだろう。カタカナ語そのものに、外来の、流行の、おしゃれな、底の浅い、軽佻浮薄な、「ええかっこしい」のイメージがつきまとうからである。
 この映画も、なんだか「きれいなところでまとめている」という印象を受ける。
「いのちの循環」ってそんなきれいなものではないだろう。
 たとえば、老いた牧夫の死と同時に生まれた子ヤギが、山中で迷って大きなモミの木の根方に眠るシーンがある。次のシーンは雪をかぶった大地とモミの木である。季節が変わるとモミの木は切り倒されて炭に変わっていく。
 子ヤギが老人の死と共に生まれたのならば、炭がモミの木の伐採と共に生まれたのならば、当然モミの木の成長は子ヤギの死と共にある。死んだ子ヤギの腐った遺体を糧として、モミの木はその根を張り枝を伸ばし葉を広げたのである。
 しかし、ここでは子ヤギの死は映さない。ぼかしている。死体はきれいな白雪に隠されている。
 ヨーロッパに根強い動物愛護の精神のためであろうか。
 だが、実際の死体は映さなくともヤギの死を観る者に分からせる手段はいろいろあるはずである。
 死を語らずに、死のグロテスクと向き合わずに、「いのちの循環」がありえようか。
 そう考えると、わざわざ南イタリアの美しいロケーションを舞台としたのもなんだかこすっからい気がしてくる。都会のゴミための中にだって「いのちの循環」は発見できるはずだ。インドに行けばいくらだって発見できる。


 

評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」    

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
       
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!





● 映画:『テイク・シェルター』(ジェフ・ニコルズ監督)

 2011年アメリカ映画。

 「ノアの方舟」型予知ミステリ-。
 主人公カーティス(マイケル・シャノン)は夜毎、巨大な竜巻が出現しすべてを破壊していく悪夢を見るようになる。ただの夢と片づけることのできないカーティスは、家族や同僚の戸惑いや制止をよそに自宅の庭にシェルターを作りはじめる。
 はたして単なる夢なのか、心を病んだカーティスの妄想なのか、それとも・・・。

 土木工事を生業とするさえない中年男を演じるマイケル・シャノンの演技は緻密でリアリティがあり勝れている。子供の頃に母親が精神病を発症し家族がバラバラになったという過去を持つ男の抱える精神的不安定と孤独感、しっかり者の妻と耳の不自由な娘を持つ一家の柱としての責任感と愛情を過不足なく演じ切っている。

 それだけに物語全体の構成が弱いのが残念である。
 過去のトラウマを家族と共に克服することをテーマとした心理ドラマ、家族ドラマの面と、「ノアの方舟」型ストーリーをメインとするミステリー&サスペンスの面との縫合がしっくりこない。どっちつかずだ。
 文学性と娯楽性の二兎追って一兎得ずになってしまった。
 もったいない。

 
評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」      

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
        
C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 映画:『悪徳の栄え』(実相寺昭雄監督)

 1988年にっかつ。

 マルキ・ド・サドの著名な作品の映画化ではあるが、物語をそのままに舞台をフランスから日本に移したというのではない。サド侯爵を気取る不知火(しらぬい)侯爵が主宰する、団員すべてが犯罪者という白縫劇団の演目として『悪徳の栄え』の稽古風景が繰り広げられる。つまり、劇中劇である。
 一方で、不知火侯爵と仲間の貴顕達が日夜溺れる悪徳と退廃の数々が、独特の映像美と陰鬱なライティングによって観る者に供される。
 舞台と日常。虚構と現実。二つの世界は対比されているのではなく、分かちがたく絡まりあっている。虚構(『悪徳の栄え』の舞台)が現実(不知火侯爵の日常)に影響を及ぼし、現実が虚構にオーバーラップする。
 交錯する現実と虚構。グロテスクな映像美。
 まさに実相寺ワールドが展開されている。

 時代は二二六事件の頃だから1936年。軍国主義が席巻し、国際連盟脱退(33年)→盧溝橋事件(37年)→日中戦争→太平洋戦争と、日本が雪崩式に戦争と大いなる破滅へと進んでいった中途である。
 この背景もまたサドが『悪徳の栄え』を書いた背景と重ねてみるべきだろう。
 フランス革命前夜。
  一つの文化が崩壊し、価値観が転換し、世の中が大きく変わるとき。そのための完膚なきまでの破壊と残虐が目の前に迫っているとき。
 そんな時代を予感してか、サド侯爵は出現したのであった。

 サド侯爵が目したものは、まさに道徳や法や宗教や伝統や習俗や階級を超越する‘何か’であり、それが現れるまではひたすらに目の前の共同幻想を破壊しつづけなければならなかった。そのためのエンジンとして使われたのが「悪徳」であり、ガソリンとなったのが「情欲」であった。
 情欲の前には人は、文字通り、すべてをとっぱらって「裸」になるほかないからである。
 
 サド侯爵はともかく、この映画、大がかりな設定と凝った演出のわりには、つまらなかった。
 テーマが今ひとつさばき切れていないためだろう。見終わった後に残るのは、斬新な映像美とアブノーマルな登場人物達とアブノーマルな行為だけである。それだけで何かを訴えるには、平成24年の日本人はもはやイカない。
 たとえば、不知火侯爵が自分の若い妻を劇団の若い男にレイプさせ、その一部始終を覗き見るというシーンがある。1988年では何らかの衝撃なり劣情なり反感なりを観る者にもたらしたかもしれないけれど、現在ではどうだろう?
 「別に・・・・」
 という感じではないだろうか。
 貴顕に限らず、今では一般市民がネットを通じてそこらじゅうで同じことをやっているのを、みんな知っている。
 結局、悪徳もまた古くなるし、退屈なものに変じてしまうのだ。 

いいえ、民衆は道徳に倦きて、貴族の専用だった悪徳を、わがものにしたくなったんですわ。(三島由紀夫『サド侯爵夫人』)

 実相寺にしろ、寺山修司にしろ、三島由紀夫のいくつかの戯曲にしろ、前衛的なものほど古くなるのが早い。そんな逆説を感じさせる映画である。
 これに比べると、公開当時から古くさかった小津映画は、永遠に古くならないから不思議である。



評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 天才の顔 映画:『上海から来た女』(オーソン・ウェルズ監督)

 1947年アメリカ映画。

 この世に典型的な天才の顔というものがあるとしたら、オーソン・ウェルズの顔こそ、それだと思う。
 ハンサムではない。ブ男でもない。一度見たら忘れられない特異な顔立ちというわけでもない。セックスアピールがあるというのでもない。俳優としては決してヒーローにもスターにもなれない平凡な造作である。
 しかし、ひとたびカメラの向こうに捉えられ、画面に映し出されるや、この顔は他の役者をすっかり影に追いやってしまう強烈な磁力を発する。常に次の気の利いた仕掛けを考えているいたずらっ子のような自在な活力と茶目っ気が、観る者を虜にする。


 この作品でも、タイトルからすれば主役であるはずのエルザ(=リタ・ヘイワース)の魅力は物語が進むにつれ背後にかき消えてしまい、エルザに魅入れられ引きずり回され、挙句の果てに殺人の濡れ衣を着せられてしまうマイケル(=オーソン・ウェルズ)の一挙手一投足に観る者は標準を合わせることになる。
 謎の女に振り回される純粋な男に降りかかる災難を描くのは、巻き込まれ型サスペンスとして王道であるけれど、そのためには謎の女の魅力のほどが観る者に十分納得されるような演出が必須である。最初のほうでこそ、水着姿で抜群のプロポーションを披露したり、カッコよく煙草をくわえたりと、往年のセックス・シンボルたるリタ・ヘイワースの持ち味はそれなりに発揮されるけれど、物語が進むにつれ、ミステリアスな風情は失われていき、なぜマイケルがこの平凡な女に執着するのかが理解できなくなってくる。
 これは、リタの演技力の未熟というより、やはり脚本のまずさ、演出の不手際によるものだろう。
 監督として、主演女優であり妻であるリタを魅力的に撮るより、物語をわかりやすく示すより、才気走ったやり方で演出することをオーソンは優先してしまったのである。オーソンが一俳優として出演した『第三の男』(キャロル・リード監督)の共演女優アリダ・ヴァリが最後まで魅力を失わずに鮮やかに去っていく姿と比較すると、この事情は明白である。
 
 そもそもこの物語は筋が相当入り組んでいるのだが、上手に整頓できていない。リタがいったいどういう女で何をしたかったのか、リタの夫でやり手の弁護士であるアーサーの真意は何なのか、肝心の殺人が具体的にどういうトリックで行われたのか、よくわからない。マイケルの罪を問う裁判のシーンも、通常なら事件の秘められた真相を匂わせる、あるいはマイケルの陥った罠の恐ろしさをまざまざと感じさせるサスペンス効果を発揮する格好の場面になるところだが、裁判制度の茶番を描き出すことに主眼が置かれているようで、なんだか焦点が合っていない。
 
 ただ、たとえ脚本が良くて、演出も懲りすぎることなく、わかりやすい物語になったとしても、ヒッチコックのスリラーの2番せんじになってしまうだけかもしれない。
 この手のもので、ヒッチコックを凌駕するのは難しかろう。


 

評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

● 栄えある失敗作 映画:『ラバー』(クエンティン・デビュー監督)

 2010年フランス。

 理由もなく意味もなく行く手に立ちふさがるあらゆるものを破壊していく殺人鬼の話なのだが、その正体が車のゴムタイヤ(rubber)であるというところがミソである。

 夕日に照らされながら道なき道を行くゴムタイヤの孤独な心情を描き、携帯電話で話す女子大生をドアの隙間から覗き込むゴムタイヤの抑圧された変態的セクシュアリティを描き、ドライブインのカーテンの背後でシャワーを浴びるゴムタイヤのナルシシズムと人を小馬鹿にした尊大さを描く。伝統的な撮影手法と使い尽くされた演出と過去の様々な映画の名シーンの記憶によって、ゴムタイヤにすら我々は感情や意志を勝手に読んでしまう、読んでしまわざるを得ない。映画の持つ文法は、そのまま映画の「不自由さ」でもあると、観る者は気づかされることになる。
 ご丁寧にもデビュー監督は、そのうえゴムタイヤの「物語」を劇中劇として設定する。ゴムタイヤの一連の行動を遠くから双眼鏡で鑑賞する観客たちを用意し、「物語」そのものを批評させるのである。
 作品そのものが一種の映画批評、物語批評になっているのであるが、この込み入った構造を是ととるか非ととるかで、評価は分かれてこよう。

 フランス人であり、成功したミュージシャンであり、脚本・撮影・音楽・編集・監督を自らこなすデビュー監督は、作家性(芸術志向)が強いのだろう。
 娯楽を提供するよりも、既成の映像表現に対するアンチテーゼを表現したかったのだと思われる。
 この作品を観ていて想起したのは、劇作家ピランデッロの『作者を探す6人の登場人物』であった。虚構の「物語」の登場人物達のふるまいが、現実の人生に作用して、いつの間にか現実を変容させ、虚構と現実の皮膜が破れて立場が入れ替わる。と同時に我々の認識する現実の「慥からしさ」が根底から崩されていく。
 メタフィクションの形式を利用してフィクション(虚構)の欺瞞性を暴き出すといったところか。

 残念ながら、今回はそれが成功しているとは言い難い。
 わざわざ劇中劇にしたことの効果は上がらなかった。実験作にして失敗作というべきだろう。
 しかし、である。
 すべてを破壊していくタイヤの行く先がハリウッドであることを知る時に、デビュー監督の野心の大きさが感得されよう。
 ゴダールの再来と言われる日も近いかもしれない。

 意味のある失敗作だ。

 

評価: C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


 
 
 

● 映画:『レコード~シッチェス別荘殺人事件』(フェルナンド・バレダ・ルナ監督)

 2010年スペイン映画。

 たまには、退屈しのぎになるだけの、頭を空っぽにしてワインでも嘗めながら、そこそこ楽しめるホラーが見たいと思うことがある。それを期待して、この作品を借りた。

 期待に違わず、75分飽きずに過ごさせてもらった。
 それで十分だ。
 人に薦められるものではない。


 この手の映画をよく観ている人なら、途中で犯人が誰かは分かるだろう。
 それはまあいい。
 最後まで観て気になるのは、死んだのは誰なのかという点である。

 惨劇が明るみになってからのシーンで、メディアが「別荘で4人の死体が見つかった」と言っている。
 シッチェス家の3人の子供は明らかに殺された。悲惨な遺体も映される。
 あと一人は誰なのだろう?


 父親か? 惨劇が起きる前日に、急な仕事でマドリッドに行ったことになっているが、実際は殺されたのか。
 母親か? 3人の子供の無残な姿を見て、ショックで自分の手を切ったのか。
 第一発見者カルロスか? 警察に通報したとき、館にはまだ殺人犯が潜んでいて、その刃にかかったのか。

 それとも・・・・。

 4人ではなくて、4つの死体という意味か?(翻訳の間違いか)
 井戸の中のペットの犬を勘定しているのか。


 はっきりと描かれていない。
 が、それが分かったからといって、作品の質が上がるわけでも、のどに引っ掛かった小骨が取れるようなスッキリ感が得られるわけでもないのだが・・・。



評価:C-

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
        ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

 

●  映画:『ターネーション』(ジョナサン・カウエット監督)

 2003年アメリカ。

 いったん見始めた映画を途中で切り上げるのは、なかなか決断の要るものだ。
 「これから面白くなってくるかもしれない」「ここまで見たのだから、途中で止めたらもったいない」「最後まで観なければ批評する資格がない」・・・・など、見続けるための理由が頭をよぎってくる。

 「カンヌが熱狂、サンダンスが絶賛、アメリカ映画評論家支持率92%」というすこぶる評価の高い=ゆえに観る前の期待も高かったこの作品について、まさか途中で退屈するとは思わなかった。しかも、主人公の青年は自分と同じセクシャルマイノリティなのに・・・。

 ターネーション(TARNATION)は「天罰、神の呪い」ということらしいが、別に「酷評」という意味もある。カウエット監督、あらかじめ予防線を張っておいたのか。大衆にこんなにも熱く受け入れられるとは思っていなかったのだろう。
 そう思うのも無理はない。なにしろ、監督自身の壮絶な半生を、監督自ら出演しドキュメンタリータッチで描いた、まったくの個人史だから。

 このような「自分語り」の映画は、日本でも90年代中頃から流行りだしたように記憶している。だいたいが、映画学校で卒業制作を課された学生が「自分をテーマにしてみました」みたいなノリで作られて、その多くは凡庸な作品で終わるのだろうが、中には題材の新鮮さや切り込みの鋭さとで評判になったものもある。覚えているもので『ファザーレス』(茂野良弥監督、1999年公開)がある。

 近代の芸術家の表現とは、どうにもしようのない生きづらさを抱えている自己の魂の咆哮であり、遺書であり、死なないための自己表現である。とりわけ、デビュー作にその傾向が濃厚に情熱をもって表れる。映画ではないが、三島由紀夫『仮面の告白』とか村上龍『限りなく透明に近いブルー』とか。(だから、作家はデビュー作を越えられないと言われる。)
 つまるところ、いかなる芸術作品も「自分語り」に過ぎないのだが、それを技術や表現スタイルで調理し、ある程度普遍的な意味を持つところまで練り上げていくのが、芸術表現というものだろう。

 『ターネーション』を観ていて思わず呟いてしまったのは、「なんで見ず知らずのあんたの人生を見せられなければならないのか? 他人の人生になんか興味ねえよ。」
 が、そのあとですぐに気がついた。自分がいつも「好きこのんで」映画で観ているのは、まさに他人の人生そのものではないか。他人の人生に興味がなければ、とても映画なんか観られるわけがない。ドラマなんか観られるわけがない。
 そうなのだ。自分はジョナサン・カウエットという青年の人生に興味がないわけではない。それは、一風変わった刺激的な出来事の連続であるし、カウエット自身が大変な美少年→ハンサムだというビジュアルの楽しみもある。
 興味がないのは、「自分語り」そのものなのだ。それは、酒場で目の前の男が滔々と「自分語り」を始めたのにつきあわされていると思えばいい。
 その男に恋しているとか、何か下心があるとか、自分と同じような境遇で共感できるとかというのでなければ、とてもそのようなナルシシズムにつきあっていられないってのが本音だろう。
 
 『ターネーション』が多くの観客(と批評家)に迎えられたのは、なぜだろう?
 プロデュースしたガス・ヴァ・サント(『エレファント』『ミルク』)、ジョン・キャメロン・ミッチェル(『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』)の後光か。
 ジョナサン・カウエットのルックスか。(これはバカにできない。ジョナサンがもし醜かったら、この作品はまったく鑑賞に堪えないだろう)
 まさか観客(と批評家)がジョナサンの半生に共感したとも思えないが・・・。
 となると、自分自身を手術台に乗せて、自分自身がメスを握り、徹底的に自分と家族を解剖した、その勇気と大胆さと表現することへの飽くなき情熱ゆえか。
 ああ、そうか。技術とスタイルを追うことに躍起になって活力を失った映画界への覚醒の一発になったのかもしれない。

 カウエット監督のその後の動向が入ってこないのが気になるところである。



評価:C-


A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 
        「東京物語」「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
        「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」
        「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」
        「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」
        「スティング」「フライング・ハイ」
        「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」        
         ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
        「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」
        「ギャラクシークエスト」「白いカラス」
        「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。
        「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」 
        「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」        
        「ボーイズ・ドント・クライ」
        チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
        「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」
        「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
        「お葬式」「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
        「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!


● 映画:『レイク・マンゴー』(ジョエル・アンダーソン監督)

 2008年オーストラリア映画。

 家族と出かけた湖で行方不明となり、数ヵ月後に水死体で見つかった少女の死の謎をたどる物語。
 全編が記録による回想という体裁を取り、過去の出来事がすべてが終結した現在の視点から、さまざまな記録媒体を駆使して語られていく。テレビ、カメラ、カセットテープ、ホームビデオ、VHSテープ、携帯電話の動画・・・。録画や録音を通して、少女の謎はだんだんと明らかにされていくのだが、一方、記録することで生み出されていく「魔」がある。少女の霊が撮影されたテープに取り込まれていくのである。
 オーストラリアの美しい自然を写し取ったインサートショットを差し挟みながら、思春期の少女の心の脆さ、はかり知れなさをオカルティズムと融合しつつ、客観的に(記録ゆえに当然そうなる)淡々と描いていて好感は持てるのだが、肝心の少女の胸のうちが曖昧なままに終わっていて、いささか拍子抜けの感を否めない。少女が霊となって現れるのは、「家族に本当の自分の姿を知ってもらいたかったから」というドラマ内の説明がそのとおりであるなら、もう少し、少女の心が明かされる必要があろう。つまり、彼女に「何があったか」ではなくて、彼女が起こったことをどう感じ、どう思っていたかを。
 でないと、やっぱり「犬死に」という印象しか残らない。
 それとも、明かされなかった、家族に十分に理解されなかったがゆえに、最後のシーンに見るように、少女の霊は成仏することなく、屋敷に残ったということなのか。

 

評価: C-

参考: 

A+ ・・・・・ めったにない傑作。映画好きで良かった。 

「東京物語」 「2001年宇宙の旅」   

A- ・・・・・ 傑作。劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。

「風と共に去りぬ」 「未来世紀ブラジル」 「シャイニング」 「未知との遭遇」 「父、帰る」 「フィールド・オブ・ドリームス」 「ベニスに死す」 「ザ・セル」 「スティング」 「フライング・ハイ」 「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」 「フィアレス」 ヒッチコックの作品たち

B+ ・・・・・ 良かった~。面白かった~。人に勧めたい。

「アザーズ」 「ポルターガイスト」 「コンタクト」 「ギャラクシークエスト」 「白いカラス」 「アメリカン・ビューティー」 「オープン・ユア・アイズ」

B- ・・・・・ 純粋に楽しめる。悪くは無い。

「グラディエーター」 「ハムナプトラ」 「マトリックス」 「アウトブレイク」 「タイタニック」 「アイデンティティ」 「CUBU」 「ボーイズ・ドント・クライ」 チャップリンの作品たち   

C+ ・・・・・ 退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)

「アルマゲドン」 「ニューシネマパラダイス」 「アナコンダ」 

C- ・・・・・ もうちょっとなんとかすれば良いのになあ~。不満が残る。

「お葬式」 「プラトーン」

D+ ・・・・・ 駄作。ゴミ。見なきゃ良かった

「レオン」 「パッション」 「マディソン郡の橋」 「サイン」

D- ・・・・・ 見たのは一生の不覚。金返せ~!!

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