正月は、友人と高尾山薬王院に詣でるのがここ数年の恒例である。
年の初めに修験道で有名な山に登って霊気に触れ、心身ともに清新な気分を味わう。
今年は友人と予定が合わなかったため、一人で詣でることにした。
それならばと、例年はケーブルカーやリフトを使うところを、歩いて登ることにした。
山頂に向かうルートはいくつかあるが、もっとも人気の高いのは6号路。滝行のできる琵琶滝のそばを通って、清流に沿って谷間を登っていくコースである。
このコースは実に気持ちいい。
自分はこれまでにたくさんの山に登ってきたけれど、都心からこんなに近くてアクセスも良くて、人もたくさん来るのに、これだけ質の高い‘気’が残っている山は他にない。
眺めの良い山、清流のすがすがしい山、静かで美しい森を持つ山は他にもある。
しかし、‘気’に関して言えば、高尾山は別格である。
とりわけ、夏の早朝の6号路は、身体に纏わりつくもろもろの邪霊をたちどころに薙ぎ払うような、頭が冴え渡り、身体が軽くなるような、厳粛にして清澄たる‘気’に満ちている。
薬王院のご本尊は飯縄大権現(大日如来の仮の姿)であり、大天狗と小天狗を随身としている。古来、高尾山は天狗が棲む山として有名である。
山の霊気に触れていると、天狗がいても不思議ではないような気がしてくる。
ただ、ミシュランで三ツ星をもらって以降、登山道やトイレなどが整備されて歩きやすくなったのはよいが、薬王院境内の悪趣味なレジャーランド化を見ると、そのうちこの‘気’も失われてしまうのではないかという不安を感じる。自分は圏央道の建設に反対してきたが、俗化した宗教のほうが高尾を駄目にするのかもしれない。


山頂からは富士山が拝めた。
大方、今日が仕事始めなので、山頂も境内も空いていた。
都心の空はまだそれほどガスっていない。
おみくじを引くと「大吉」。
が、調子に乗って天狗になるな、と書いてあった。


下山後、高尾ふろっぴいで温泉に浸かる。
フロント横には天狗の大きな面が祀られていた。

生きとし生けるものが幸福でありますように。
今年も良い山登りができますように。