東芝がついに『サザエさん』のスポンサーから撤退するというニュースに「一時代の終わり」を感じた人は多いと思う。
諸行無常なのでそれ自体は取り立ててあげつらうほどのことではないけれど、「フジテレビ(=8チャンネル)はいよいよ底が抜けるキワまで来たなあ~」という思いがする。
フジテレビというかフジサンケイグループは好きじゃないし、そもそもテレビをほとんど見ない毎日を送っているソルティなので、フジテレビがこのさきどうなろうがたいして関心ないのであるが、一方で、『サザエさん』やカルピスまんが劇場(『ムーミン』,『アンデルセン物語』,『フランダースの犬』,『アルプスの少女ハイジ』,『母をたずねて三千里』)を家族とともに見た懐かしい記憶はあるし、クラスメートと『夜のヒットスタジオ』や『ドリフ大爆笑』の話題で盛り上がった楽しい記憶もある。恩恵を受けていないといったら嘘になる。
ここ数年のフジテレビ(だけではないが)の低迷の一番の原因は、すでにあちこちで指摘されているように「庶民感覚からの乖離」にあると思う。80年代後半から90年代前半までのバブルの頃の庶民感覚・価値観をいまだに引きずっている。庶民はすでにバブルの栄光から遠く離れて、いつセーフティネットから振り落とされてネット難民やホームレスになるかわからない、両親や自らの介護問題に地獄をみることになるやも知れない、コミュニケーション不全が蔓延化した若年世代の社会化が危機に瀕している・・・・といったありさまなのに、フジテレビはいまだに「お台場」という名のお立ち台に乗って万札を扇のように振り回し踊っているのだから。
いまやソルティとフジテレビの接点は、通勤列車の中で見る新作テレビドラマの広告くらいしかないのであるが、それだけでもフジテレビと平成末に生きる庶民との乖離を知るには十分事足りる。ドラマのコンセプトも設定もタイトルも、キャラクターのリアリティなさも役者の選び方も、宣伝コピーも広告センスも、すべて「こんなの視聴率出るわけない」と素人目でもわかる。
いったい、どこの誰をタ-ゲットにドラマを作っているのだろう?
80年代の20代OL?
ここにはまぎれもなく平成末の日本に生きる庶民がいる。少なくとも庶民の7割がいる。
弁当屋に勤める雅子妃ファンの瞳子(=成嶋瞳子)。ウマの合わない姑と会話のない亭主との澱んだ日常に閉塞している。
有能な弁護士でゲイの四ノ宮(=池田良)。学生時代からのノンケの友に思いを寄せるも、信頼を裏切るような友の言動にショックを隠せない。
通り魔殺人で愛する妻を殺されたアツシ(=篠原篤)。妻の死を受け入れることができずに破綻寸前の独居生活を送っている。
三人の主人公の共通点は、中年であること。希望と活力に満ちた青春期を過ぎて、人生の苦い現実に直面し、幻滅と疲れと喪失感を抱えている。遣り切れない日常と満たされようのない思いの中で、それでも起きて、食べて、働いて、人と交わって、寝て、生きている。瞳子のストーリーにみるように、希望の光が恩寵のように訪れることもあるが、えてしてそれは、また別の苦い現実と失意への扉でしかなかったりする。
三人の共通点はまたどこにでもいる庶民であること。バブル時代に流行したトレンディドラマに出てくるような人間はここでは誰も登場しない。画面の中で息しているのは、観る者とまったく等身大の隣人たちである。(三人を演じる役者がこれまた見事に庶民っぽい。)
この映画の中では誰の問題も解決しません。でも、人間は生きていかざるを得ないんですよね。映画を作るうえで、僕は閉じた映画では駄目だと思っています。どんな悲しみや苦しみを描いても、人生を否定したくないし、自分自身を否定したくない。生きているこの世界を肯定したい。だから、最後には外に向かって開かれていく、ささやかな希望をちりばめたつもりです。人の気持ちの積み重ねが、人を明日へ繋いでいくんじゃないかなって。(『恋人たち』公式ホームページ内の監督インタビューより)
その昔、カルピスまんが劇場が教えてくれたのは、まさにそういったことだったんだよなあ~。
評価:B-
A+ ・・・・めったにない傑作。映画好きで良かった。
「東京物語」「2001年宇宙の旅」「馬鹿宣言」「近松物語」
A- ・・・・傑作。できれば劇場で見たい。映画好きなら絶対見ておくべき。
「風と共に去りぬ」「未来世紀ブラジル」「シャイニング」「未知との遭遇」「父、帰る」「ベニスに死す」「フィールド・オブ・ドリームス」「ザ・セル」「スティング」「フライング・ハイ」「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「フィアレス」
B+ ・・・・良かった~。面白かった~。人に勧めたい。
「アザーズ」「ポルターガイスト」「コンタクト」「ギャラクシークエスト」「白いカラス」「アメリカン・ビューティー」「オープン・ユア・アイズ」
B- ・・・・純粋に楽しめる。悪くは無い。
「グラディエーター」「ハムナプトラ」「マトリックス」「アウトブレイク」「アイデンティティ」「CUBU」「ボーイズ・ドント・クライ」
C+ ・・・・退屈しのぎにちょうどよい。(間違って再度借りなきゃ良いが・・・)
「アルマゲドン」「ニューシネマパラダイス」「アナコンダ」
C- ・・・・もうちょっとなんとかすれば良いのになあ。不満が残る。
「お葬式」「プラトーン」
D+ ・・・・駄作。ゴミ。見なきゃ良かった。
「レオン」「パッション」「マディソン郡の橋」「サイン」
D- ・・・・見たのは一生の不覚。金返せ~!!